「決算書を良く見せたい」が 会社を赤字にするメカニズム

写真拡大

「決算書をよく見せるために、損失処理を見送る」。これは赤字会社のみならず、黒字会社でも見られる行為です。

なぜそんなことが起こるのでしょうか?

経理のプロフェッショナルであり、最新刊『スピード経理で会社が儲かる』の著者、前田氏がその詳細を語ります。

人を切る前に、数字を切る!

 会社の利益が急激に下がったとき、あるいは赤字に転落したとき、早期退職者を募集することがあります。ただそれは、どの会社も最終手段として考えていることであり、「本来はやるべきではない」と思っているはずです。
※関連記事
会社の「悪い数字」が、社長に伝わりにくい理由

 しかし、それを何度も繰り返す会社もあります。そうした会社の特徴は、「損失処理すべき『ダメ資産』をそのまま資産計上することが常習化している」ということが挙げられます。

 目的は、決算書の「外観」をよくするため。これは赤字会社に限らず、黒字会社でも見受けられることです。

 損失計上をいつ行うかは、合法である限り会社の決めることですが、「黒字体質の会社にする」のであれば、早め早めの損失処理で、すっきりした決算書にすべきと考えます。

 税務上や外観上は、損失を翌期以降に繰り越したほうがいいと考えるのも会社の判断です。しかしそうした判断が、従業員の教育上、よいことばかりとは限りません。

 損失責任の所在のあいまいさが、気のゆるみ、甘えとなって、組織全体がゆるく、ぬるく、鈍く、スピード感のない体質になっていくのです。

 数字の責任は、「期ズレ」させてはいけません。会社の事情もあるので理屈通りにはいきませんが、経理の数字も本来はそう処理するのが健全だとわかった上で損失を繰り越す、ということを意識してほしいのです。

 損失を先送りにしてよいことはありません。むしろ、「もっと早く決着をつけておけばよかった」とすっきりした顔で言われることがほとんどです。

「利益が出たときに、その評価損も合わせて処理したほうがいいから、それまで現状維持でいきましょう」と言う社長もいます。理屈上はそうなのですが、実際その通りになることはほとんどありません。次の年も、その次も利益が出ないことが多く、むしろ一気に損失処理をしたほうが、利益は出やすいのです。それが「過去との決別」なのです。

もし「ダメ資産」があったら?

 会計上、翌期以降に損失処理を見送ることがあったら、管理上は数字を把握し、遅延することなく、その場その場で社内の責任者と共有すべきです。

「過去の数字を切れないから、最終的に今いる人を切らざるを得ない状況に追い込まれる」ことだけは避けなければいけません。

「きっと誰かがなんとかしてくれる」「いずれ景気がよくなって、うちの会社もよくなる」という期待だけでは絶対にうまくいきません。

 そのような「都合の悪いことはとりあえず何でも先送りにしておけばいい」という経営者や社員の「体質」が、さらに赤字を引き寄せているのです。