アイスランドでの研究によると、教育場面において優れた能力を示す傾向を決定する遺伝的要素は存在するが、そのような要素を持つ人は高等教育を受けるために婚期が遅れ、また子供を持つ数も少なく、集団の中で減っていく傾向にあることが分かったという。

 まずアイスランドの話からしていこう。アイスランドは、大西洋の北の果てに浮かぶ小さな島国である。面積は北海道より少し大きい程度。人口は30万とちょっと。(ちなみに北海道には550万くらいの人間が住んでいる)。首都はレイキャビク、世界で最北の首都である。そのままの名前通り、氷に閉ざされた、自然の過酷な国だ。

 紀元一千年紀まで、無人島であった。北欧の民が開拓団を何度か送り込み、数度目にようやく成功し、定住者が生まれた。これが西暦900年頃のことだという。今いるアイスランド人のほとんどは、その末裔である。

 さて。なぜ歴史を解説してきたかというと、歴史を述べないと、アイスランドが「遺伝子研究のメッカ」になった事情が説明できないからだ。アイスランド人は、孤立した島国で一千年以上の長きに渡り外部とほとんど交流を持たずに代を重ねてきた結果、世界的に稀な、遺伝的に極めて均等な人類集団となっている。それゆえ、遺伝について研究する上で、非常に適しているのである。

 では今回の研究の話をしよう。この研究は、アイスランドで1910年から1990年の間に生まれた、10万の一般人を対象に行われた。結論については、冒頭に述べた通りであるので繰り返さない。ただし続きがある。

 「だからといって、我々は次第に愚かになっていくというわけではありません」と研究者は言う。「教育に及ぼす遺伝的素因の影響は、20%から40%程度で、あくまでも限定的です。その果たす役割にはおのずと限界があり、社会や環境の要因の方が、全体としては果たす影響力が大きいのです」。