セブン-イレブンの店舗

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 この季節になると、食品業界はさながら“恵方巻き戦争”の様相を呈する。

 七福神にちなんで7種の具材を巻くのが恵方巻きだが、近年では、唐揚げ、とんかつ、伊勢エビ、松阪牛まで巻かれるようになった。見た目が恵方巻きのロールケーキやサンドイッチ、シュウマイまで登場し、目移りしてしまう。節分の行事として、恵方巻きが豆まきを凌駕している感すらある。

 かつては「巻き寿司」「丸かぶり寿司」などと称され、1970年頃から大阪府で商品化されるようになった恵方巻き。コンビニエンスストアでは、ファミリーマートが1983年に大阪と兵庫県で販売を開始した。しかし、「恵方巻き」として全国的に商品として定着させたのは、セブン-イレブンだといわれている。

 それについて、セブンを運営するセブン&アイ・ホールディングス広報部に聞くと、以下のような回答を得た。

「広島県の店舗のオーナーさんが、節分に太巻きを食べるという関西の風習に目につけ、89年に広島県の一部店舗から販売を開始しました。翌年から、順次販売エリアを拡大し、98年に全国で販売を開始しました」(セブン&アイ広報部)

 では、そもそも毎年の「恵方」とは、どうやって決まるのだろうか?

「恵方は、その年の干支に基づいて定められています。その年の福徳を司る神様のいる方角で、その方角に向かって事を行えば縁起がいいとされています」(同)

 今年の恵方は、「壬(みずのえ)」で北北西である。この方角を向いて、願い事をしながら黙々と食べるのが恵方巻きの作法だ。

●セブンの恵方巻き、16年は660万本以上売り上げ

 すっかり定着した恵方巻きは、セブン以外のコンビニやスーパーマーケット、デパートなど、さまざま店舗で販売されるようになった。「恵方巻き」という名称を用いたのはセブンが初めてであり、仮に商標登録しておけば、セブンだけで売ることができたかもしれない。小売業がこぞって売り出している現状を、セブンとしては、どう捉えているのだろうか。

「節分に恵方巻きを食べる風習が、全国的に根付いたものと感じています」(同)

 さすが、鷹揚な答えである。では、セブンの恵方巻きの売り上げは、どのくらいなのだろうか?

「2016年の節分は、約664万本の販売です」(同)

 恵方巻きの起源については諸説あるが、全国的に普及させたセブンの認識は、どのようなものだろうか?

「諸説ございますが、関西で古くからあった風習であると認識しております」(同)

 伝えられている説でもっとも古いものは、豊臣秀吉の家来の堀尾吉晴という武将が陰陽道に通じていて、節分の前日に巻き寿司を食べ、いつも戦に勝っていたところから始まったというものだ。魅力的な説ではあるが、板海苔は江戸時代にできたものなので、これはあり得ないとされている。

 江戸時代の終わり頃か明治時代のはじめ頃、大阪の商人が商売繁盛を祈って始まったという説が有力だ。そのほか、「大阪の船場で太巻きを丸かじりしながら願い事をしていた女性がいた」「船場の旦那衆の遊郭でのお遊びが発端」など、諸説ある。大正時代の初期には、大阪の花街で節分の時期に海苔巻きを恵方に向かって食べる習慣があったようだ。

 今年は、どんな恵方巻きが人気を集めるのだろうか。
(文=深笛義也/ライター)