1月28日、トランプ氏が大統領に就任しから初めての電話会談を安倍首相との間で行った。トランプ大統領は冒頭で「娘のイバンカはあなたのことを非常に高く評価していたよ。めったに他人をほめない娘なんだが・・・」と語ったそうである(1月30日付「産経新聞」)。同紙は、「トランプ氏がイバンカ氏の話を持ち出したのは、就任前に外国首脳の中でいち早く自らを訪ね、胸襟を開いて会談した安倍首相への謝意の表れだといえよう」と分析している。

 トランプ大統領は、フランスのオランド大統領やドイツのメルケル首相との電話会談では、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国に対して米軍駐留経費の負担増を求めている。日本に対しても大統領選挙中は、「在日米軍の駐留経費を全額負担せよ。さもなくば撤退する」という発言を行ってきた。

 だが電話会談では、この問題には一切言及しなかったという。「いち早くマッド・ドッグ(狂犬)を日本に派遣するのでよろしく。これは非常に意味がある。彼のことを信頼しているのでいろいろと話をしてほしい」と語ったそうである。マッド・ドッグとはアメリカ中央軍司令官などを歴任したジェームズ・マティス国防長官のことである。2月3日に来日し、稲田朋美防衛相と会談をすることになっている。

 この会談で在日米軍駐留経費の負担増問題が持ち出される可能性はある。2月10日に行われる日米首脳会談では、貿易不均衡問題も議題になることだろう。「約束したことはやる」というのがトランプ大統領だからである。その結果、何が起きるかは予測することができない。

韓国の約束違反に速やかに対応した安倍首相

 どの世論調査でも、「今後、日米関係が悪化する」という回答が圧倒的に多数を占めている。多くの国民は、今後どうなるのか緊張感を持って見つめている。そして、この緊迫した状況に対応できるのは安倍首相しかいない、と思っているはずだ。だからこそ、安倍内閣と自民党の支持率だけが上昇しているのである。

 これは日韓関係についても同様である。安倍首相の韓国への対応は速やかなものであった。

 韓国釜山市にある日本の総領事館前に、韓国の市民団体がブロンズ像を設置したことに対して、1月6日の記者会見で菅官房長官は、「ウィーン条約に既定する領事機関の威厳などを侵害するものと考えている」と指摘した。当面の措置として、(1)在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ、(2)駐韓大使や在釜山総領事の一時帰国、(3)日韓通貨スワップ取り決め協議の中断、(4)日韓ハイレベル経済協議の延期を決定したことを明らかにした。

 菅官房長官も指摘したように、日韓両国は「一昨年の日韓合意で、慰安婦問題が最終的、不可逆的に解決されることを確認」している。この合意に反することは明白である。政府のこの強硬姿勢も安倍内閣の支持率を上昇させていることは間違いない。

「少女像」か、「慰安婦像」か

 ところで自民党の外交部会などの合同部会で、外務省資料に「慰安婦の少女像」と記載されたことに対して、「少女像と呼ぶな。慰安婦像と呼ぶべきだ」という意見が噴出したそうである。だが、どちらも少し違うように思えてならない。

 1月25日、慰安婦問題に関する学術書『帝国の慰安婦』で元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉棄損の罪に問われていた朴裕河(パクユハ)世宗大学教授に対し、ソウル東部地裁は無罪判決を言い渡した。この朴教授は、『帝国の慰安婦』のなかで、この像について次のように述べている。

「記念碑は、性労働を強制された慰安婦でありながら、性的イメージとは無関係に見える可憐な『少女』の姿である」

「少女のヘアスタイルは、慰安婦像に学生のような端正なイメージをもたらしている。少女像が作る学生イメージは実際の朝鮮人慰安婦とは距離があると言うほかない。さらにその端正さは、彼女がいまだ踏みにじられてことのない『処女』であることをも象徴していよう」

