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星の数ほど多彩なモデルが存在する腕時計。そんな中から、買うべき1本をどう選ぶべきなのか? 迷える僕らを、適切な1本へと導いてもらうため、時計選びの基本ルールを『クロノス日本版』編集長の広田雅将さんに聞いた。

作りが細いか太いかで時計の見え方は変わる



社会人たるもの、イザという時に身に着けるための時計を、1本くらいは持っておきたい。そこで、業界でも“ハカセ”と呼ばれるほど時計に熟知した『クロノス日本版』編集長の広田雅将さんに話を聞いた。

「基本的には、自分が好きなデザインや、いいなって思った時計を選べばいいと思いますよ」

そう語り始めた広田さんだが、選ぶ際に気に留めておくべき“お約束”があるともいう。

「簡単なことですが、針やベゼル、バックルなどのパーツが細いほど、フォーマルでドレッシーな印象になります。逆に、それらが太いほどカジュアルでスポーティです」

この点は眼鏡などとも共通する、ファッションの基本ともいうべきもの。「自分をどう見せたいか、どう思われたいか」を事前に想定してから、時計選びを始めるのが基本だ。

「見た目だけで衝動買いしてしまうと、その時計を着けた時に、自分がどう見えるのかを考えなくなってしまいます。買った後に、イメージと違ったなぁ、とならないためにも、購入前に自分をどう見せたいかを頭の中で整理しておきましょう」

もう1つ購入時に気を付けたいのが、必ず試着してみること。

「時計って買うまでは、いいところしか見えないものなんです。でも買った後は欠点しか見えません(笑)」

まずは、購入前に時計を腕の上に置いてみる。そして着ている服との相性や、袖口に引っかからないかなどをチェックし、欠点も洗い出そう。


薄くて軽い時計は、重さを感じにくく、袖口に引っかかりにくいなど、着けていてストレスを感じにくい。また針やインデックスなどのパーツが太いと、カジュアルな印象を与えやすい。

初めの1本は着けやすさ重視薄くて軽いものを選ぶ



「これまで時計を着けていなかった方には、薄くて軽いものをお薦めします。時計はどうしても、最初の“着ける”というハードルが高いものです。まずは薄くて軽いもので“時計を着ける”ことを習慣化することが大切だと思います」

初めから、一点豪華主義と言わんばかりに重厚で高価な時計を買ってしまうと、邪魔になって、結局着けなくなってしまう人が意外と多いというのだ。

「まずは邪魔しないものを選んだ方がいいです。最初に無理をして、使い続けられなかったら意味がありませんから。普段から着けるようになれば、次にどんな時計を選ぶべきかも分かってきて、楽しみが広がります」


薄く軽い時計は、ベルトが細いうえに、ベルトを留めるバックルなども小さいものが採用される。デスクワークやPCワークの際に邪魔にならず、ビジネスパーソンにお薦めだ。

<01>自分をどう見せるかで「デザイン」を選ぶ

針やベゼルや盤面の文字などが、細いほどフォーマルな印象に見え、太ければカジュアルなイメージに。自分をどう見せたいかによって、全体のデザインを決める。



<02>着けていて疲れない「薄くて軽い」1本を

一般的に、重く大きな時計は、慣れていないと使い続けづらい。初めの1本には、着けていてもストレスに感じにくい、薄くて軽いモデルがお薦めだ。



<03>アクティブ派は「機能」優先で

スポーツシーンで使いたい、またはアクティブな自分を演出したい場合には、耐衝撃性や防水性、文字盤の見やすさなど、機能性に注目した時計選びが必要になる。



<04>「ストラップ交換」の楽しみも知っておく

時計の印象は、ベルトを換えることでも大きく変えられる。気分や服装に合わせて、その日の時計を選ぶようにベルトを換えれば、時計の楽しみ方が広がる。



<05>「スマートウォッチ」という選択肢も視野に

1〜2万円でも、充分に良い時計が購入できる。そこで2本めの時計としてスマートウォッチを加え、バリエーションを豊かにするのも1つの手だろう。



重厚な時計を選ぶ際は重心とバランスを見よう



初めの1本には、薄くて軽いものを薦めてもらったが、アクティブなシーンで使いたいという目的があるなら、選ぶ時計も変わってくる。頑健さや防水性、GPSなどの機能性も問われる。アウトドア用の時計が、一般的なものよりも大きく重くなるのは必然だ。重厚な時計を選ぶ際のポイントは、時計の重心と、バックルやベルトなどの太さなどのバランスだという。

「時計の重心が裏蓋(腕側)に近いほど、グラつきにくくなります。また、盤面やベルトが広いほど、接触面積が広くなるので、重さが全体に散って軽く感じられます。さらにバックルがしっかりとしていれば、時計がふらつきにくくなります」

