東芝・巨額損失問題、半導体分社化を決定(ロイター/アフロ)

写真拡大

「東芝については当初、主力行の説明では損失額は最大でも5000億円を超えることがないということで安心していたのですが、1月中旬に入り7000億円規模にまで拡大しかねないということが明らかになって、銀行内もドタバタでした」(東芝の取引金融機関幹部)

 それまで東芝の主力銀行は、仮に債務超過になっても資産(持株や不動産)や一部事業の売却で債務超過は早晩解消されるとして、東芝の債務者区分は「正常先」に据え置いていた。しかし、減損処理等の損失額が7000億円にまで膨れ上がる見通しとなって、メイン行の一角、みずほ銀行は東芝の債務者区分を1ランク下の「要注意先」に引き下げた。

 また、80社を数える取引金融機関の中には、東芝の先行きは不透明として、主力行への債権の買い取り、いわゆる「メイン寄せ」を模索する動きが見られる。

「マイナス金利で疲弊する地域銀行の中には、東芝のリスクはとれないという空気が支配的だ」(地域銀行幹部)

 東芝の危機回避スキームは、事業を分社化して、半導体のNANDフラッシュメモリー(全体収益の7割を占め、競争力のある事業)に外部資本を入れる(=自己資本を積み増す)というもので、債務超過を回避するための緊急措置として多用されるスキームだ。

 例えば、1999年に大和証券(現大和証券グループ本社)が経営危機に瀕した際、ホールセール分野を分社化し、そこに旧住友銀行(現三井住友銀行)が出資することで危機を回避した時もこのスキームが使われた。

 このスキームの肝は、東芝にとって最も競争力のあるお宝の事業を切り出し、他社に資本を仰ぐ点にある。競争力のある事業でなければ他社は出資話に乗ってこないためだ。しかし、そこはあくまでマイナー出資で、過半の株式を他社に提供するものではない。分社化された半導体事業会社への外部資本の出資は、2割弱となる。それでも収益の一部は他社に流れることになるが、とりあえず急場しのぎで資本を仰ぎ、債務超過を回避するという目的は達成できる。

「甘い考えかもしれませんが、東芝はいずれこの出資を買い戻す考えでいます。その意味で外部の出資は、事業に色気のない純投資の相手がいい。しかも外資ではないほうがいい。つまり主力行が日本政策投資銀行と組成する和製ファンドが最有力になります」(メガバンク幹部)

 日本政策投資銀行は東芝や東電など日本の基幹インフラ事業会社の裏メインバンクにほかならない。東芝の危機で、それが表に出てきたようなものだ。同行が東芝の生殺与奪の権を握っているといっても過言ではない。

●ガバナンスの消失

 そもそも、なぜ日本の名門企業の名をほしいままにしてきた東芝が存亡の危機に立たされているのか、そこには名門ゆえのガバナンスの喪失が潜んでいる。

 東芝の重電部門とそれ以外の部門は、人事も含めまったくと言っていいほど交流はなく、カルチャーも異なる。重電の取引先は防衛省などの官庁が多く、いまや終戦間近の「大本営」といわれている。つまり極端な縦割りで、その意味で分社化はしやすい。重電の情報(状態)は他部門にはわからず、その逆も同じ。現在の医療部門出身の綱川智社長は、東芝で何が起こっているのかわからない状態で、ガバナンスが喪失している。損失額が5000億円から7000億円に拡大したことも、直前まで綱川氏は把握していなかった。

 取引金融機関が最も危惧しているのは、実はこうしたガバナンスの喪失にほかならない。損失額がはたして7000億円で収まるのか疑心暗鬼になっている。主力行は近く、東芝に役員クラスを出向させることになるとみられる。
(文=森岡英樹/ジャーナリスト)