劇的なイーグルフィニッシュ!またひとり注目の若手がスポットライトを浴びた(撮影:岩本芳弘)

写真拡大

振り返ってみれば、今週のファーマーズ・インシュアランス・オープンの開幕前の最大の注目は、タイガー・ウッズの米ツアー復帰だった。2015年8月以来、1年5か月ぶりにウッズがカムバックする。それは、アメリカのみならず世界中のゴルフファンが待ち望んでいたことだった。

開幕直前はフロリダ州オーランドで開催されていたPGAショーの会場から伝わってきたビッグニュースでトーリーパンイズは持ち切りになった。
ウッズがテーラーメイドとクラブ契約。それは、現在の世界ナンバー1、ジェイソン・デイとナンバー3のダスティン・ジョンソンに加え、長年の王者ウッズもテーラーメイド・ファミリーの仲間入りをすることを意味し、偶然か、必然か、その3人が予選2日間を同組で回る展開。そんな出来過ぎのようなストーリーが現実に起こるところが、米ツアーの面白さだ。
そういえば、2012年の今大会は首位を独走していたカイル・スタンリーが72ホール目に崩れてプレーオフにもつれ込み、結局、優勝したのはブラント・スネデカーだった。
目前の初優勝を逃して号泣したスタンリーを気遣い、勝者スネデカーが口にした「悔し涙は恥じゃない」「たとえ戦う相手がこの地球上の僕の最大の敵であっても、あんなふうに苦しむ姿は見たくない」という言葉は、まるで映画かドラマの主人公のセリフのようで、なんともカッコ良かった。
昨年の今大会は悪天候で最終ラウンドの残りが月曜日に持ち越しとなったが、結局、優勝したのは、またしてもスネデカー。しかも、スネデカーは日曜日のうちに最終ラウンドを回り終えて逃げ切り優勝だったところが、米ツアーきってのナイスガイへのボーナスのおうで、それもまた面白かった。
果たして今年は、どんな面白いことが起こるのだろうかと期待していたら、最大の注目を集めていたウッズ、デイ、ジョンソンの3人が3人とも予選落ち。リッキー・ファウラーやジミー・ウォーカーらも予選落ち。それ自体は面白いことではなかったが、上位陣がこぞって不在となると、無名選手も新人もベテランも一気にその隙間になだれ込んでくるところは、スピードの速い椅子取りゲームを眺めているようで、やっぱり面白かった。
最終日は大混戦となったが、ジョン・ラームが72ホール目のイーグルで一気に抜け出し、初優勝。「これで2年間のシードだ。メジャーに出られるボーナスまでもらった!」
興奮冷めやらぬ様子で喜びを語るラームの姿は、米ツアーの戦いの厳しさを物語ると同時に、チャンスとラックを掴むことができれば、昨日の無名、昨日の下位選手が、翌日にはスターになり、その逆も起こりうる入れ替わりの激しさを示していた。
ラームはスペイン出身の22歳。大学はアリゾナ州立大学へ留学し、優れたカレッジゴルファーに贈られるベン・ホーガン・アワードを史上初めて2度受賞。大学卒業後は、下部ツアーを経ず、ダイレクトに米ツアーへ移行したエリート選手だ。
だが、米ツアーはそういうエリートたちがひしめく場所。その米ツアーで希望と不安が交錯する日々の中、昨年は2度、優勝争いに敗れ、悔し涙を流した。
そして2年目の春を迎えた今大会で、ついに初優勝。「今年、勝つことこそがゴールだった。去年、味わい損ねた勝利の味を今年こそ味わいたいと思っていた」
ラームは「信じてもらえるかどうか」と前置きした上で「大学時代より今のほうが、ずっとアグレッシブになっている」と言った。72ホール目のイーグル然り。「スペイン人ならでは、なのかもしれない。せべ(バレステロス)、ホセ(マリア・オラサバル)、セルジオ(ガルシア)、みんなアグレッシブだからね」
熱い血でもぎ取ったイーグル、熱い血でもぎ取った勝利。そういうことも起こりうるから、米ツアーは面白い。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>