「あの」遊川和彦が「大胆に脚色」した初監督作……大丈夫か!?


重松清の小説『ファミレス』を原作とした映画『恋妻家宮本』の公開がスタートした。

脚本&監督を務めるのは、『GTO』『女王の教室』『家政婦のミタ』など、社会現象クラスのヒットドラマを多数手がけている人気脚本家・遊川和彦。

ただし『家政婦のミタ』でミラクルヒットをぶっ放して以降の遊川は、どうも「今までにないドラマを!」という意気込みが空回りしてしまい、『○○妻』『偽装の夫婦』、そして今世紀最大の鬱展開朝ドラと称される『純と愛』など、炎上ドラマを連発している。

そんな遊川和彦の初監督作。上手くいってるのか、から回っちゃってるのか……!?

まず気になったのが、公式サイトに書かれている「人気作家・重松清の『ファミレス』を原作に、遊川流の大胆な脚色を加えたもの」という文章。

大胆な脚色、加えちゃったかぁ〜。いきなり不安でいっぱいだ。

しかし、結論から先に書いちゃうと……面白かった! 良かったよ、遊川さんッ!


最近の遊川作品で頻発していた極端なキャラクター、唐突すぎるストーリー展開、ヘヴィーすぎて手に負えないテーマなどが抑えられて、かつて遊川が得意としていたライトなコメディ路線のノリで楽しく観ることができた。

もちろん、『ファミレス』→『恋妻家宮本』とタイトルが変わっちゃっていることからも予想できるように、かなり「大胆な脚色」をしちゃっているので、原作への思い入れが強い人が観たら「なんじゃこりゃ」かも知れないけど。

主役級キャラ3人のうち2人をカット!


主人公は50歳の中学校教師・宮本陽平(阿部寛)。

原作では陽平に加え、タケ、オガという、おじさん料理仲間たち3人を中心に、料理を通じて、それぞれの夫婦関係や家庭の事情を描いてる、ほぼ主人公3人といっていい内容なのだが、映画版にはタケとオガは出てこない。

当然、ふたりの絡むエピソードは全カット。なんちゅう大胆な脚色!

その代わりにメインに据えられたのが、陽平とその妻・美代子(天海祐希)とのビミョーな夫婦関係。

一人息子の結婚で、はじめてふたりきりの生活を送ることになった宮本夫婦。今さら新婚気分という感じでもないし、恥ずかしいやら照れくさいやら。

そんな時、陽平は本棚から美代子の捺印済み離婚届を見つけてしまい「えっ離婚する気なの!?」と思い悩むのだった……。

この、遊川が好きそうなエピソードをとっかかりに、オリジナル展開をグワッと広げて映画化しているのだ。

天海祐希のかわいさと、菅野美穂のエロさは見逃せない


原作の、真面目な中学教師とその妻という地味な夫婦を、阿部寛と天海祐希の美男美女コンビが演じるというのは、かなり違和感があったのだが、これが予想外にハマッていた。

特に『女王の教室』『演歌の女王』『偽装の夫婦』で遊川と組み、そのたびに新しいキャラクターを作り出してきた天海祐希の主婦キャラが絶妙。

酔っぱらって夫に絡み、ソファで寝ながら尻をかき、パックをしながら歩き回る。そんな地味だけどかわいらしい……まあ、従来の天海祐希のイメージからはかけ離れたフツーの主婦役をバッチリこなしていた。

それも、身長189cmの阿部寛との組み合わせが効いたのではないだろうか。生半可な身長の夫役じゃ、171cmの天海祐希が地味な主婦には見えないもん。

また、原作におけるタケ、オガの代わりに、陽平の料理教室仲間として登場するのが、『曲げられない女』菅野美穂と、『リバウンド』相武紗季という遊川ファミリー(?)。

当然、おっさん3人の友情と、男1人&女2人の関係性とではまったく違った展開となり、菅野美穂はなぜか阿部寛とちょいお色気なことになるのだが……。露骨な描写はないのに、コレがエロい!

ヌード写真集『NUDITY』を見た時よりもコーフンしました。さすが、出産済み女性の色気は違うわ!?

エンドロールまでちゃんと観よう


このように原作からかなりアレンジを加えた遊川コメディ全開の本作ではあるが、「正しさより優しさが大切」という原作のテーマはキッチリと押さえられていて、笑って泣いてほっこりする「感じのいい」作品に仕上がっている。

ただ、映画というよりはテレビの2時間ドラマ……。むしろ、バッサリ削った原作エピソードを復活させて連ドラでやってくれたらよかったのに、という気もするが。

やたらとセリフだけで状況説明やストーリーが進行したり、最近のテレビドラマでよくある派手なテロップ処理が目についたりと、脚本、演出ともに、どーしてもテレビドラマっぽいのだ。

まあ、ヘタに「ワシの初監督の映画じゃー! 壮大なモン撮るぞー!」と気合いを入れないで、得意のテレビドラマのフォーマットでコンパクトにまとめたことが功を奏しているんだろうけど。

エンドロールの演出も、ある意味、非常にテレビ的ではあるのだが、テーマソング「今日までそして明日から」(吉田拓郎)の歌詞がやたらとグイグイ入ってきて、別に泣くようなところじゃないのに涙が……。

こういう過剰なサービスをしてくれるあたりも実に遊川作品らしい。途中で帰らないで最後まで観よう!

遊川さん、ボクらはこういうドラマが見たかったんだよ! 誰から唐突に死んだり、植物人間になったりといった鬱展開じゃなくて!(それもある意味サービス精神だったんだろうけど)

……ということで、『演歌の女王』『学校じゃ教えられない!』『曲げられない女』『リバウンド』あたりの遊川ドラマが好きだった人には間違いなくオススメ。

そして『純と愛』で「バカヤロー! なんだこの最終回は!」とブチ切れた人も、再チャレンジしてみて欲しい。

原作ファンの人は……うーん、別物として楽しんだらいいんじゃないかな?
(イラストと文/北村ヂン)