ドスパラVRパラダイスでデジハリ学生作品を体験。VRとバカゲーについて悩む

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独自ブランドPCやタブレットでおなじみのPC専門店ドスパラは、秋葉原のVRショールーム『ドスパラ VRパラダイス』で、デジタルハリウッド大学院大学の学生チームによるVRゲームが遊べるイベント『デジハリ大学院ゲームゼミ ドスパラVRパラダイスサテライト』を開催中です。会期は2月5日(月)まで。

(※ ニュースは以上。以下は『VRパラダイス』を訪ねてみた感想がふわっとした感じで続くチラ裏コラムです。タメになる話や深遠な洞察は特にございません。)

さて、昨年がVR元年ならばVR二年にあたる今年 2017年ですが、混沌から未来が生まれる様子を最前列で体験できるPC VRの導入コストは高く、ヘッドセットや周辺機器類とハイエンドPCを合わせて20万円コース。

まだまだ一般コンシューマーにはハードルが高すぎ、自任するアーリーアダプターでもいつ手を出すか、どれを買うか悩ましい状況です。

一方でPCメーカーやショップにとっては、普及はまだこれから(の見込み)だからこそ、真っ先に楽しみたい消費者相手にも乗り遅れが怖い開発者向けにも、高性能な製品をここぞと販売する新たな商機でもあります。

というわけで、最近増えてきたVR体験スペースのなかでも大規模な秋葉原の『ドスパラ VRパラダイス』に立ち寄ってみました。

VRパラダイスは秋葉のドスパラ本店(パーツ館ではなく1FでショップブランドPCを売ってるほう)の5階をわりと贅沢に使い、HTC Vive コンテンツが楽しめるブースを複数用意したショールーム。

自宅では家具に突き当たったり躓いて転びそうな「ルームスケールVR」のための広さを確保しており、ケーブルはレールに天吊り、センサの誤作動を招く外光も遮るなど、専用の常設ショールームならではの良環境です。

利用は無料。ふらりと訪れてもたまたま空いていればすぐに体験できるほか、昼から夜まで30分ごとのスロットで予約も受け付けています。

テレビのバラエティなどでもVRコンテンツ(を体験するタレントのリアクション)が放送される最近では訪れる客も増え、スタッフによれば週末は終日、平日でも夕方以降は予約ですぐに埋まってしまう状況とのこと。

施設の様子はYouTuberでVRアーティストの関口氏による動画もあります。ボリュームは事前確認推奨。

(動画:絶叫女子、アキバのドスパラ「VRパラダイス」無料体験。HTC Viveをたっぷり試せます。出演:せきぐちあいみ)

VRパラダイスではSteamで配信中のもの、ショールーム限定のものを含めて多数のゲームやデモが体験できますが、2月5日(月)までの期間限定で、デジハリことデジタルハリウッド大学の学生チームが制作したタイトル『Autumn Magic』『マッチョと豆の木』も選んで体験できるようになっています。

(Autumn Magicの画面)

学生の指導を担当したのは、ゲームジャーナリストとしても著名な新清士氏(デジタルハリウッド大学大学院 准教授)。

ゲームのビジネス面を一般向けに伝える立ち位置から、特定のタイトルやプラットフォームを愛してやまないゲーマーたちからは「CESA理事だか何だか知らないが分かったような顔でズレたこと言いやがって!」と激しい反応を招いたり(遠回しな表現)、一周して生暖かい目で見守られたりしていたあの人です。

一方でIGDA(国際ゲーム開発者協会)日本や、実験的・創造的な新しいゲームアイデアを発掘するイベント『センス・オブ・ワンダー ナイト』など、ゲーム開発者と業界を支える活動に長く携わっている人物でもあります。

最近ではVR懐疑派からクルッと転向してVR伝道者になり、一般向け解説書『VRビジネスの衝撃 −「仮想世界」が巨大マネーを生む』を著したうえに、みずからVRゲーム開発会社よむネコを率いてOculus Touch対応のVRリアル脱出COOPパズルゲーム ENIGMA SPHERE をリリースしたことでも話題になりました。

