“見た目の変化”も不眠のサイン。職場の不眠マネジメント

写真拡大

こんにちは。睡眠コンサルタントの土井です。
 
連載の第9回目となります。私は幼い頃から不眠に苦しみ、約20年もの間、不眠に悩んできました。また、病院での治療も10代の頃からはじめ、睡眠薬の服用も5年以上の経験があります。そんな私も紆余曲折あり、連載1回目でご紹介した通り、色んな方法を試しながら、やっと数年前に不眠を克服することができました。
 
前回は、周りの家族や友人が不眠の方をどうサポートするとよいかのポイントについて書かせて頂きましたが、今回は職場で共に働く人が不眠になった場合のサポートについて考えていきたいと思います。部下を指導する立場の人にはもちろん、すべての働く人に私が伝えたいことです。

「眠れない」は、さまざまな不調のサイン

不眠は誰にでも起き得ることで、「ただ眠れないだけ」と軽く思いがちですが、さまざまな不調のサインと言えます。短期的には、ストレスや精神的負担、中・長期的には業務効率の低下や生活習慣病、うつ病などのサインになります。
 
特にうつ病と不眠との関連性は高く、うつ病の方の約9割が不眠や過眠に悩んでいると言われています。うつ病の兆候をキャッチする手段として、不眠に注目するのは有効と言えるでしょう。
 
さらに睡眠は個人の問題と捉えがちですが、部署の成果や会社の成果にも関わってきます。
ある調査では、不眠や睡眠不足による国内の経済損失は約3.5兆円と試算されており、近年では企業として不眠対策や睡眠の質の向上に取り組む企業もでてきています。

第一のポイントは、業務に支障が出ているかどうか

職場などで周りに不眠らしい人がいた場合、まず難しいのは、どの程度の不眠から介入すべきかということではないでしょうか。
 
睡眠で悩んでいると言ってもそのレベルは様々です。今すぐ医療機関に行かなければいけないレベルから、一時的なプレッシャーによる誰にでも起こる不眠までかなり幅があります。また、その不眠症状を本人がどう感じているかにも個人差があります。
 
ただ1つ言えるのは、症状がひどいようであれば、早く気づけるか、早く改善手段を講じられるかによって、その後が大きく変わってくるということ。そのため職場で対処すべきレベルなのかどうか見極めが大切です。
 
しかし、周りからはなかなか深刻さがわかりにくいものです。
 
そこで、基準の一つとして注目したいのが「仕事に支障が出ているかどうか」。たとえ、本人は「大丈夫」と言っていても仕事に支障が出ていればそれは今すぐ対処しなければいけない問題です。
 
睡眠で悩む方はあまり周りに言いたがらない傾向があるので、どうしても気づきにくいものです。また、睡眠時無呼吸症候群や慢性的な睡眠不足など本人に自覚がないパターンもあります。本人の発言だけを参考にしていると、周りが気づかないうちにかなり悪化していたということにもなりかねません。
 
仕事に支障がでるレベルまでいかなくても、集中力や作業能率の低下が見られるようであれば何かしら対処を考えるべきでしょう。作業効率の低下やミスの増加がないか、また居眠りなどが見られていないかなども注目して見てみましょう。

“見た目の変化”にも着目しよう

睡眠で悩んでいたとしても、仕事に支障を出さずにうまく対処できる人もいます。特に不眠初期であればまだ業務にはさほど影響もでないかもしれません。
 
また、元々ずっと悩んでいる場合はそれ以前との差がわからず気づきにくいということもあるでしょう。実際、私が不眠で苦しんでいたことや不眠による作業能率の低下などは、私自身が申告するまで誰も気づいていなかったようです。
 
そこで作業能率以外に注目したいポイントは、「見た目の変化」です。
 
たとえば、以下のようなポイントで見ていくとヒントをつかめるかもしれません。

目にクマができていたり疲れた顔をしていないか最近ぼーっとすることが増えていないか顔が無表情のことが多くなっていないか情緒不安定なことがないか

相談しやすい環境を

周りがいかに気づけるかはもちろんですが、悩んでいる本人が相談しやすい環境をつくることも大切です。何十人、何百人と同じ職場にいると、上司の立場からするとずっと1人を見ているわけにはいきません。全員の業務効率や見た目の変化に気づくのも、実際はなかなか難しいでしょう。
 
そこで、本人が相談しやすい環境をつくることで情報をキャッチしやすくなります。
普段からコミュニケーションが活発で、相談しやすい環境であれば普段の会話の延長で睡眠の悩みもキャッチすることができます。また、周りが知ってくれている・理解してくれていると思えれば、不眠で悩んでいる当人も気持ちが少し楽になります。
 
私自身も自分が睡眠で悩んでいるということを伝えられてからはずいぶんと楽になりました。精神的なストレスや緊張は睡眠に影響することが多いので、そこが軽くなるだけでも効果はあると言えるでしょう。
 
不眠の理解の前に、身近で働く仲間の変化に気づきやすい職場環境を育てていくことも忘れてはなりません。

配慮や声掛けは体調不良と同じ

では、同僚や部下が不眠だとわかった後の対処を考えてみましょう。
 
基本は、ほかの体調不良や身体のケガなどと変わりません。不眠ときくと「眠れないくらいたいしたことない」と軽く考えてしまったり、逆にストレスや精神的な負担が原因ではないか?と腫れ物に触るような極端な対応をしがちです。特に医療機関に通っているなどときいた場合は、どうしても身構えてしまいます。
 
でも、感覚としては普通の体調不良や身体のケガなどと同じ。配慮はしながらもできる仕事はしっかり与えていく。特別なものと思わずに状態を確認しながら、解決に向けて対処を行なっていくことが大切です。
 
会社の中に産業医や社内カウンセラーがいれば、適切に連携しながら対処していくのも1つの方法です。
 
職場での工夫だけではどうにもならない場合は、適切な医療機関の受診を勧めるのも大切です。不眠は放っておいて治る類のものではありません。職場環境を整えるとともに、本人の悩みの根本を解決する意味で、生活習慣の改善や医療機関の受診を勧めることが重要です。
 
一番よくないのは、周りで気づいていながら「まあ、大丈夫だろう」と放置しておくことです。「いずれ眠れるようになるだろう」、「不眠くらいたいしたことないだろう」と思っていると後になってとりかえしのつかないことになりかねません。
 
もし本人が医療機関の受診や産業医との面談を嫌がる場合は、仕事として意識させるのがよいでしょう。本人も睡眠は個人の問題と考えがちですが、睡眠の問題により仕事に影響がでているのであれば、それを改善させることも仕事の一つです。そう意識させることができれば、本人も改善に向けて一歩踏み出しやすくなります。

さいごに:不眠へのサポートは全体の成果につながる

不眠へのサポートを考えることは不眠で悩む人を助けるだけでなく、職場全体の睡眠の意識を高め、業務の効率をあげることにもつながります。
 
ぜひこの機会に不眠の人へのサポートを考えると共に、職場の睡眠意識の改善に取り組んでみてはどうでしょうか。

photo:Thinkstock / Getty Images