人工知能で「出遅れ」のアップル アマゾンらのAI連合に加入

写真拡大

これまで秘密主義を貫いてきたアップルが、AIの開発でついに方針を転換した。同社は、昨年12月のAI(人工知能)に関する論文の公開に続き、1月27日にAIの研究を行う非営利団体「Partnership on AI」に参画することを明らかにした。Partnership on AIは、昨年9月にマイクロソフトやグーグル、アマゾンなど大手テクノロジー企業によって設立された。

これを機に、アップルでSiriの責任者を務めるTom Gruberが同団体の役員に就任する。GruberはSiriの共同創業者で、アップルが2010年にSiriを買収した以降も同事業の責任者を務めている。

Gruberは、Partnership on AIのウェブサイト上で次のようにコメントしている。「テクノロジー業界が一丸となって機械学習とAIの研究や課題解決に取り組むことは、アップルや我々の顧客、さらには業界全体の発展にとって有益なことだと確信しています。団体のメンバーと協力して、AI研究の推進と顧客のプライバシーと安全の保護に取り組むことを楽しみにしています」

Partnership on AIの役員にはグーグル傘下のディープマインドのGreg Corrado、アマゾンのRalf Herbrich、マイクロソフトのEric Horvitz、フェイスブックのYann Lecun、IBMのFrancesca Rossiらが居る。また、新規でアメリカ自由人権協会やOpenAI、マッカーサー基金、ピーターソン研究所、アリゾナ州立大学、カリフォルニア大学バークレー校など大手企業以外のメンバーも役員に加わることが発表された。

「競合」よりも「協業」にメリット

役員の一人で、マイクロソフトリサーチの責任者を務めるHorvitzによると、彼らは以前からAI関連の会合で頻繁に顔を合わせており、新組織の設立は自然な流れだったという。「AIの領域においては、競合するよりも協業した方が各社にとってメリットが大きい」とHorvitzは話す。

Partnership on AIでは今後、主にヘルスケアとトランスポーテーションの分野に注力し、社会に対する啓蒙活動も実践していくという。これまでの実験では、AIの学習アルゴリズムが人種や性別に対する偏見を助長する可能性も指摘されているが、こうした問題の解消にも取り組むという。また、自動運転車などにおけるAIと人間のコラボレーションに関する指針作りも行うとしている。

「人々は、AIが生活に多大なインパクトを及ぼす可能性に気付き始めている。AIの研究を専門家だけで行うのではなく、社会全体を巻き込むことは非常に重要だ。一企業だけで答えを出せない課題については、複数のステークホルダーを交えて協議する必要がある」とHoritzは話す。

アップルはこれまで参加を拒否していた

これまで、AIを含むコンピュータ・サイエンスは、企業の枠を超えた産学連携によって大きな発展を遂げてきており、秘密主義を貫くアップルには批判が集まっていた。アップルにとっても負の影響は大きく、優秀な人材を競合に奪われ、AIアシスタントの普及ではアマゾンやグーグルの後塵を拝している。

Horvitzによると、団体の設立以前からアップルに参画を打診してきたが、アップルは拒んできたという。「恐らくアップルはiOS 10とiPhone 7のリリースを控え、準備が整っていなかったのだろう。我々は、常にアップルを設立メンバーとして扱ってきた」とHorvitzは言う。

「アップルは、AIの研究を前進させるためには産学連携に加わることが重要だということにようやく気が付いたのだろう。マイクロソフトは何年も前からそう考えていた。AIの基礎研究をオープンに行いながら、各社が競争力を維持することは可能だ。今回のパートナーシップをきっかけに、アップルが社会やステークホルダーと関わり合いながらAIの開発を進めていくことを期待したい」とHorvitzは述べている。