株価70%減でもFitbit株が「買い」ではない2つの理由

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ウェアラブル機器メーカーのFitbitの株価が70%下落している。しかし、だからといって同社の株が「買い」になるわけではない。

筆者は2000年に、Fitbitのジェームズ・パークCEOが最高技術責任者を務めていたスタートアップ企業に投資をしたが、その会社は潰れてしまった。2015年にFitbitが新規株式公開(IPO)を行う際、再び投資をしたいと考えたが、残念ながら購入申し込みは退けられてしまった。筆者よりもっと重要な投資家たちが申し込みを行っていたのだろう。

現在、Fitbitの株価はIPO時の1株20ドル(約2,260円)よりも70%低い水準で取引されている。株価の下落を”買いのチャンス”と見ることもできるが、同社の今後の見通しについて市場が悲観的な見方をしているとも受け止められる。

株価下落の原因は、会計報告の内容と2017年の見通しの悪さだった。1月30日に発表された同報告によれば、2016年の10〜12月期の収益は対前年比20%減。企業再建のために全従業員の6%を解雇することも発表された。これにより年間の支出14億ドル(約1,583億円)を2億ドル(約226億円)まで削減できる見通しだという。

業績の見通しとしては、2017年前半は思わしくないが、後半は素晴らしいものになるという。パークは6月までの間に「一時的な停滞や移行の時期」がある一方で、後半は高級スマートウォッチ部門への商品拡大によって利益が見込めると予想。最終的に2017年の収益は15億〜17億ドル(約1,700〜1,920億円)になる見通しだという。

しかし、これは2015年と2016年の収益を下回る。さらに、2017年のフリーキャッシュフローは5,000万〜1億ドル(約57億〜113億円)のマイナスになるとの予想だ。

Fitbitの業績の低迷は、次の2点が原因だと考えられる。まずウェアラブル業界そのものの魅力が足りないこと、そして株価が収益成長率をベースに過大評価されていることだ。同社にはマーケット・リーダーであるという強みがあるが、新商品の発表によってそれを維持することができるのだろうか?

Fitbitの属するいわゆるウェアラブル業界は成熟しているように見える。調査会社IDCによれば、世界のスマートウォッチ市場は2016年の第3四半期(7〜9月期)に51.6%落ち込み、販売個数は270万にとどまった。さらにこの低迷市場で、アップルやグーグルなどとの激しい競争がある。

この動きは、今後の需要だけでなく価格設定も厳しくなることを示唆している。米国みずほ証券のベティー・チェンは「予測可能な見通しとして需要の低下と(平均小売価格への)圧力」が生じると予想している。

さらに、米市場が成熟していると考えている彼女は「ウェアラブル部門の成熟は、同社が今後、製品のアップグレードおよび新製品に依存するようになることを意味する。また海外での広まりが予想を下回るペースで、マーケティングおよびインフラへの投資によって国内市場の弱さを埋めることができない可能性を示唆している」

オーバーバリュー

投資信託の評価を手掛けるモーニングスターは、Fitbitの株は業界内の平均的な競合ほど高く評価されていないとしている。例えば同社の株価収益率(13.5)と株価売上高倍率(0.6)はそれぞれ、業界平均の25.8と2.6を下回っている。だが”さらに小型になる可能性”と営業利益率の低さ(業界の14%に対して8%)から、投資家たちが同社の株をオーバーバリューしている可能性がある。

Fitbitが今後、予想を上回る収益をあげることができるかどうかは、高価格で大量に売れる新商品を導入できるかどうかにかかっている。

市場シェアの拡大

その点においてFitbitにとって好材料となり得るのが、市場リーダーとしての位置づけだ。IDCによれば2016年第3四半期、Fitbitは「チャージHR(ワイヤレス心拍計・活動量計リストバンド)の後継機チャージ2を発表したことで再び市場リーダーに返り咲いた」という。IDCは「長期戦略や株価にまつわる否定的な評価はあるが、短期的には同社が今後もリーダーであり続ける」と予想している。

だがこの業界の製品サイクルは極めて短く、同社が新たに成長路線に乗れるかどうかは、競合よりもはるかに優れた新商品を発表できるかどうかがカギとなる。同社の株を今、買うべき理由があるとすれば、スポーツ用品大手による買収の可能性がある場合だろう。だが残念ながら、ナイキのような企業が同社を買収することで、より多くのスニーカーを売ろうとするとは思えない。