増谷栄一の経済コラム:米最高裁の音楽・映画違法コピー判決、ハイテク業界に影響
2005年07月04日23時19分 / 提供:ライブドア・ニュース
【ライブドア・ニュース 2005年07月04日】− パソコンユーザーがファイル交換ソフト(P2P)を使って、ネット上で映画や音楽など著作権法で保護されているファイルを見つけ、違法コピーするのは、P2Pを開発した企業に法的責任があるという判決が27日、米連邦最高裁で示された。9人の判事全員が賛成だったが、音楽や映画などの娯楽産業とハイテク産業は、これまで、長年、著作権侵害をめぐって確執を続けてきたが、その象徴となった1984年のソニーのビデオ・カセット・レコーダー(VCR)「ベータマックス」をめぐる最高裁判決以来の画期的なものとなった。
当時のソニー判決では、同社のVCRは、著作権を侵害せずに合法的に利用が可能である以上、第3者による映画の違法コピーに対する法的責任は問えないとする、いわゆる「セーフ・ハーバー」(緊急時の避難所)の判決が出され、その後、ハイテク企業はそれを盾に、DVDやMP3プレーヤーなど革新的なAV機器を開発し、販売してきた。
しかし、今回の裁判は、直接的には米映画大手のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)・スタジオと米P2Pソフト開発のグロックスター、ストリームキャスト・ネットワークスの著作権侵害をめぐるものだが、ソニー判決の解釈が従来とは変わったことによって、多方面に影響が出てくるのは必至の情勢だ。
地裁と高裁段階では、ソニー判決で示されたセーフ・ハーバーが同2社に対しても有効だとして、同2社は勝訴してきたが、最高裁では、ソニー判決の解釈にあたって、第3者が利用するDVDなどのハード機器やファイル交換などのソフトに合法的な利用が可能になっていれば、著作権侵害の責任は問われないという技術的な部分に焦点を当てず、むしろ、第3者による著作権侵害を助けることによって、広告収入を上げるようなビジネスモデルのあり方に焦点を移しことが大きな変更点となっている。
ただ、この判決については、ハイテク企業の間では、曖昧さが残ると指摘する見方が多い。半導体世界最大手のインテルは、「判決内容について精査している」とのコメントを出したが、ハイテク企業に違法コピーの責任を広げれば、技術革新を抑制することになるとして、警戒感を隠さない。グロックスターは、VCRを例に挙げ、そうした新技術が生まれて、映画や音楽業界がその技術を利用した新しいビジネスモデルを完成させるまでは、著作権侵害が起こりやすいものだが、それに規制を設ければ、その新技術も未完成のままで終わってしまう可能性があると指摘するのだ。
また、米国のアナリストの多くは、今回の判決で、娯楽産業は著作権侵害訴訟を容易に起こすことが可能になったと見ており、その結果、大手コンピューターメーカーから小規模なハイテクベンチャーまで訴訟によるコスト増加が大きな問題になってくると懸念している。実際、同判決後、米株式市場では、映画セクターのタイムワーナーの株価は前日比1.2%高、ニューズコープは2%上昇となったほか、音楽関連株でもビべンディ・ユニバーサルは3.2%高、米国で売買されているソニーのADRは1.1%上昇した。さらに、一部のハイテク企業の中には、今回の最高裁の判決は自社の製品が違法コピーは起こさせないということを立証する責任を負わせるものだとして批判的だ。
一方、音楽の場合、合法的にオンラインで楽曲を販売しているウエブサイトは、ファイル交換ソフトを使って運営されている違法ウエブサイトの減少で恩恵を受けると見られている。判決後、ゴンザレス司法長官は、著作権侵害で被害を受けている企業が民事訴訟を起こすのを側面から支援していくとのコメントを発表している。また、ファイル交換ソフトの提供者には、無許可の音楽や映画のファイルにフィルターをかけて、それらのウエブサイトから外すよう強制する可能性もあるという。米国では合法サイトとして、「iTune(アイチューンズ)」のアップルや「ラプソディ」のリアルネットワークス、ナップスター、ヤフーなどの有料音楽配信サイトは利用者の増加が見込める。
日本では、ロンドンに本部を構える国際レコード産業連盟(IFPI)が今年4月12日に日本を含む欧米・アジア11ヵ国でファイル交換ソフトを使って音楽の違法コピーを行った個人ユーザー963人を著作権侵害で訴えたが、日本が初めて対象となった画期的な事件でもあった。今後はこうした訴訟が増えていくと見られる。同連盟によると、日本では2000−2004年の5年間で違法コピーの影響で、音楽テープ・CDの売上高が30%、金額にして2000億円減少している。昨年で、日本のブロードバンド普及率は48%に達し、違法ダウンロードは8100万ファイルに達した。日本の合法サイトには、ソニー系の「モーラ」やエキサイト、OCN、オリコン、ミュージックJP、レコ・チョク・フルなどがある。しかし、違法コピーが減るという見方の一方で、ファイル交換ソフトも進化して、違法行為は依然、続くという見方もあって、一概には言えないようだ。 【了】
