雪に包まれた新千歳空港

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 2016年の年間訪日外国人(インバウンド)は、政府見通しを大きく上回る2400万人強となった。インバウンドは毎年、確実に増え続けており、空港の経営は、その恩恵にあずかっている。

 成田国際空港の16年1〜12月総旅客数(国際線、国内線合計)は、3905万人と過去最高を記録した。国際線が3204万人で、このうち外国人旅客が1392万人と日本人旅客1330万人を初めて上回った。ほかに成田空港を通過した旅行客が482万人いる。関西国際空港も絶好調で16年1〜12月の総旅客数は2523万人と、こちらも開港以来の最高記録となった。

 国が管理する空港も、業績は改善している。国土交通省の最新の「空港別収支の試算結果について」(15年度)によると、国が管理する27空港(乗降客数ゼロの八尾空港を除いた26空港)のうち、18空港が黒字となった。国管理の空港といっても、規模はピンからキリまである。年間の乗降客数が1000万人以上なのは、東京国際(羽田)、新千歳、福岡、那覇の4空港。仙台、広島、松山、長崎など7空港が200万人以上1000万人未満で、函館、釧路、小松、大分など16空港は200万人未満となっている。

 国管理空港では、滑走路など航空系事業は国が、旅客ターミナルなどは民間が管理運営している。

 まずは全体の収支を見てみよう。15年度の航空系事業のEBITDA(利払前税引前償却前営業利益)は346億6200万円で、前年に比べ約12億円の増加。非航空系事業は774億7900万円で対前年比49億7000万円増えた。

「インバウンドの大幅増加に伴う航空需要が拡大するなかで、国際線着陸回数の大幅増、LCC(格安航空会社)の新規就航ラッシュなどで着陸料等収入が大きく増え、航空系事業は改善傾向が続いています。非航空系事業も国際線乗降客数の大幅増やインバウンド消費拡大の恩恵で拡大傾向にあります」(航空関連を取材するジャーナリスト)

●空港別収支では羽田が断トツ

 空港別の収支を見ると、羽田が断トツとなっている。航空系事業と非航空系事業を合計したEBITDAのトップ10は次の通りだ。

(1)東京国際 890億6800万円
(2)新千歳 144億7500万円
(3)福岡 43億1300万円
(4)鹿児島 10億900万円
(5)松山 7億600万円
(6)小松 6億9342万円
(7)熊本 6億9270万円
(8)広島 6億3300万円
(9)長崎 5億6800万円
(10)宮崎 4億7200万円

 羽田、新千歳、福岡は順当なところだが、近年、インバウンドが急増している那覇が上位に入っていないのはなぜか。

「那覇も黒字ですが、わずか2億1500万円にとどまっています。国際線旅客ターミナルでの施設使用料やテナント売り上げは順調で、非航空系の数字は55億3300万円の黒字と、羽田、新千歳、福岡に次いで4番目です。その一方、滑走路増設の費用が増加したことで航空系事業が53億円余りの赤字となったため、全体の黒字額が小さくなったのです」(同)

 他方、赤字の空港を悪い順に並べると次のようになる。

(1)稚内 ▲6億3800万円
(2)新潟 ▲3億8300万円
(3)釧路 ▲3億600万円
(4)高知 ▲3億200万円
(5)丘珠 ▲2億6100万円

 こうしてみると、インバウンドの恩恵が乏しいローカル空港が苦戦している。

●富士山静岡空港、経済効果は388億円

 県や市など自治体が管理する地方空港は、軒並み苦戦中で赤字のオンパレードである。多くは税金で補てんする状況が続いているが、一方で奮闘中の空港もある。静岡県の富士山静岡空港がそうだ。同空港は世界遺産の富士山の麓に09年に開業したローカル空港で、開港当時は滑走路近くの立ち木の問題でトラブルが起き、開業後の苦戦がささやかれた。県が管理し、空港運営は民間企業の富士山静岡空港株式会社が行っている。

 そんなローカル空港が大化けした。現在、就航する国内線は札幌、福岡、鹿児島、那覇の4路線。国際線は韓国、台湾、中国向けの路線があり、エアソウル、中国東方航空などが乗り入れている。16年度の着陸回数は国内線・国際線合計で4939回。前年度の3793回に比べて3割増えた。搭乗者数も杭州線、南京線など新規就航路線が増えたことで69万8652人(国内線・国際線合計)と、こちらも前年度比27%の大幅増となった。

 減価償却など企業会計の考え方を取り入れた経常損益は16億9355万円の赤字となったが、EBITDAで見ると県は5億900万円の赤字、富士山静岡空港は5億9700万円の黒字である。合算すると8800万円の黒字となった。前年度は2億1000万円の赤字だったから黒字転換したことになる。16年12月に川勝平太静岡県知事が、静岡富士山空港の静岡県内経済への波及効果は388億1000万円だったとの推計を明らかにした。

 しかし、楽観は禁物だ。16年になって中国路線の撤退が相次ぎ、最盛期には十数路線あったが今は1ケタになってしまい、16年の搭乗者数も減少気味だ。“チャイナメリット”がいつ“チャイナリスク”に転化するかわからない状態なのだ。

 実際、釧路空港では今年になって、空港ビルに入っていたラオックスが、開業からわずか半年で閉店している。爆買いが一気に下火になったように、空港経営の好調ぶりがいつまで続くかは保証できない。

 インバウンドを上手に取り込むなど、かじ取り次第で空港経営は儲かるビジネスになってきた。新千歳空港を軸に北海道7空港を民営化するプランなど、複数の民営化計画が検討されている。今後、各地で空港の経営権をめぐる争奪戦が勃発するかもしれない。
(文=編集部)