メキシコ外相はアボカド輸入関税20%をアメリカに支払わせることを提案。その心は……?

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 トランプ大統領が25日、メキシコとの国境沿いに壁を築くよう命じる大統領令に署名しました。これは公約通りで、トランプ大統領が“有言実行”している様子が窺えます。

 驚きの発言が出たのが翌26日。どう壁を築くための費用を捻出するのかについて、スパイサー米大統領報道官は、メキシコからの輸入品に20%の課税を検討しているとしました。

 これは、どういうことか。メキシコ含めた、米国が貿易赤字を抱える国々からの輸入品への20%の課税で、年間100億ドルが手に入るというわけです。これで、壁の建設費用はいとも簡単に確保できるとしています。

 トランプ氏はメキシコに壁建設費用を支払わせるとしていますが、メキシコ政府は以前から一貫して、支払うつもりはない、としています。そんなメキシコ政府は今回のメキシコからの輸入品に20%の課税がされる可能性についてもコメントしています。メキシコのビデガライ外相は、『高価になるアボカド、洗濯機、テレビ』を通じて、「メキシコからの輸入品課税で壁の費用を払うのはアメリカの消費者だ」という論理を展開しました。

◆アボカドを使った脅しの凄まじい影響力とは

 メキシコ政府というとトランプ氏にやられっぱなしのイメージがありますが、今回のビデガライ外相の発言は少し違ったように思えました。

 ビデガライ外相の発言でのポイントとして、筆者はあえてアボカドというキーワードを最初に持ってきている点、そして洗濯機やテレビといった所得に関係なく、誰でも日常生活で使う製品の名前を挙げている点を強調したいと思います。

 メキシコからの輸入品で特に多いのは車です。しかし、今回は車といった言葉を前面に出していません。アボカドという、アメリカ人にとって日常生活で欠かせなくなっている商品を先頭に挙げているわけです。

 アメリカ人はアボカド好きで、アメリカで食べるサラダには、大量のアボカドが入っているのをよく目にします。アメリカで独自の発展を遂げた寿司である「カリフォルニア・ロール」も、アボカドを使った巻き寿司なのは、誰もが知っているところ。

 今回のビデガライ外相の発言は、トランプ氏に対して向けたメッセージというより、明らかに米国民が聞いているという意識の上でのメッセージでしょう。車が高くなるよと言われるのと、アボカドが高くなるよと言われるのと、どちらの方がインパクトが強いか。

 車は関税のかからない中古品で安く探すことができます。しかし、アボカドはそうはいきません。アメリカでアボカドが高くなるよと言われた時の影響力や、すさまじいものがあるわけです。

◆メキシコのアボカド輸出量の8割はアメリカ向け

 アメリカのアボカドファンを支えているのはメキシコです。メキシコの土地は広大かつ気候も適しており、メキシコは世界最大のアボカド産地。

 2016年にアメリカ農務省が公表したところ、メキシコのアボカド輸出全体で80%近くはアメリカ向けとされています。つまり、メキシコのアボカドを必要としているのは、アメリカ国民なわけです。

 なお興味深いのは、日本も最近では多くのメキシコ産アボカドを消費している点。上記アメリカ農務省がいうところ、日本向け輸出は9%を占めるとされています。アメリカほどではないですが、日本は戦略的マーケットとして位置づけられています。

 このメキシコからの輸入品に20%の課税するというのは、あくまでいくつもある考えの中の1つとなります。しかし、前述したように、アメリカには多くのアボカドファンがいます。アボカドは今やアメリカの日常生活に根付いています。

 アボカド以外の農産物なども影響を受けます。メキシコ産が多く出回っているトマトなどもいい例です。どんなにメキシコとの国境に壁を作ってほしいと思っている人でも、アボカドやトマトの値段が上がってうれしい人なんていないでしょう。

 結局、“単純に”メキシコからの輸入品に20%の課税をするという政策は、国民の大多数を敵にするがため、実行できないでしょう。

 万が一この種の政策が実行されるとすれば、国民の反感を避ける修正事項が必要となります。そうでないと、何のための国境の壁なのかが分からなくなります。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。