(経済コラム:http://blog.livedoor.jp/eiichimasutani/)
ライブドア・ファイナンシャル・ニュース 増谷栄一記者
(参照:http://blog.livedoor.jp/emasutani/)
当時のソニー判決では、同社のVCRは、著作権を侵害せずに合法的に利用が可能である以上、第3者による映画の違法コピーに対する法的責任は問えないとする、いわゆる「セーフ・ハーバー」(緊急時の避難所)の判決が出され、その後、ハイテク企業はそれを盾に、DVDやMP3プレーヤーなど革新的なAV機器を開発し、販売してきた。
しかし、今回の裁判は、直接的には米映画大手のメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)・スタジオと米P2Pソフト開発のグロックスター、ストリームキャスト・ネットワークスの著作権侵害をめぐるものだが、ソニー判決の解釈が従来とは変わったことによって、多方面に影響が出てくるのは必至の情勢だ。
地裁と高裁段階では、ソニー判決で示されたセーフ・ハーバーが同2社に対しても有効だとして、同2社は勝訴してきたが、最高裁では、ソニー判決の解釈にあたって、第3者が利用するDVDなどのハード機器やファイル交換などのソフトに合法的な利用が可能になっていれば、著作権侵害の責任は問われないという技術的な部分に焦点を当てず、むしろ、第3者による著作権侵害を助けることによって、広告収入を上げるようなビジネスモデルのあり方に焦点を移しことが大きな変更点となっている。
ただ、この判決については、ハイテク企業の間では、曖昧さが残ると指摘する見方が多い。半導体世界最大手のインテルは、「判決内容について精査している」とのコメントを出したが、ハイテク企業に違法コピーの責任を広げれば、技術革新を抑制することになるとして、警戒感を隠さない。グロックスターは、VCRを例に挙げ、そうした新技術が生まれて、映画や音楽業界がその技術を利用した新しいビジネスモデルを完成させるまでは、著作権侵害が起こりやすいものだが、それに規制を設ければ、その新技術も未完成のままで終わってしまう可能性があると指摘するのだ。
また、米国のアナリストの多くは、今回の判決で、娯楽産業は著作権侵害訴訟を容易に起こすことが可能になったと見ており、その結果、大手コンピューターメーカーから小規模なハイテクベンチャーまで訴訟によるコスト増加が大きな問題になってくると懸念している。実際、同判決後、米株式市場では、映画セクターのタイムワーナーの株価は前日比1.2%高、ニューズコープは2%上昇となったほか、音楽関連株でもビべンディ・ユニバーサルは3.2%高、米国で売買されているソニーのADRは1.1%上昇した。さらに、一部のハイテク企業の中には、今回の最高裁の判決は自社の製品が違法コピーは起こさせないということを立証する責任を負わせるものだとして批判的だ。
一方、音楽の場合、合法的にオンラインで楽曲を販売しているウエブサイトは、ファイル交換ソフトを使って運営されている違法ウエブサイトの減少で恩恵を受けると見られている。判決後、ゴンザレス司法長官は、著作権侵害で被害を受けている企業が民事訴訟を起こすのを側面から支援していくとのコメントを発表している。また、ファイル交換ソフトの提供者には、無許可の音楽や映画のファイルにフィルターをかけて、それらのウエブサイトから外すよう強制する可能性もあるという。米国では合法サイトとして、「iTune(アイチューンズ)」のアップルや「ラプソディ」のリアルネットワークス、ナップスター、ヤフーなどの有料音楽配信サイトは利用者の増加が見込める。
日本では、ロンドンに本部を構える国際レコード産業連盟(IFPI)が今年4月12日に日本を含む欧米・アジア11ヵ国でファイル交換ソフトを使って音楽の違法コピーを行った個人ユーザー963人を著作権侵害で訴えたが、日本が初めて対象となった画期的な事件でもあった。今後はこうした訴訟が増えていくと見られる。同連盟によると、日本では2000−2004年の5年間で違法コピーの影響で、音楽テープ・CDの売上高が30%、金額にして2000億円減少している。昨年で、日本のブロードバンド普及率は48%に達し、違法ダウンロードは8100万ファイルに達した。日本の合法サイトには、ソニー系の「モーラ」やエキサイト、OCN、オリコン、ミュージックJP、レコ・チョク・フルなどがある。しかし、違法コピーが減るという見方の一方で、ファイル交換ソフトも進化して、違法行為は依然、続くという見方もあって、一概には言えないようだ。 【了】
(経済コラム:http://blog.livedoor.jp/eiichimasutani/)
ライブドア・ファイナンシャル・ニュース 増谷栄一記者
(参照:http://blog.livedoor.jp/emasutani/)
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