「女像の姿は、韓国人が自分を重ね合わせたいアイデンティティとして、もっとも理想的な姿である。少女がチマチョゴリを着ているのも、リアリティの表現というよりは、慰安婦をあるべき〈民族の娘〉とするためだ。結果として、実際の朝鮮人慰安婦が、国家のために動員され、日本軍とともに戦争に勝つために日本軍の世話をしたことは隠ぺいされる。結局少女像は、時に家族のために自分を犠牲にした犠牲的精神も、息子ではなく娘が売られやすかった家父長制による被害者性も表出しないままだ」

「少女像には、『平和碑』という名前がついている。しかし、実際は少女像は、差別されながらも戦争遂行の同志だった記憶や許しの記憶を消去したまま、恨みだけを込めた目で、日本に対する敵対状況に列なることを要求する。したがって、〈日本軍より業者が憎い〉とする慰安婦もそこには存在し得ない。結果的にそこには〈朝鮮人慰安婦はいない〉」

「少女像は実際のところ運動や運動家を記念するものであって、慰安婦ではない。くしくも『デモ1000回を記念して』作られたように、大使館前の少女像はデモの歳月と運動家を顕彰するものでしかないのである」

 長い引用となってしまったが、実に説得力のある記述である。自民党合同部会は、この朴教授の指摘を大いに学ぶべきであろう。

蓮舫体制は早くも行き詰まりか

 民進党が蓮舫氏を代表に選んだのは、衆院選挙や都議選で勝てる代表ということが、最大の理由であったはずだ。ところが支持率は上がるどころか、低下し続けている。思惑がまったく外れてしまったということだ。

 そのために、早くも“蓮舫降ろし”が党内で始まっているという報道すらなされている。共産党との共闘についても、積極派と慎重派に分裂している。民進党が公認予定だった落選中の元都議2人が民進党を離党し、小池知事に支持を受ける方向で動いている。“選挙の顔”どころか、足元の東京でも蓮舫離れが起こっているということだ。これでは自民党に対抗できるわけがない。

 小池知事が、安倍首相との会談で「国政選挙では自民党を応援します」と約束したということが話題になった。小池知事は、「嘘です。ハハハ」と否定したが、本当だということが永田町では囁かれている。都議選と衆院選をはっきり区別して対応しているのが、小池知事だというわけである。蓮舫氏は、小池知事に接近したがっているが、そう簡単ではない。

 都議選で民進党が惨敗ということになれば、“蓮舫降ろし”はもっと公然としたものになるであろう。わずか半年後には、早くも正念場を迎えることになる。

80歳代の幹部が居座る共産党

 予想はしていたことであるが、共産党の第27回党大会で、86歳の不破哲三氏が常任幹部会委員、84歳の浜野忠夫氏が副委員長に就任した。不破氏は、命の続く限り、引退する気はなさそうである。

 党大会では、不破氏の威令の下、人事を牛耳ってきた浜野氏が、「中央委員会が推薦する中央役員候補者名簿の提案にあたって」と題する報告を行った。

 そこでは「中央委員会の構成にあたって・・・ベテランの幹部と若い新しい幹部の双方の力を最大限発揮できる構成としています。年齢によって機械的に区分することをせず、一定の年齢に達している同志であっても、その知恵と蓄積された経験を生かすため、健康と家庭などの条件の許す同志については、退任を希望している同志でも積極的に慰留すること」などと述べている。普通、80歳を過ぎれば一線を退くものである。それが2人とも居残ったということは、慰留されたということである。

 いったい誰が慰留したのだろうか。2人には、散々嫌な思いをさせられてきた志位氏がするわけがない。不破氏、浜野氏の自作自演の慰留劇でもあったのであろう。浜野氏の提案は、そのことを見事に物語っている。

 この異常さに幹部の誰一人として異論をはさめないというところに、共産党の硬直した体制が表われている。共産党が普通の政党になろうというのであれば、まずこの物言えぬあり方こそ改めるべきであろう。それとも党員の平均年齢の上昇で、80歳代などまだまだ若いとでも言うのだろうか。

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筆者:筆坂 秀世