1月24日からタイで行なわれた「2017Jリーグアジアチャレンジ」に、日本から鹿島アントラーズと横浜F・マリノスの2チームが参加した。それぞれ、タイリーグから参戦したバンコク・ユナイテッドとスパンブリーFCと対戦。「Jリーグvs.タイリーグ」という国別対抗戦で行なわれ、日本勢がトータル3勝1敗で初めての試みとなるこの大会を制している。

 両リーグの力関係を考えれば、ある意味で当然の結果と言えるが、唯一の黒星を喫したのが横浜FMではなく、王者の鹿島のほうだったのは、少し意外な結果だったと言えるかもしれない。

 鹿島は初戦のスパンブリー戦こそ4−2で勝利を収めたものの、スパンブリーより実力で勝(まさ)る昨季タイリーグ2位のバンコク・Uには3−4と競り負けた。後半に盛り返したものの、前半だけで4失点。石井正忠監督が言うように、「チームが始動してから1週間ほどしか経っていないので、試合を通してコンディションを高めることと、新加入選手に戦術理解をしてもらうこと」が今回のタイ遠征の主な目的ではあったものの、「どんな試合でも勝ちにこだわるのが鹿島」(MF永木亮太)というクラブのアイデンティティーを考えれば、あっさりと失点を重ねた戦いぶりは、とうてい鹿島らしくなかった。

 今季の鹿島は現時点で、DFファン・ソッコ(→契約満了)が退団したのみで昨季の主力はほぼチームに留まっている。ここからスペインへの移籍が秒読みとなっているMF柴崎岳が抜けることも濃厚で、実際にこのタイ遠征に柴崎は参加していない。

 一方で補強に目を向ければ、MFレオ・シルバ(前アルビレックス新潟)、FWペドロ・ジュニオール(前ヴィッセル神戸)とJリーグでの実績十分なふたりのブラジル人選手を獲得したのに加え、ブラジル代表の経験を持つ23歳のアタッカー、FWレアンドロをSEパルメイラスより期限付き移籍で迎え入れた。

 さらに、前所属チームでレギュラーとして活躍したFW金森健志(前アビスパ福岡)とDF三竿雄斗(前湘南ベルマーレ)というふたりの即戦力も補強。優勝した昨季以上の戦力を手にしたことは間違いない。

 このタイ遠征で新戦力には、それぞれアピールの機会が与えられていた。そのなかで際立った動きを見せていたのがレオ・シルバ。初戦のスパンブリー戦では後半からピッチに立ち、鋭いボール奪取と視野の広さを生かした展開力、さらには前線へ果敢に飛び出す積極性も示して、逆転勝利に貢献した。対戦相手の選手からも「中盤のブラジル人選手が一番印象に残った」という評価を受けている。

 バンコク・U戦では90分間フル出場。不甲斐なかったチームのパフォーマンスとは対照的に、攻守両面で絶大な存在感を示し、直接FKでゴールも奪った。

 ペドロ・ジュニオールは初戦の後半からピッチに立ち、2ゴールを奪う活躍を披露。コンディションは決してよかったとは言えないが、ゴール前での動きはやはり際立っており、新たなチームの得点源になり得る可能性を示した。

 一方でレアンドロは、今ひとつの出来だった。日本のチームでプレーするのが初めてということもあり、戸惑う場面はあっただろうが、「元セレソン」という肩書のわりには、そのプレーから"スーパー"な部分は感じられず、バンコク・U戦でゴールを奪ったのが唯一の見せ場だった。

 金森や三竿雄も、この2試合に限って言えばアピール不足だった。もちろん、現時点で評価するのは難しく、戦術理解を深め、コンディションを高めることが何よりも求められてくるはずだ。

 言うまでもなく、始動間もないこの時期での結果は、それほど大きな意味を持つものでもない。ただし気になったのは、やはり4失点を喫したバンコク・U戦の前半のパフォーマンスだった。

「僕たちから相手のプレーを制限して、奪うというのが本来のやり方」と石井監督が言うように、昨季、優勝の要因となった鹿島の堅守を支えていたのは、前線からの献身的な守備だった。しかし、その動きが緩慢だった前半はパスの出しどころを抑えられず、個人能力の高い相手の外国人ストライカーを自由にさせてハットトリックを許してしまった。

 コンディション、連係、環境も含め、エクスキューズは当然ある。とはいえ、今季の鹿島はJリーグだけでなく、ACLにも参戦する。ベストのコンディションですべての試合に臨むことなど不可能だ。そのなかでも、チーム全体で「献身性」という生命線を保たなければならない。そこを疎(おろそ)かにすれば、このような結果が待ち受けるということだ。

「前半は、少し人任せな部分があったのかなと思います。誰のせいというわけではなく、厳しいところがあれば、助けに行かなければいけない。そういった部分が欠けていたと思います」

 そう語るMF土居聖真だけでなく、選手たちは敗因を理解しているだろう。鹿島にとってこのタイ遠征は、今季のハードスケジュールを乗り越えるための、いいシミュレーションになったのではないか。

原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei