ソニーのMVNOなのに、Xperiaがない不思議──新生「nuroモバイル」を徹底解剖:週刊モバイル通信 石野純也

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昨年10月にSo-netからnuroモバイルへとブランドを変えたソニーネットワークコミュニケーションズのMVNOサービスですが、ここに2月1日から新たなプラン、オプションが加わりました。

現状では38万契約(「0 SIM」を除く)のnuroモバイルですが、新プランに加えて端末を充実させることで、「早期に50万契約を目指す」(モバイル事業部門 ビジネス開発部 部長 細井邦俊氏)構えです。

2016年10月にリブランドしたnuroモバイル

新プラン、新サービスを語る、ソニーネットワークコミュニケーションズの細井氏



時間で区切るのが斬新な「5時間プラン」


新たに発表したプランは、「5時間プラン」という名称で、データ通信を"容量"ではなく"時間"で区切っているのが特徴。1日5時間まで高速でデータ通信ができ、それを超えると低速になるという仕組みです。時間のカウントは自動で行い、「一定時間内に一定の通信があった場合に、5時間から(時間が)減る形になる」といいます。閾値などは公開されませんでしたが、メールなどのテキストが中心の場合は、高速通信であるとカウントされず、時間を消費することはないようです。

(訂正 2017/02/01 13:20 記事掲出時、一定時間内に一定の通信があった場合に、低速通信から高速通信に切り替わると記載していました。しかし実際には、高速通信は常時ONで、一定時間内に一定の通信があった場合に、あくまで時間だけが減る形となっていました。訂正しお詫び申し上げます。)

時間で区切るのが斬新な「5時間プラン」を発表

高速通信が必要と自動で検知する

一度高速通信になると、5分間その状態が継続するとのこと。発表会上にあった5時間プランのSIMカードで通信を行ってみましたが、YouTubeの動画を2〜3分読み込んでみたところ、高速通信可能な時間が5分ぶん減っていました。時間で区切られているため、使える容量が分からないのはネックですが、逆にこの時間内に収まるような使い方をしているのであれば、容量を気にしないでいいのはうれしいポイントです。

マイページから残り時間をチェックすることが可能

1日ごとに時間が復活するため、比較的ヘビーに使うユーザー向きと言えるかもしれません。料金はデータ通信のみの場合で、月額2500円。他のプランと同様、音声通話をつけると、ここのプラスで700円かかります。ちなみに、nuroモバイルの10GBプランは2300円で、5時間プランはそれよりも200円高いことになります。この価格設定からも、ヘビーユーザー向けの料金プランであることが分かるでしょう。

時間で区切るというのは他社にないおもしろいアプローチで、これがどこまでユーザーに受け入れられるのかは要注目です。

10GBプランより高く、ヘビーユーザー向き

サービス面での見劣りを一気に挽回


nuroモバイルにブランドを変え、ある意味でイチから出直したソニーネットワークコミュニケーションズですが、料金体系をシンプルにした半面、他社に対して見劣りするところもありました。

先の細井氏も、「音声定額は我々が遅れていたところ」と素直に認めます。この遅れにキャッチアップすべく、nuroモバイルでも音声定額サービスが開始されます。

新たに追加されるのが「5分かけ放題」で、こちらは月額800円のオプション。他社同様、中継電話の仕組みを使い、プレフィックス番号をつけて発信することで、ドコモの設備を迂回し、定額料金を実現しています。nuroモバイルならではなのが、アプリの作り。通常、こうしたサービスはプレフィックス番号をつけて発信するための専用アプリとして提供されますが、nuroモバイルの場合、Androidでは端末に内蔵された標準のダイヤラーを利用します。裏側で設定を書き換え、標準のダイヤラーからプレフィックス番号つきで発信できるようにしたのです。

月額800円の「5分かけ放題」もオプションとして導入

アプリで切り替えて標準のダイヤラーで発信を行う

さらに、OCNモバイルONEやIIJmio、mineoなど、一部MVNOで導入され、人気を博しているバースト機能も導入します。これは、低速通信時でも、最初の数秒間だけ高速に通信するというもの。nuroモバイルでは「初速バースト」という名称になります。

バースト機能は、ユーザーにとって通信が快適になるだけでなく、転送が素早く終わるため、通信状態が続くよりも総トラフィックに与える影響が小さくなると言われています。容量を使い切った低速時でもある程度快適になることで、使い勝手も増しそうです。

速度制限時も通信開始直後の速度が上がる「初速バースト」

また、他のnuroモバイルユーザーとデータ容量を分け合える「パケットギフト」もスタートします。他のユーザーとデータ容量を融通し合える機能は、mineoやLINE MOBILEが導入済みですが、mineoは10MB単位、LINE MOBILEは500MB単位と、やり取りできる単位が異なっています。

これに対し、nuroモバイルは、10MB以上、1MB単位と、細かく容量を指定できるようにすることで差別化してきました。料金プランが1GB刻みで用意されていることと合わせて、「無駄なくパケットを使える」(同)という点を売りにしているというわけです。

10MB以上、1MB刻みでシェア可能な「パケットギフト」

これらに加えて、端末の機種変更や追加を可能にしました。細かな点かもしれませんが、機種変更時にSIMフリー端末を自ら探すというのは、通信に詳しくないユーザーにとってハードルが高いため、より万全な体制が整ったと言えるかもしれません。合わせて、ASUSの「ZenFone 3 Max」と、シャープの折りたたみ型ケータイの「AQUOSケータイ」をラインナップに追加しました。

「ZenFone 3 Max」と「AQUOSケータイ」を新たに導入

既存の端末も値下げした

ソニーモバイルの100%子会社なのに、Xperiaがない不可思議


5時間定額という新しい料金プランを導入し、5分かけ放題やパケットギフト、初速バーストなどもそろえたnuroモバイルですが、今はまだ「nuroモバイルを立ち上げ、認知度を上げてサービスしていることをいち早く広めたい」(同)段階で、"nuroモバイルらしさ"を明確に打ち出せていない印象も受けました。

同社はソニーグループの中でインターネット接続サービスを提供する企業という位置づけで、Xperiaでおなじみのソニーモバイルコミュニケーションズの100%子会社です。社長も十時裕樹氏が兼任しており、スタッフの交流もあります。

社長は十時氏が兼任(写真はMobile World Congressで撮影)

たとえば、楽天モバイルがhonor 8を独占提供したように、日本で発売されていないXperiaのミッドレンジモデルをnuroモバイルが国内で独占販売すれば、大手キャリアのXperiaを使うユーザーの目にも魅力的に映るかもしれません。

海外市場では苦戦気味のXperiaですが、日本でのブランド力は抜群で、ユーザーの母集団も少なくありません。端末を売りにする上では、これ以上ないブランドと言えるでしょう。逆に、ソニーモバイルの子会社が提供するサービスのラインナップにソニーモバイルの端末がないのは、不可思議な印象すら受けます。

今後は密接に連携する可能性も


CESのグループインタビューでは、ソニーの社長兼CEOである平井一夫氏が、「コミュニケーションデバイスとそれを支えるネットワークサービス、プロバイダの組み合わせで、ユニークなサービスを提供していこうと、(ソニーネットワークコミュニケーションズを)再編した」と述べていました。

また、平井氏は、「より『One Sony』としての動きができる形を進めていきたい」とも語っていたため、ソニーモバイルとnuroモバイルが、今以上に密接に連携する可能性もあります。今はあまり"ソニーらしさ"が見えないnuroモバイルですが、新ブランドがある程度定着したあと、ソニーとしてどう差別化していくのかは注目しておきたいポイントと言えるでしょう。