日本人横綱誕生で土俵にも変化が生まれるか

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 待望の日本人横綱誕生フィーバーにメディアは沸き立っている。しかし、その裏では日本相撲協会、横綱審議委員会、親方、原液力士らの様々な思惑が交錯していた。協会あげて稀勢の里の横綱昇進後押しに対して、横綱・白鵬は「協会に恥をかかせてやる」と意気込んでいたが、初場所では4敗と衰えが見えた。とりわけ関係者の注目を集めるのは白鵬に土をつけた相手だ。

「今場所の白鵬の4敗の相手は稀勢の里、高安という田子ノ浦部屋のガチンコ勢に加え、初顔合わせだったモンゴル人力士の荒鷲(峰崎部屋)と貴ノ岩(貴乃花部屋)です。白鵬が初顔の相手に敗れたのは7年4か月ぶりのことで、しかもそれがモンゴル力士だった」

 5敗して11日目から休場に追い込まれたモンゴル人横綱・鶴竜についても、敗れた相手には高安、勢(伊勢ノ海部屋)、御嶽海(出羽海部屋)に加えて荒鷲と玉鷲(片男波部屋)のモンゴル勢がいる。

 近年、角界を席巻してきたモンゴル勢は、これまで所属部屋が違っても交流があることで知られてきた。

「普段から錦糸町や両国などにあるモンゴル料理店に集って日頃の不満をぶつけあうなど、同郷のつながりが強かった。土俵上でもモンゴル勢同士だと“先輩に対して立ち合いの変化はしにくい”“張り手は出しづらい”といった気遣いが自然と生まれるとみられてきた。

 モンゴル人大関・照ノ富士が、昨年3回もカド番に追い込まれながら、3月場所は鶴竜、7月、11月場所は白鵬といずれも同郷の先輩横綱から勝ち星をあげ、3回とも8勝7敗でカド番を脱出したことも注目を集めました」(後援会関係者)

 ところが今場所、モンゴル人横綱が相次いで同郷の後輩相手に星を落とした。

「以前は面倒見のいい朝青龍がモンゴル勢をとりまとめていたのですが、白鵬がトップになって状況が変わってきた。白鵬が自分の個人記録にばかり目を向けるようになり、つながりが疎遠になっているようです。今場所、白鵬と鶴竜に土をつけた荒鷲は、峰崎親方(元三杉磯)から“いずれ部屋を譲ってもいい”といわれていて、帰化も視野に入れている。新関脇で9勝6敗と勝ち越した玉鷲とともに、他の同郷力士ともあまりつるもうとしない」(同前)

 貴ノ岩はガチンコ横綱・貴乃花が部屋を持ってから初めて関取になった一番弟子。モンゴルから鳥取城北高校への相撲留学を経て入門、貴乃花親方から相撲道を叩き込まれて「モンゴル勢のコミュニティとは一線を画している」(同前)ことで知られている。

「白鵬が目指すのは、モンゴル国籍のまま一代年寄を襲名すること。それを認めない協会に露骨に反発を見せています。そこが他のモンゴル力士の感覚とはちょっと違い、草分けともいえる大先輩の旭天鵬(大島親方)はすでに帰化していますし、鶴竜や日馬富士は協会に残ることをもともと希望していない」(担当記者)

 そうした異変がある中で、どの相手でも気遣いなしに全力でぶつかっていく「ガチンコ横綱・稀勢の里」が誕生したのだ。ここ数年、モンゴル3横綱が番付上位を独占しているため、本場所13日目以降はモンゴル人勢の“トーナメント”のようなかたちで優勝が決まっていた。

「そこにガチンコでぶつかる日本人横綱が1人加わることで、状況は大きく変わる。今回、協会が稀勢の里の横綱昇進の判断について“甘い”といわれながらも前向きだったのは、モンゴル横綱を中心に回ってきた土俵に“くさび”を打ち込んでくれるのでは、という期待があったからです」(二所ノ関一門関係者)

※週刊ポスト2017年2月10日号