今回VRパラダイスで体験できる2作品は学生3人や4人の少人数チームで、企画から3か月という短期間で制作したとのこと。しかしあの新清士先生に学んだ学生チームならきっとすごいものに違いない、とハードルをガン上げして向かいます。

場所はここ。上海問屋の妖しい小物が誘惑してくる店頭ワゴンを振り切って右手から。1Fの店内からではなく、向かって右のエレベーターを使うこと。

エレベーターに向かう薄暗がり、遠目にも近寄っても何なのか全く伝わらない謎看板が今回のお楽しみ物件。

左のオータムマジックはただでさえ地味な色調に加えて、右のマッチョのインパクトで目立ちにくい可哀想な並びです。ただ何が描いてあるか分からない距離でも、色使いとフォントで「国産RPGのパッケージ感」「ソシャゲのカードイラスト感」が伝わってきます。デジハリのカリキュラム的には大成功ということかもしれません。

5FのVRパラダイス入り口でも看板がお出迎え。右の『マッチョと豆の木』は独自の世界観すぎて今はコメントを差し控えますが、血痕のようなウニのような黒い部分は栗のイガであったことが後に判明します。

投げるパズル?ゲーム『AUTUMN MAGIC』



Autumn Magic はHTC Viveヘッドセットと Viveコントローラを使うパズルゲーム。タイル状に分割された美麗なイラストから欠けたピースを見つけ、Viveコントローラではめて完成させます。

スクリーンショットでは視界が実際より狭いためわかりにくくなっていますが、両手にもったViveコントローラは右手が完成見本イラスト、左手はピースを掴む魔法の杖的なもの。

左右の手をかわるがわる見比べたり、顔に近づけて細かい点を見たり、手首を捻って絵を回転させたり、が現実のように操作できるのはVRならではの点です。

「絵合わせパズル」と聞くといかにもシンプルな学生の課題感、ゲームエンジンのチュートリアル感すら漂いますが、Autumnマジックがひとつ捻ったのは、ピースをViveコントローラで投げつけて進めること。

それもパズルの欠けた部分に直接投げるのではなく、宙に浮かぶリングに上手く放り込むことではまってゆきます。要するにシンプルな絵合わせパズルと、「VRでボールを投げて的に通す遊び」をくっつけた作品です。

ゲームの展開は主に投げるアクション部分が担っており、パズルピースを当てる的が動いたり、ワープしたり、VRらしく全球を使って分かりにくい場所に隠れたり、という、いかにもゲームゲームしたチャレンジで難度が上昇します。

ひととおりのステージを遊ばせてもらった印象は、結論からいえば初回効果もありかなり楽しめました。結局は単純な玉入れ遊びで、投げる部分とパズル部分が特に有機的に絡み合うでもなく、驚きの展開もありませんでしたが、楽しかったのはやはり物を投げて狙ったところに当てるという、原始的な行為そのものに快楽があること。

Viveコントローラのモーションを使ってピースを投げる動作は、現実に物を投げるのと非常に近い感覚です。じゃあ河原で石でも投げてろという話ですが、周囲の安全を気にする必要もなく、ボール拾いの必要もなく、的がいい感じに難しく、当てればご褒美をくれるのはゲームならでは。

体験できたのは4ステージほどと短く、一人で黙々と繰り返して楽しめるかと言えば厳しいものの、投げる原始的な快楽を仮想空間ならではの方法で演出し強化してゆくか、パズル部分との融合アイデアがあればさらに楽しくなりそうです。

バカゲー是か非か。『マッチョと豆の木』



今回の問題作が『マッチョと豆の木』。言葉を尽くしても伝わらないであろうことを承知で無理に説明すれば、「二人一組で巨人の腹に乗ってレーザーバリア?を操作し、上空から落ちてくるイガ栗が巨人に当たらないように守りつつ、上空2000mの宇宙空間を目指すゲーム」。ほら分からない。

