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by Caroline Davis2010

スクリプス研究所のフロイド・ロメスバーグ氏らは2014年に、人工的に作り出した塩基対を大腸菌のDNAに組み込み正確に複製させることに成功しています。しかし、この人工塩基対は外部から化学的物質が供給されなければ生存することができず、この支えがなくなるとDNAから排除されるものでした。研究チームはさらに研究を進め、ついに大腸菌に人工塩基対を維持させ続けることに成功したとのこと。

A semisynthetic organism engineered for the stable expansion of the genetic alphabet

http://www.pnas.org/content/early/2017/01/17/1616443114.abstract



New organisms have been formed using the first ever 6-letter genetic code - ScienceAlert

http://www.sciencealert.com/new-organisms-have-been-formed-using-the-first-ever-6-letter-genetic-code

Scientists create first stable semisynthetic organism

https://phys.org/news/2017-01-scientists-stable-semisynthetic.html

DNAは細胞の中で二重らせん構造を取っていることが知られています。この構造の中には「A」(アデニン)と「T」(チミン)によるA-T塩基対、「G」(グアニン)と「C」(シトシン)によるG-C塩基対という2つの塩基対が存在します。そこに、人工の塩基対を1つ追加して、人間が介入して拡張するという試みが20年以上にわたって行われ、2014年にフロイド・ロメスバーグ氏が率いるスクリプス研究所のチームが、人工塩基対の組み込まれた大腸菌を生み出すことに成功しました。

ただし、大腸菌は独力では人工塩基対を複製することはできなかったため、論文の共同著者であるヨーク・チャン氏とブライアン・ラム氏が、人工塩基対を作るために必要な化学物質を運ぶたんぱく質が大腸菌の細胞膜を通れる「ヌクレオチド・トランスポーター」と呼ばれる仕組みを生み出しました。しかし、ヌクレオチド・トランスポーターは大腸菌の寿命を縮めるもので、組み込まれた人工塩基対が組み込まれても大腸菌はそれを維持し続けることはできず、まもなく死んでいました。

そこで、研究者たちは研究を重ねて、トランスポーターを修正。また、人工塩基対が簡単にコピーできるように、従来Y塩基形成に使っていた分子を変更して最適化しました。

さらに、研究チームは革新的なゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9を用いて、人工塩基対のもとである「X」分子と「Y」分子を「侵入者」と識別されないようにしました。

その結果、大腸菌はトランスポーターを組み込んだ状態でも健康で、人工塩基対を維持し続けることができるようになりました。

なお、ロメスバーグ氏らはあくまで「大腸菌に人工塩基対を組み込むことは可能」ということを実証しただけで、組み込まれた人工塩基対には特別な意味はないため、次は実際に情報の読み取り可能な人工塩基対を組み込むことを考えています。将来的にはこの細菌を利用して薬や素材のもとになる「新たなたんぱく質」を生み出すことが期待されています。