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by katanski

西ヨーロッパで絶滅の危機にあるクロハラハムスターは、穀物・木の根・昆虫などを食料としてきました。しかし、近年の農家で単一栽培が多くなった影響から、現在ではクロハラハムスターの主な食べ物は花が咲いても種子ができない半不ねん性のトウモロコシとなっています。しかし、トウモロコシだけを食べているとハムスターは自分の子どもを殺して食べてしまうことが判明しました。

Diets derived from maize monoculture cause maternal infanticides in the endangered European hamster due to a vitamin B3 deficiency | Proceedings of the Royal Society of London B: Biological Sciences

http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/284/1847/20162168.full

France's wild hamsters being turned into 'crazed cannibals' by diet of corn | World news | The Guardian

https://www.theguardian.com/world/2017/jan/28/frances-wild-hamsters-being-turned-into-crazed-cannibals-by-diet-of-corn

フランス・ストラスブール大学のマシルド・ティシエ教授が率いる研究チームは、もともと、農薬や機械を用いた農耕が地中にあるハムスターの住処にどのような影響を与えるのかに着目して調査を進めていました。これに加え、新しく野生のハムスターが食べるものが繁殖能力にどのように影響するのかについても調べる余地があると考え、調査範囲を広げたそうです。

調査では野生で育ったハムスターのうち、「小麦とトウモロコシを中心に生活している個体」と「トウモロコシ・小麦に加えてクローバーや昆虫を食べている個体」の繁殖能力の違いが比較されました。すると、栄養状態によって繁殖能力は変わらないということがわかったのですが、一方で子どもの生存率には大きな開きがあったとのこと。



by Gideon

小麦とクローバー、あるいは小麦と昆虫を食べている母親の元に生まれた子どもは5分の4が離乳できたのですが、トウモロコシをメインに食べている母親の子どもが離乳できたのは、全体のわずか5%でした。ティシエ教授によると、トウモロコシを主食とするハムスターの母親は、生きた状態の子どもをトウモロコシが入ったエサ箱に入れて食べるようになるとのこと。また、子食いのハムスターたちには、研究者が部屋に入るとエサ箱に上ったりエサ箱を叩いたりしてみせるという異常行動も見られました。

子食いのハムスターを調べたところ、舌の色が黒く、採取するのが難しいほど血液の粘度が高く、ビタミンB3欠乏症の症状を示していることに研究者らは気づきました。人間に起こるビタミンB3欠乏症はペラグラと呼ばれ、下痢・痴呆・皮膚炎などの症状が出ます。18世紀中頃から20世紀中頃にかけて、北アメリカやヨーロッパで300万人もの人々がペルグラで死亡したと見られているとのこと。発表された論文の中では「人間において、不適当に調理したトウモロコシが中心の食事は、高い確率で殺人・自殺・人食と関係しています」とも述べられています。



by Evan Long

なお、研究チームが子食いのハムスターに対してビタミンB3を加えたトウモロコシベースの食事を与えたところ、体に出ていた症状は治まり、子どもを食べることもなくなったとのこと。研究者らは農業における単一栽培が生物の多様性に悪影響を与えることを指摘しており、農業において多様な食物を扱うことの重要性を説いています。