専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第90回


 ゴルフのスコアカード裏などに、「コースレート71.5」とか「72.2」とか書いてあるのをよく見かけますよね。あれって、いったい何なのでしょうか?

 一般的には、ゴルフコースの偏差値を表している、と理解していただければよろしいかと思います。

 それでは、何のためにあるのでしょうか?

 基本は、ハンディキャップ算出のためです。

 みなさん、ありとあらゆるコースの、しかも違ったティーグラウンドからプレーしますよね。そうすると、別々のコース、異なるティーグラウンドからプレーした人同士がその優劣を比較した場合、単なるスコア比較だけでは、上手い、下手の判別がつけられないわけです。

 そこで、違うコースでプレーしたとしても、その実力を推し量るひとつの目安(ハンディキャップ)を設けるため、まずはコースレート72の基準コースを作って、そのコースより、どれだけ簡単か、難しいかを決めようとなったのです。

 例えば、「オレは先日『79』を出したけど、キミは『81』でしょ。じゃあ、オレのほうが上手いよね」という方がいたとしましょう。

 その際、コースレートがあることによって、『81』のスコアの方はこう反論できます。

「あなたの『79』は、河川敷コースの、しかも全長5800ヤードのレギュラーティーからプレーして出したスコアでしょ? 僕は、全長6900ヤードのチャンピオンコースで、それもフルバックからラウンドして『81』をマークしたんだから、僕のほうが上手いよ」と。

 このように、単なるスコアだけでは優劣がつきにくいのですが、コースレートがあるとある程度の判別が可能です。

「79」対「81」の戦いをざっくりと解説します。

 まずはコースレートをもとにしてスコアをコントロールします。「79」の方の、河川敷コース・レギュラーティーでのコースレートを調べると「68」でした。「72」が基本ですから、このコースは基本コースよりも4打、簡単ということですから、「79」の方のコントロールしたスコアは「83」となります。

 一方、「81」の方の、バックティーからのコースレートは「73」でした。ということは、基本コースよりも1打、難しいということですから、コントロールしたスコアは「80」となります。

 結果、「79」の方と「81」の方のコントロールされたスコアは、「83」対「80」。「81」のスコアの方のほうが「79」の方より上手い、ということになります。

 私も鶴舞カントリー倶楽部(千葉県)のメンバーだった頃は、コースレートを加味してハンディキャップ申請をしていました。鶴舞CCは全長7000ヤード未満ながら、コースレートは「73」程度あって、1打、得していたんですね。でも、私のスコアは90台だったので、焼け石に水でしたけど......。

 今にして思えば、なんであんなに難しいコースのメンバーになったんだろうって思います。平成時代、最大の謎ですね。やはり、簡単なコースで80台の中ごろを出していたほうが、気分は爽快ですよ。

 ところで、各ゴルフ場のコースレートはどうやって算出しているのでしょうか。「なんか、距離が長そうだから、難しくしとけ」とか、そんな適当なものではありません。

 コースレートの基本概念は、「ハンディキャップゼロのスクラッチプレーヤーが、コースを10回ラウンドした平均値をコースレートとする」らしいです。が、そう何人もスクラッチプレーヤーがいるわけでもなく、しかも日本中のコースを10回ずつラウンドするなんて、ほぼ不可能です。

 そこで、JGA(日本ゴルフ協会)から任命を受けたコースレーティング査定チームがコースに派遣され、査定評価するのです。

 実は以前、コースレーティングの査定ラウンドにお邪魔して、どんなことをしているのか、取材をさせてもらったことがあります。その内容を簡単に紹介しましょう。

 取材で行ったのは、千葉県にある名門の林間コースでした。4人のスクラッチプレーヤーがフルバックから、メモを取りながらプレーをします。みなさんの腕前は見事なもので、一応ドライバーの飛距離は250ヤードが基本のようです。

 しかし先述したとおり、実際のところ4人もスクラッチプレーヤーをそろえるのは無理な話で、中にはシングルプレーヤーの方も混ざっていました。もちろん、全員OBなんてしませんよ。

 査定ラウンドは、完全ホールアウトの試合形式ではなく、フェアウェーの落としどころは適切なポジションにあるか、バンカーのアゴは難しすぎないか、極端に難しいレイアウトになっていないか、OBラインが近すぎはしないかなど、難易度を中心にチェックしてラウンドします。

 そして、査定チームはプレー後、即座にミーティングを開始します。プレー中のチェック箇所を数値化したものを4人で確認し合って、極端な成績をつけすぎていないかなどを調整し合うのです。例えば、あのパー4は難しいから4.2にすべきじゃないか、とかね。

 査定委員の方とて人間ですから、評価が分かれるときがあります。「あのバンカーは難しいよ」「いや、この前行ったコースのバンカーよりは簡単だよ」「いやいや、○○コースのバンカーより、アゴはきつくないんじゃないか」とかですね。

 そうやって意見を出し合うわけですが、そこで必要になるのが、基準となるコースです。私の取材した頃は、霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)の東コースがコースレート算出の基準になっていました。

 ですから、査定委員は霞ヶ関カンツリー倶楽部で研修をしており、そのうえで「ここは、霞ヶ関の何番のバンカーよりどれだけ難しいか?」といった具合に比較して、難易度を計算していました。

 このコースレート、理想を言えば各ゴルフ場が10年に1回は査定をして、新しいコースレートを更新していったほうがいいでしょうね。鶴舞CCのメンバーだった頃、ちょうどコースレートの更新が行なわれ、樹木が茂って難しくなったので、平均0.5ほどコースレートがアップしたのを覚えています。

 ただそうは言っても、実際問題としてコースレートの更新にはわりとお金がかかります。基本はJGAに加盟していることが前提ですし。そうなると、JGA加盟料も払うことになり、経営難で四苦八苦しているコースにとっては、かなりの負担になります。

 実情としては、コースレートを更新しないコースは多く、そもそもコースレートを測定していないコースも結構あります。

 そんな状況を打破するためにも、誰か、スマホで簡単にコースレートを計測できるアプリ作ってくださいな。たぶん、それが実現できたら、開発者はゴルフ殿堂入りができるかも、ですよ。

◆木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa