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感覚は正常で意識は鮮明にも関わらず、眼球運動とまばたき以外のすべての随意運動が行えなくなる閉じ込め症候群の患者との意思疎通が脳スキャンによって可能になったと報告されました。患者に「生きていて幸せか?」という質問を投げかけてところ、「はい」という答えが返ってきたそうです。

Brain-Computer Interface-Based Communication in the Completely Locked-In State

http://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.1002593

Reached Via a Mind-Reading Device, Deeply Paralyzed Patients Say They Want to Live

https://www.technologyreview.com/s/603512/reached-via-a-mind-reading-device-deeply-paralyzed-patients-say-they-want-to-live

After years of being “locked in,” patients communicate, say they’re happy | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2017/02/after-years-of-being-locked-in-patients-communicate-say-theyre-happy/

Groundbreaking system allows locked-in syndrome patients to communicate | Science | The Guardian

https://www.theguardian.com/science/2017/jan/31/groundbreaking-system-allows-locked-in-syndrome-patients-to-communicate-als



閉じ込め症候群の患者は意識や感覚は正常にもかかわらず、話したり手足を動かしたりということができないので、通常寝たきりの状態になり、外部と意思疎通を図ることができません。

しかし、ドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲンの神経科学者であるNiels Birbaumer氏が率いる研究チームは、脳波と血流を測定する装置を使うことで患者との意思疎通を可能にしたとのこと。研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)によって体が麻痺した4人の患者に装置を取り付けて質問を行い、「はい」か「いいえ」で答えてもらうという試みが行われました。そして「パリはドイツの首都ですか?」といった地理的な質問や家族の名前などに関する質問、そして「生きていて幸せか?」といった質問がされたところ、4人の患者全員の答えを確認することに成功したとのこと。

閉じ込め症候群の患者と意思疎通を図ることを目的としたBirbaumer氏らの研究は1999年にスタート。これまでの研究では、眼球を動かすことが可能なALSの患者とブレイン・マシン・インタフェースを使って意思疎通を図る方法や、体の一部を動かせる患者の血流や脳波を測定して意思疎通を図る方法は確立されていました。しかし、まったく体を動かすことができない患者と意思疎通を取ることには成功していませんでした。

新たなアプローチにおいて、研究チームは脳波検査と近赤外線分光法とで血中の酸素レベルと脳の電気活動を測定するデバイスを開発。そして、ブレイン・マシン・インタフェースによって測定したデータのうち何が患者にとっての「はい」で何が「いいえ」かを解読しました。このとき、測定された患者の反応の70%には一貫性があったとのこと。



いくつかの決まった質問を行ったのち、研究者らは「あなたは背中に痛みを感じている」「生きるのが楽しい」「悲しくなることはほとんどない」といった自由な質問を行いました。すると、何年も動けない状態にありますが、4人のうち3人の患者は「生きるのが幸せで人生を愛している」という意志を示しました。残りの1人は、家族の意志によってこの質問が行われなかったそうです。ちなみに、「娘さんがボーイフレンドと結婚するといったら喜びますか?」と尋ねられて「いいえ」と答えた患者もいたとのこと。

もちろん被験者が4人なので、今後さらなる調査を行う必要がありますが、「生きていて幸せ」という答えを知れた家族の安堵は計り知れません、とBirbaumer氏は語っています。