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前回は商用インターネットの普及から、スマートフォン登場前後までの国内O2Oの歴史について説明した。今回は、本格的なスマートフォン普及以降のO2O市場の変化と主な店舗送客施策のほか、企業・地方自治体などによるO2O事例について紹介したい。

○スマートフォンシフトの本格化とLINEの登場

フィーチャーフォン全盛の日本市場において2008年より登場したスマートフォンは、数年の間は比較的ゆるやかな成長曲線を描いていたが、2011年以降急激な伸びを示し始める。そのけん引役となったのが2012年2月にリリースされた「パズル&ドラゴンズ」に代表されるネイティブゲームアプリと「LINE」だ。

LINEはスマートフォンならではのディスプレイの表現力や多様な機能を武器に、コミュニケーションツール=キャリアメールという日本独自の図式を一気に塗り替えた。これにより、キャリア中心であったO2Oサービスは一気に広がりを見せることとなる。

比較的早くからO2Oに取り組んできたファーストリテイリング(ユニクロ)などの大手小売企業は、ECと店舗の連動をはじめとするオムニチャネル化へ徐々に舵を切り始めたが、中小企業を含めたO2O推進の動きも各所で見られるようになっていく。

○企業・店舗アプリを用いたO2O施策の活発化

スマートフォンが登場する前の店舗集客施策と言えば、自社サイトへの集客を図った上でユーザーに会員登録を促し、その中で取得したメールアドレスに対してメールマガジンを配信するケースが多かった。

すなわち、ユーザーにとって「会員登録」「メールマガジンの配信許諾」という2つのハードルを課す必要があった。特にフィーチャーフォンにおけるキャリアメールは配信拒否やメールアドレスの変更によって不達となるケースが多く、到達・開封率の低下による効果の逓減(ていげん)も悩みの種であったと言える。

ユーザーのインターネットに接触するデバイスは、フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行しただけでなく、PCさえタブレットを含むスマートデバイスへ移りつつある。

多機能・高機能化がスマートフォンが人気を集めている理由だが、それらの端末をユーザーが常時携帯しているということがやはり大きいだろう。メールチェックを含むインターネットへの接触において、「PCを立ち上げてブラウザを開く」という、数分間のタイムラグを要することがなくなったことが、スマートフォンへの移行を後押ししているのである。

近年のオムニチャネル化の流れの中で、以前は大手企業に限定されていた自社アプリ活用の潮流も中小企業に広まりつつある。こと「店舗送客」を目的とした場合、ユーザーからの個人情報を取得せずともプッシュ通知によって即時性の高い情報伝達を可能とするアプリは、ECサイトに限らず実店舗におけるタイムセール実施や、飲食店などで来店促進を目的に行われる「ハッピーアワー」などの告知に適したタイムリーかつダイレクトな販促手段としてその活用の場を広げている。

○企業・自治体によるアプリを用いた集客事例

それでは、以下に、企業や自治体によるアプリを活用した集客事例について、実際の活用例を交えながら見ていきたい。

(1)UNIQLOアプリ(株式会社ユニクロ)
 早くからネットショッピングにも対応し、日本のオムニチャネルおよびO2Oにおける第1人者とも呼べるユニクロ。もちろん、オンラインストアもコンテンツとして含まれるが、店舗来店を促進するための機能が数多く含まれている。

品切れなどによる販売ロスを防ぐための店舗在庫検索機能が実装されているほか、商品のタグに付与されているバーコードをスキャンすることで、それぞれの商品のサイズやレビューなどを参照することが可能となっている。

(2)阪急阪神おでかけアプリ(阪急阪神カード)
関西の大手私鉄である阪急電鉄・阪神電鉄を含むグループ各社の統合による経営効率化を目的に2006年に誕生した阪急阪神ホールディングス。同社は、西日本の私鉄では近畿日本鉄道に次ぐ売上高を誇るだけに、沿線にも多くの観光資源やグループが経営する施設が存在する。「阪急阪神おでかけアプリ」は、沿線における顧客回遊や店舗・施設送客を主眼にコンテンツ設計されたアプリと言える。

2016年9月に行われた「阪急阪神おでかけアプリキャンペーン」では、宝塚歌劇団と並びグループのエンタメ資産では抜群の知名度を誇る阪神タイガース公式戦への集客促進が行われた。9月14日から20日の間に行われる同球団の公式戦において、アプリ利用ユーザーが甲子園球場に入場すると、アプリ内にウェルカムメッセージとともに球場内の店舗で利用できるクーポンを配信するというものだ。

このほかにも、神戸ルミナリエなどの観光スポットにチェックインすることで「SMART STACIAポイント」がたまり、このポイントをグループの運営する他のポイントへ移行することが可能となっている。

(3)Hello KYOTO(京都市)
O2Oというキーワードからは店舗集客が連想されがちだが、自治体による観光集客の事例も少なくない。「Hello KYOTO」は、京都市が2015年5月にエイベックス・ミュージック・クリエイティヴと締結した「地域活性化に関する相互連携協定」の一環としてリリースされた。

観光客誘致が主な目的で、観光名所の情報や伝統工芸品のオンラインショップなどの機能が搭載されている。また、市民参加型のコンテンツなども含まれており、全体として京都自体のブランディング向上を目的としたアプリとなっている。

目を引くのは「デジタル市民届」と題した会員サービスで、アプリ上で市民届を取得すると京都市内の各所にある博物館や動物園などの施設での割引やノベルティなどの特典が得られるというもの。京都市民でなくても利用可能となっており、観光需要の掘り起こしにも一役買っていると言えよう。

次回は、飲食業界におけるO2O施策を紹介しながら、それぞれの狙いや効果についても触れてみたい。

著者プロフィール谷内 亮介

GMO TECH株式会社 O2O事業部 メディアプロデュース部 マネージャー。大学卒業後、私立大学事務局や広告代理店などの勤務を経て、2013年に株式会社ぐるなびへ入社、ビッグデータ・O2Oを用いた販促商品企画に携わる。2016年3月に当社入社。O2Oアプリ作成ASPサービス「GMO集客アップカプセル」の企画・プロモーション・アライアンスを担当。

(谷内亮介)