小池百合子東京都知事(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 小池百合子都知事の言動が、注目を集め続けている。

 1月16日、日本記者クラブの新年互礼会員懇親会で、東京五輪の公式グッズ「東京染小紋風呂敷クロス」を首に巻いて登壇し、「組織委員会の森さん、文句ばっかり言ってますけども、私はちゃんと組織委が稼げることを考えている。この『器の違い』をぜひ感じていただきたい」と、皮肉たっぷりに語った。

 かと思えば同20日の定例記者会見では、豊洲市場の土地購入をめぐる住民訴訟に関して、購入当時の都知事、石原慎太郎氏に賠償責任はないとしていたこれまでの都の方針を見直すと表明。

 森氏、石原氏といった“大物”相手に立ち向かう姿勢を示したが、これはすべて夏の都議選に向けた計算だと、永田町関係者は指摘する。

「小池氏はこれまで東京都議会自民党を相手に“闘う構図”をつくり、支持を得ていました。しかし、東京五輪の競技場問題は落ち着き、今度は周辺県の費用負担の問題が発生。築地市場の豊洲移転についても、都民の食の安全や築地で働く人たちの生活をどう守っていくのかという問題もからみ、複雑化してきました。これまでの都民からの支持を維持するには、新たな対立構図をつくる必要が出てきたということでしょう」

 一方、都議選対策も着々と進んでいる。1月7日には小池氏が主宰する勉強会「希望の塾」政策立案部会の筆記試験が実施され、1600人が受験した。都議選候補やその政策スタッフを選ぶためのものである。それに合格した者は、1月下旬から3月中旬にかけて特別講座を受講する。その講座で講師となる選挙プランナーはこう語る。

「選挙についてのイロハから戦略を叩き込むカリキュラムで、1回3時間におよぶ濃い内容です。候補者に選ばれた者は、パートナーをひとり連れてくることが条件です」

 選挙は候補者ひとりでは戦えない。陣営を取り仕切るスタッフ、つまり参謀も必要だ。その要となる人間も一緒に講義を受けさせ、選挙対策を学んでもらうという企画である。

●緻密な戦略

 とはいえ、都議選では小池陣営はさほど当選せず、結局都議会自民党が強さをみせるとの声もある。候補者が落下傘候補だったりタレント候補だったりすれば、賞味期限は短く、有権者はすぐに見限るとの見方があるからだが、前出・選挙プランナーはこう語る。

「一概に小池氏側が弱いという指摘は、適当とは思えません。2006年に当選した嘉田由紀子滋賀県知事は、翌07年の県議選で“嘉田チルドレン”を多数当選させ、与党会派づくりに成功。08年の橋下徹大阪府知事は11年の府議選、大阪市議選、堺市議選の“トリプル選”で、橋下氏が代表を務めた地域政党・大阪維新の会が、いずれも第1党の地位を確保しました。知事になって次にやるべきことは、議会で与党を形成すること。そうしなければ、政策は何も実現しません。一方、1995年に当選した青島幸男都知事は議会を敵に回し、何もできずに有権者の支持も急速に落ちていきました。手順を踏んで選挙対策を講じている小池氏は、与党会派をつくれるとみています」

 候補者の選定、候補者とブレーンの育成、知事自身の支持率の維持など、緻密な戦略の下に進められていると指摘するのだ。

 都議選は42選挙区から127人が選出される。そのうち、1人区は千代田区、中央区、武蔵野市、青梅市、昭島市、小金井市、島部の7選挙区。ここはすべて議席を確保する考えで、もっとも重要なのは港区、文京区、台東区、渋谷区、荒川区、立川市、三鷹市、府中市、小平市、日野市、西東京市、西多摩(福生市、羽村市、あきる野市、西多摩郡)、南多摩(多摩市、稲城市)、北多摩第2(国分寺市、国立市)、北多摩第4(清瀬市、東久留米市)の2人区、計15選挙区だという。

「これまで自民と野党で分け合っていた選挙区で、自民党候補を落とさないと議会の与党形成はうまくいきません。そのためには、小池氏が民進党と共産党とも手を結び、両党の候補者調整をさせる必要性があります。民進、共産の一本化で、小池陣営候補も出馬し、自民候補を落とす。つまり、次期衆院選で野党がやろうとしている候補者調整を、小池氏は一歩先に仕掛けていく腹積もりのようです」(永田町関係者)

 早くも火花を散らし始めた“東京・夏の陣”。果たして小池戦略はうまく実を結ぶのだろうか。
(文=朝霞唯夫/ジャーナリスト)