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オランダはアムステルダムに本社を構えるGemalto(ジェムアルト)が、2017年にデジタルIDに関して注目すべき5つのポイントを発表している。同社は、従業員IDカードや機器識別モジュールやパスポートまでICカードリーダーなどデジタルID技術を軸にソリューションを展開する企業だが、2017年はかつて無いレベルでデジタルID(Digital ID)が進むだろうと紹介している。

同社は世界46カ国で事業展開しており、公的機関での導入事例も多いが、安全なデジタルのIDに関して、公的機関の関係者とそのパートナー企業がかつてないレベルの進化を経験する年になるという。多くの国でデジタルIDの取り組みが既に始まり検討されており、世界銀行は2030年までに全ての人にデジタルIDを発行する取り組み「ID4D」を進めていることも紹介している。

全世界でいまなおおよそ15億人が政府や公的機関によりアイデンティティがドキュメントにより認定されない人々がいるという現実の克服を掲げるもので、世界銀行は大半がアジアやアフリカになると公式Webページで紹介している。"アイデンティティ"がいかに重要であるかを示すものだが、デジタルの世界でも同様のことが言えるという。Gemaltoが述べるデジタルIDの普及に関しての注目すべき2017年のポイントは次の5つ。

1.モビリティがさらに浸透
2.セキュリティと信頼へのニーズがさらに高く
3.スマートシティへのシフトが加速
4.デジタルIDシステムで公共の関与を求める声が増加
5.国単位の国民ID計画に関するイニシアチブと実装が増加

1.モバイルの加速
2017年はIDのモバイル化がさらに進む。モバイル通信が普及すると今更言われても、誰も驚かないだろうが、それでもこのトレンドを強調しておく必要がある。減速の傾向が全く見られないからだと端的に指摘してる。そしてこれがデジタルIDに与える影響は実に深くなる。モバイルと物理的なカードなどを組み合わせたIDソリューションも公的機関で進んでいることを同社は別のレポートでも紹介しているが、

・2017年、インターネットを利用する75%が、モバイル端末からインターネットにアクセスする(Zenithの最新のレポート「Mobile Forecast」より)。
・Google(将来の技術について研究開発を重ねている重要な企業だ)は着実にモバイルオンリーの世界に移行を進めている。

などを例示、さらにこの動きが進むことを予見する。生活に密着したデバイスになったことは間違いない。同社では、デジタルIDに関わる全ての人にとって言えることは、"モバイルファースト"ソリューションへ備えることだ、としている。

2.セキュリティの担保

アイデンティティは、個人をその人が属するコミュニティと結びつける。公共機関にとっては、2017年の主要な課題は、協調的なデジタル上の結びつきを構築することが肝要であるとその意義を強調する。信頼性が担保させることで、安心したデジタルの世界が広がることは間違いない。

その上でこれを実現する唯一の方法は、公的信頼のフレームワーク(public framework of trust)だとしている。フレームワークの土台には、プライベートなデータ保護とセキュリティの保証(guarantee)が必要になるという。

サイバーセキュリティにおいても"ID"は重要なキーワードのひとつだ。メールひとつ考えても、ログインされてしまえば全ての情報は他人のものになる。サーバーやPCでも同様だ。すべてをコピーし、すべてを消去することもコマンドひとつで実現してしまう。

"本人"であることの重要性はセキュリティと強く関わっていく。2017年はセキュリティを強化し詐欺行為に対抗するための対策が一般に市民により受け入れられる年になるだろうと予測する。

3.スマートシティが活動の土台になる

興味深いのがスマートシティ(SmartCity)への言及。世界中で人口が都市部に集中しており、これは21世紀のトレンドの1つだが、このような都市部への流入と密接に関係しているのが技術開発だという。

IoTやデジタル化が都市部で進み、都会的な洗練、幅広い通信と公共機関の間を結びつけるモデルになっており、電子政府(eGoverment)やモバイルガバメント(mGovernment)がその一つの鍵となっていく。デジタルIDはそこで個人が豊富なサービスやサポートにアクセスするために必要になる。都市部でのデジタルIDはローカルにも広がりを見せることになる。

4.デジタルエコノミーの持続的成長に不可欠な公共による管理

クラウドサービスや身近になってくるIoTの拡大が将来にわたり持続的に成長するためにはデジタルIDは不可欠だという。

現在、経済環境は様々な課題を抱えており、各国の政府は持続的で協調的な成長を模索しているがデジタルIDは、金融、中央政府、地方政府、それにデジタル通信事業者の間の密な連携が効果のあるソリューションを支え、ベストプラクティスの実装につながるだろうと指摘する。

デジタルIDそのものに新しいビジネスチャンスの源があるという意味ではなく、デジタルIDは多種多様なアプリケーションを可能にし、2017年は新しい構造と規制の受け入れの年になると予測。政府や公共機関の役割は次のようになるだろうと例示する。

・国レベルで関心を高め、その勢いを維持させる。 ・地方のトランスフォーメーションにつながる地方政府の投資をサポートし協調させる。 ・地方レベルのイニシアティブが一貫性があり相互運用性のあるソリューションになるようにする。市民はどこからでも同じようなサービスモードにアクセスする必要がある。

デジタルIDと関連サービスの受け入れは急増しており、コンセプトが最初に発表されたのは15年以上前のことだが、今が転換点であることは明確だと記してある。

5. 3段階でシフトが進む

Gemaltoでは、デジタルIDの進化は次の3段階のステージで進むと予想している。

・理論から実証実験(PoC)へ 公共サービスでの初となるブロックチェーン実証実験が展開される。中でも、電子政府とヘルスケアなどの分野が先行しそうだ。デジタルID向けとしてブロックチェーン技術への関心が実際にあるのかについてはまだ明確な答えは出ていない。

・実証実験からパイロットへ 実証実験技術が、新しい標準とともに安全で相互運用できるソリューションに発展する訳だが、2017年はデジタル運転免許証、モバイルのデジタル証明書、仮想/デジタルおよびクラウドパスポートにとって「パイロットの年」となる。

・パイロットから実装へ 各国の動きは予想を上回るスピードで、この一年で転換点に達する。多数の国でID計画が重要時期に入っている。

全ての重要な問題やトピックを予想するのは不可能だが、2017年はデジタルID関連でたくさんの課題とチャンスがある年になりそうだと締めている。デジタルIDの動きが加速していくことが覗えるが、公共サービスを含め、デジタルIDは重要なものであるが故に最後(Part5)に記されているように、十分な実証実験を重ねながら進めていくことが重要だ。どんな課題や問題があるか?を検証しながら、着実に前進することが求められる。その末には、デジタルエコノミーの持続的成長が成果として現れてくるに違いない。

(長岡弥太郎)