こうした要素を踏まえているかは、スペックシートを調べても分かるものではない。また、アウトドア用だけでなく、重厚なファッション時計を選ぶ際の指針にもなる。



ベルトを交換するだけでも印象はガラリと変えられる



広田さんは、頑張って高価な時計を1本買うよりも、キャラの違うものを複数揃えることを薦める。

「昔は安い時計は値段相応という感じでしたが、今は安くても良い時計が増えました。スニーカーを履き替えるように、TPOや着る服に合わせて時計を変えてみると、より楽しくなるはずです」

複数の時計を買うのではなく、ベルトを交換するのも有効。それだけで時計の印象はガラリと変わる。

「もし、何かの記念にもらったアンティークの時計を、おじさん臭いなどの理由で使っていなければ、ベルトを換えてみてください。意外と今の気分にハマる時計へと生まれ変わりますよ。または、レザーベルトが合わせてあった時計に、NATOベルトを合わせてみるのもいいです。ここ10年くらいでベルトの種類もかなり豊富になりました。本体の買い替えではなく、交換ベルトを揃えるというのも、時計を楽しむのにはいい方法ですね」

お気に入りの時計は心を豊かにしてくれる



多くの時計を使ってみることを提唱する広田さん。そんな広田さんが、最近よく使う時計の1本は、意外にもApple Watchだ。今ではBluetoothや活動量計などを搭載した多機能モデルは珍しくない。だが、そうした時計がなかなか普及しない。なぜかと言えば、装着感に問題があるからだとする。

「装着感が悪いのは、時計を普段していない人たちが作るからです。その中でApple Watchは時計を知っている人たちが作っている、というのがよく感じられます。徐々にではありますが、時計ブランドがこなれたスマートウォッチを手掛けることも増えてきましたし、今後は装着感の良いスマートウォッチが数多く登場してほしいですね」


ラバーベルトは、汗をかいて汚れたら気軽に洗えるのが利点。中央部分が、えぐられていたり、格子状に穴が開けられていれば、汗をかいた時にベタつきにくく、装着感が増す。

既存ブランドとテクノロジーが融合し始め、今後、新たなジャンルとしての地歩を固めていきそうだ。

「腕時計が誕生して200年以上が経ちます。それでも進化し、使い続けられているのは、腕時計が便利だからという証です。また、時計はセンスや感性が色濃く反映されるもの。だからこそ、自分に合った時計を見つけてほしいです」

そして、どんなふうに見られたいかなどを考えながら1本ずつ、自分で選んでほしいと。

「洋服や靴など、普段身に着けているものの中で、実は能動的に見るものって、スマホか時計ぐらいなものなんですよね。だからこそ、かっこいいもの、気持ちがよくなるものを突き詰めて、自分の身の丈にあった1本を選んで欲しいです」


ベルトを留めた時に余る部分を、外に飛び出させておくのではなく、内側に収納する点もApple Watchの特徴。ベルトが外れにくい上に、何かに引っ掛けてしまうリスクも減らす。

クロノス日本版 編集長

広田雅将さん

1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年から高級腕時計専門誌『クロノス日本版』の編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか、講演も多数。時計に限らない博識さから、業界では“ハカセ”と呼ばれる。

 

“1本目”を選ぶ上で覚えておきたい腕時計の基礎用語

●ケース

本体の外側のことで、風防(ガラス)や裏蓋などの総称。仕様表では、ケースサイズやケース径などの項目で、大きさを表している。

●盤面(文字盤)

文字板(もじいた)やダイアルとも言われる。時計の顔であり、この盤面のデザインが時計の印象を大きく左右する。

●インデックス

文字盤に配置された、時や分を示す数字や目盛り、ドットなどのこと。バーインデックスやアラビックインデックスが一般的。

●ベゼル

風防の周囲に取り付けられる、縁となるパーツ。ベゼルを回転させて、タイム計測などに使うなど、実用性を持たせたモデルもある。

●裏蓋

ケースの裏側を閉める蓋。ホコリや水などが内部に侵入しないよう防ぐ。内部機構が見える、透明なシースルーバックなどもある。

●ベルト

ストラップとも呼ぶ。ベルトの先端である剣先側と、バックルの付いた尾錠側の2つに分かれる。レザーやナイロンなど素材は様々。

●バックル

ベルト装着時に、腕に固定するための留め具。特に穴留め式(ピンバックル)の場合は、尾錠や美錠と呼ばれることもある。

 

文/河原塚英信 撮影/下城英悟(GREEN HOUSE)

※『デジモノステーション』2017年3月号より抜粋