新チームの攻撃陣を牽引するのが郷家(7番)。この1年の高校サッカー界をもリードする存在だ。写真:川端暁彦

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 青森山田が負けた――。そのニュースだけ耳にすれば、きっとセンセーショナルに響くだろう。それがチャンピオンチームの宿命でもある。
 
 第16回東北高等学校新人サッカー選手権大会(以下、東北新人大会)に出場した青森山田は、初戦で山形中央を、準決勝で仙台育英をともに2-0で破り決勝に進んだが、そこで尚志に0-1と敗れたのだ。
 
 内容的にも「まさしく力負け」(正木昌宣コーチ)。「ブラジル体操から声の張り合いで負けないよう意識した」(FW中井崇仁/2年)とウォーミングアップの時点から士気高く臨んできた尚志に対し、気持ちの上で受けに回っていた部分があったのかもしれない。立ち上がりの5分に「思い切り撃った」という尚志MF長谷秀皐(2年)の一発を食らって失点すると、以降も攻守が噛み合わず。前後半通じてシュートが2本ずつという数字が示す通り、いいところなく敗れ去った。
 
 実を言えば、昨季の優勝したチームも、この大会で尚志に敗れている。同じスタートを切ったというわけだ。この時期の青森は雪に閉ざされており、もとより一年でもっとも難しい時期にあたる。この降雪期を「サッカーの技術・戦術以外の部分を鍛えるとき」(黒田剛監督)と割り切って捉え、鍛錬に励んできたことが大きな効果をあげた。結果が示している通りだ。そういう意味から言えば、この時期の結果云々は大きな問題ではないのかもしれない。選手には「気にするな」「切り替えろ」とでも言っておく手はある。
 
 だが、それは青森山田の流儀ではない。黒田監督に代わって大会の指揮を執った正木コーチの言葉を借りれば、「それでも勝つのが青森山田」である。
 
 昨年はGK廣末陸(FC東京に入団)らが不参加だった点を引き合いに出し、「今年の負けは意味が違う」とあえて強調。「優勝したのは先輩たち。お前らじゃない」と、選手たちの傷を浅くするのではなく、あえて深くえぐるような言葉を紡いで問いかけ続けた。
 
「時間はある? ないよ。もう(プレミアリーグ開幕まで)2か月しかない。そして帰ったら雪だよ。でも、もっと犠牲心を付ける、闘争心を付ける、筋力・体力を付けていく。それは雪の上でもできることじゃないか」(正木コーチ)

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 初優勝を飾って1か月弱。当然ながら、「『(高橋)壱晟なら』『(鳴海)彰人なら』と、どの選手も(先輩と)比べられるし、プレッシャーはある」とMF郷家友太(2年)が話すように、最高のお手本だった先輩たちの存在自体が、小さくない負荷となっている。
 
 ただ、逆に言えば、日本一となるために必要な基準はすでに示されている。高橋壱晟(ジェフ千葉に入団)もまた神谷優太(現湘南ベルマーレ)らと比べられるなかで自らの力を高めていったわけで、郷家らにもそうしたブレイクスルーを期待しているからこそ、あえて厳しい言葉を浴びせたのだ。
 
 レギュラー5人が残っていた昨年度のチームとは異なり、「主将のDF小山内慎一郎(2年)と郷家以外は誰が主軸なのかまったく見えていない」と正木コーチは言う。大会での起用法を見ても、ありがちな建前論ではなく、掛け値なしの本音だろう。MFバスケス・バイロン(1年)、檀崎竜孔(1年)、FW三国ケネディエブス(1年)、小松慧(1年)といった下級生の楽しみなタレントがいるが、いずれも今大会ではレギュラー確実と言えるだけのパフォーマンスを見せられなかった。新年度から加入してくる選手を含め、「かつてないほどフラットな競争になる」(正木コーチ)。
 
「尚志には技術でもフィジカルでも、勝っている部分がなかった。自分たちの力のなさに気づけた大会になった」
 
 小山内主将はそんな真摯な言葉で大会を総括した。実は選手権の時点から新主将は次期チームへの不安を漏らしていたのだが、「その危機感を共有できていなかった」とも言う。今回の敗戦で危機感が高まったのは間違いなく、またこの大会のメンバーに入れなかった選手の闘志に火がつく契機となったかもしれない。「このままだと歴代最悪の歴史を作る可能性もある」と語るキャプテンとともに、新たな一歩を踏み出した新生・青森山田。選手権王者は、ここから本当のスタートを切る。
 
 
取材・写真・文:川端暁彦(フリーライター)