タイトルの巨人や豆の木は完全に無視してメカニクスだけを見れば、プレーヤー2人が両手に持つViveコントローラを頂点として結んだ四角形で、上から落ちてくるアイテムを避ける、または拾うゲームです。

シーツの四隅を二人で持って、落ちてくる果実を受け止めるとイメージすればよいかもしれません。ゲームウォッチでいえばファイアやパラシュート。

二人が両手を閉じれば四角形は細くなり、近づけば小さく、広げれば大きくなるため、上空を警戒しつつ、息を合わせて立ち位置や両手を調節して動くのがゲーム性といえばゲーム性です。

と、説明すればスッキリしてしまうものの、実際に体験した感覚は実にモヤモヤした、表現が難しいバカゲーでした。

(蛇足。バカゲーは必ずしも罵倒表現ではなく、ある種のゲームを指すゲーム用語です。日本語のバカが必ずしも否定的でなく、呆れや裏返った賛辞にもなり得るように、バカゲーはゲームのさまざまな要素がバカバカしく楽しめるもの、といったニュアンスで使われています。念のため)

巨人の腹の上、というシチュエーションもスクリーンショットではよく分かりませんが、視界を覆って広がる筋肉の大地に立つと、黒光りする質感とモデルの粗さもあいまってなんとも言えない不条理感、バカディメンジョンに放り込まれた不安感をひしひしと感じます。テレビ画面のバカゲーを指差して笑うのは簡単でも、VRでバカ世界に視覚と聴覚を委ねるのはまた別の体験です。

細かいことを挙げれば、頭上の不自然な雲は雑な2Dスプライトのようにプレーヤーのローカル座標系と同じ向きで表示されるため、頭を動かすと上空の雲がパーツ単位でクルクル回転します。豆の木??らしき木とビルはディテール感やスケールをあわせるどころか、互いに突き刺さって重なったまま適当に放置されているなど、演出意図なのか純粋に技術や時間が足りなかったのか、その両方なのか悩む要素ばかり。

上空数百メートルでもう宇宙空間かよ!という適当さや、とりあえず筋肉質のスキンヘッド出せば笑いがとれるだろう、という小学生並の発想は確信と思われますが、雑な実装から来る世界全体がバグっている感覚はなかなか狙って出るものではありません。

簡単にバカゲーと呼びましたが、バカゲーにも狙い通りに完成させたにもかかわらずセンスが異様すぎて笑ってしまう天然系、意図的にバカバカしさの演出に取り組んで成功させた確信系、技術力や完成度が低すぎて却って楽しめてしまう逆転系など、さまざまな分類ができます。

特に作者の意図を忖度したり分類してどちらが上、どちらが下と判定する必要もありませんが、マッチョと豆の木の場合、もともと天然成分多めなのに計算ずくのバカゲーを目指したら力が足りなかった、三種混合の例なのでは?と思わされます。

この場合、技術力が向上して本当に意図どおりに作れるようになると、今度はよほどの天然かよほどの計算高さがないかぎり、普通につまらない自称バカゲーに近づいてしまう危険もあります。

そう思えば、現状の『マッチョと豆の木』は学生のうちにしかできないバカゲー、三か月目だけのバカゲーなのかもしれません。開発チームにはさらに腕を磨いて、肝心のゲーム部分をもう少しなんとかしてから、今度は研ぎ澄まされた「VRバカゲー」ジャンルを見せて欲しいものです。

追記:

この2作品が体験できるイベントは週明け5日までですが、土日は開発チームが在廊(?)する機会もあるとのこと。学生作品を本人たちに見守られつつプレイするガッツがある人、色々と聞いてみたいというかたは、VRパラダイスに予約や立会いについて確認してみてください。