By Anthony Jauneaud

同じ音楽を聴いても何も感じない人もいれば、文字どおり脳が反応してさまざまな感情があふれ出す人まで、その反応は実にさまざまといえます。なぜ人によってそのような反応に違いがあるのかはあまり良く解明されていないのですが、幻覚剤の一種であるLSDを用いた研究でその一端が明らかになっています。

LSD May Help Reveal What Makes Music Meaningful

http://www.livescience.com/57666-lsd-reveals-what-makes-music-meaningful.html

音楽など外部からの刺激に対して脳がどのように、どの部位で反応を示すのかを知る最適な方法は、脳の血流を可視化することで動きを観察できる「磁気共鳴機能画像法」またの名を「fMRI」と呼ばれる方法です。スイス・チューリッヒ大学医学部の研究チームはこのfMRIを使い、22人の被験者が幻覚剤であるLSDを摂取した場合と、偽薬を与えられた場合、そしてLSDとその作用を阻害する受容体拮抗薬を摂取した場合の脳の働きの違いを比較することで、音楽を聴いた人が意味を感じる際にはどの部位が働いているのかを調査したとのこと。

検証では、fMRIを用いて22人の被験者の脳を3回にわたってスキャンし、その働きの違いを確認。3回のスキャンの際にはそれぞれ参加者に対して偽薬とLSD、または偽薬とLSDに加えて受容体拮抗薬であるケタンセリンを与えて、その際に生じる変化が観察されています。スキャンを行う際、参加者は自身にとって意味を持つ曲、または意味を持たない曲のいずれかを聴かされ、スキャン後に実際に意味があったのか、なかったのか、あるいは中間(ニュートラル)だったのかをアンケートで答えています。



By Michael Newman

検証を行ったところ、LSDを摂取した参加者は本体意味を持たない曲を聴かされていた場合でも「意味を感じた」と答えたとのこと。しかし、LSDと同時にその働きを阻害するケタンセリンを摂取していた場合は、その効果が弱まっていたことが明らかになったそうです。このことから、LSDによって同じ曲に対する反応に違いが誘発されたことが浮き彫りになっているとのこと。



LSDなどを用いた研究から、音楽の刺激を受けて脳が活発化する部位が明らかになってきたことは、脳の働きを理解する上で非常に大きな意義があると考えられています。絵画鑑賞などにもいえるようですが、音楽を聴いたことで頭の中に風景が浮かんだり、特定の記憶が呼び起こされるというメカニズムはまだ明らかにされておらず、今回の研究結果がその1つの手がかりになると期待されています。

検証を行った研究チームのKatrin Preller氏は、この研究によって脳のどの細胞や物質、部位が今存在している環境を意味のあるものであり、自分に関係したものであるかを認識する働きをになっているのかを明らかにしていると、研究の意義を語っています。さらにPreller氏は、この研究結果は精神疾患の治療においてどの部分に焦点を当てれば良いのかを示す可能性があることからも、結果をより深く理解することが重要であるとしています。

また、この研究からは精神疾患の治療に役立てられる可能性があるほか、末期がん患者のケアにも用いられる可能性を秘めているとのこと。激痛を伴う末期がん患者のケアには幻覚剤の一種である「シロシビン」が用いられるのですが、今回のLSDを使った研究結果をもとに、死期が近づく患者に対して死ぬということの「意味」や「深さ」といったことを理解してもらうことで、最後に心の平安を与えられる可能性があると記しています。

研究チームによる論文は、以下のリンクから閲覧することが可能です。

The Fabric of Meaning and Subjective Effects in LSD-Induced States Depend on Serotonin 2A Receptor Activation: Current Biology