われわれはいつまで衝動の奴隷であり続けるのか、究極の課題を突きつけられていると語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがポピュリズムの嵐が吹き荒れる中、いつまで“衝動の奴隷”であり続けるのか、世界は究極の課題を突きつけられていると語る。

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世界各国でポピュリズムの嵐が吹き荒れた2016年。民主国家に暮らし、「自分の選択肢」を持っているはずの人々が、次々と反既存権力、反エリート的な気持ちよさに酔いしれ、世界の安定的な秩序を脅かす動きに加担しました。アメリカ大統領選しかり、イギリスのEU離脱投票しかり、さらにフランス国民戦線をはじめとする欧州各国での極右政党の台頭しかり…。

そんななか、相対的に見て国際社会に対する影響力を明らかに高めているのがロシアのプーチン大統領です。巧みな戦略に基づくプロパガンダ(アメリカの専門家いわく“兵器級プロパガンダ”)は、弱点だらけの西側先進国の奥底に入り込み、今や各国の右派と共鳴しています。米ドナルド・トランプ、英ナイジェル・ファラージュ、仏マリーヌ・ル・ペンといった西側の極右ポピュリストがロシアの強権主義とフィードバックし合うーー20世紀には、「ソ連と結託した右翼」というのはありえない構図だったのですが。

多様性とグローバルトレードによる恩恵を無視して、むしろそれこそが国を弱める元凶だと強引に結論づける。モスクでもブルカでも不法移民でもマナーの悪い中国人観光客でも、どうでもいい“断片”をつまんで一部の人が騒ぎ立て、攻撃する。その“断片”をポピュリストが政治利用し、排他性という燃料をもとにして世論に火をつける。こんなことが繰り返されれば当然、社会は暴走し、自壊します。

こうした潮流に対し、「怒れる有権者」などという新しいカテゴリーで解釈しようという動きもあります。しかし、僕はこの問題は、もっと人間の根源的な本能に根ざしているという直観がある。われわれがまだ見たくないもの、だけどそこにあるもの。それが「強権的なものへの憧れ」なのか、それとも別の何かなのか、まだはっきりと言葉にはできませんが、人々は根源的な衝動に突き動かされているのではないかと思うんです。

もしかすると、人間は有史以来ずっとそうだったのかもしれませんが、いつまでわれわれは“衝動の奴隷”であり続けるのか。今、世界はそんな究極の課題を突きつけられているのではないでしょうか。衝動や煩悩、喜怒哀楽を鎮(しず)められるか。猛獣使いのようにその横に立ち、渦にのみ込まれず受け流すことができるか……。ヨガのメディテーション(瞑想)のような、達観した態度の必要性を感じています。

一方、日本はどうでしょうか。例えば昨年末のプーチン大統領来日に際しても、「プーチンは柔道と秋田犬が好きな親日家だ」とか、「大事なときに遅れがちな遅刻魔だ」といったミーハーな断片を取り上げることが多く、しっかり全体像を見ようという報道は実に少なかった。特にテレビはその傾向が顕著でした。メディアの絶望的な知的怠慢、そしてそこにすっぽりと空いた“隙間”は、プーチン大統領からすればハッキングしがいがあるでしょう。

メディアが相当に成熟しているはずのイギリスやアメリカでも、(ロシアのプロパガンダがどれほど影響したかはともかく)国民は“衝動の奴隷”と化し、ポピュリズムにのみ込まれた。日本の脆弱(ぜいじゃく)な言論空間はその波に耐えられるでしょうか?

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など