地震保険だけじゃない!「雇用・労災保険」の支援制度

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■失業給付が出やすく労災認定も弾力的に

甚大な被害をもたらした熊本地震。地震で家が壊れたりした場合は民間の地震保険が役立ちますが、「激甚災害」に指定されたことで、被災者は雇用や社会保険に関しても弾力的な助成を受けられるようになりました。

会社員が失業すると、雇用保険の失業給付が受けられますが、災害で仕事を失った人も失業給付が受給できます。失業給付は、働く意思と能力があり、なおかつ仕事を探している状態であることが支給の条件ですから、次の仕事が決まっている場合は支給の対象外です。しかし、激甚災害の指定があれば、次のような特例措置が適用されます。

たとえば工場が被災して修繕のために一定期間休業するものの、いずれ復職できることがわかっているという場合。あるいは材料などが調達できず、一定期間休業になる場合。いずれも雇用主には賃金の支払いが義務付けられておらず、従業員は無給になることがあります。こういうとき、会社が稼働すれば仕事に戻れることがわかっていても、休業中は失業給付が支給されます。通常、給付を受けるには雇用主から離職証明書の交付を受けるなどの手続きが必要ですが、激甚災害法の適用時にはこうした手続きが簡略化されます。また、自己都合で退職した場合は退職から3カ月の待期期間がありますが、激甚災害時には待期期間7日間で失業給付を受けられます。

失業給付の受給中は、決められた認定日にハローワークに出頭し、求職活動をしていることを報告しなければなりませんが、これについても特例が認められています。簡単な申し入れによって認定日を変更してもらうことができます。

もうひとつ、知っておきたいのが、「未払賃金立替払制度」です。1年以上労災保険に加入している中小企業が被災し、倒産状態となり、未払いの賃金がある場合、事業主に代わって国が立て替え払いをしてくれます。支払われるのは、退職した日の6カ月前から、請求する日の前日までに支払われるはずだった未払い賃金の8割相当。パートタイマーやアルバイトも対象です。退職から2年以内に労働基準監督署に申請してください。この制度は、災害による倒産でなくても適用されます。

一方、地震などの災害で仕事中、通勤・帰宅途中でケガをした場合の治療費は、労災保険からほぼ全額支払われます。労災保険は雇用主が従業員のために加入が義務付けられていますが、まれに、非加入のケースがあります。その場合も救済措置が取られることがあります。阪神・淡路大震災のときは、非加入の従業員にも労災保険が支払われたケースがありました。

さらに、状況によっては社会保険料や税金の納付が延期や免除となる制度があります。会社員については雇用主(会社)が手続きをしますが、自営業者は自分で手続きする必要があります。手続きをしないと、被災前と同様に口座振替などが進みますから注意してください。

民間の生命保険や損害保険も、保険料の支払いを最長6カ月猶予できます。ただ、こちらはあくまでも「猶予」であり、多くの場合、支払い義務が免除されることはありません。

私も阪神・淡路大震災を経験しましたが、災害時にはさまざまな制度が利用できます。避難所にはさまざまな情報が集まりますし、ハローワークの職員や各専門家が無料相談に回ってきます。ぜひそうしたサービスを利用してください。

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井戸美枝
社会保険労務士・CFP。神戸市生まれ。身近な経済問題をやさしく解説する講演や記事執筆で人気。厚労省社会保障審議会企業年金部会委員。『知ってトクする!年金の疑問71』など著書多数。
 

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(河合起季=構成 榊 智朗=撮影)