1140億円という巨額な損失を抱えたと報じられたジョージ・ソロス氏(Photo by boellstiftung)

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 1月20日、トランプ政権が誕生した。2016年11月の米大統領選以降、世界的な株高、円安・ドル高が進み、政権始動後のマーケットに注目が集まっているなか、25日にはNYダウが史上初となる2万ドルを突破。

 政権発足でトランプ米大統領が掲げる経済政策への期待感がさらに高まり、株価が上昇している。しかし、明暗が分かれたのが、ヘッジファンド業界だという。

 先日も、世界最大のヘッジファンド「クォンタム・ファンド」の創業者ジョージ・ソロスが、トランプ相場で1140億円もの損失を出したと報じられた。投機的な売買や高度な投資手法を駆使し、常に高い収益をあげるイメージのあるヘッジファンドだが、世界一の投資家、ジョージ・ソロスですら巨額な損失を出したという。いったい何が起きたのか? ヘッジファンド事情に詳しいフィスコ・マーケットアナリストの田代昌之氏はこう話す。

「ソロス氏は、米大統領選挙でクリントン氏を支持していましたが、予想外のトランプ氏の勝利となり、『今後は株安になる』との投資戦略を立てた。その結果、損失額は10億ドル、約1140億円近くに及んだようです。ほかにも、著名なファンドマネジャーであるジョン・ポールソン氏のポールソンアドバンテージは16%減。一方で、ブレバン・ハワード・アセット・マネジメントは11月が好調で、年間パフォーマンスがプラスになりました。また、プロキシマ・キャピタルは11月だけで14%のリターンをあげ、年間44%と好パフォーマンスとなりました」(田代氏)

 同じ投資スタイルのヘッジファンドでもリターンは大きく異なり、明暗が分かれたようだ。

◆「買い目線」のヘッジファンドが今も多数

 投資信託は日経平均などのベンチマークを上回ることを目標にしていて、仮に運用実績がマイナスだとしても、よしとされる。対して、ヘッジファンドはベンチマークを上回り、かつどんな不況時でも常にプラスの「絶対的収益」を追求することを至上命題としている。

「ところが、2016年はS&P500種が9.5%の上昇だったのに対し、ロング・ショート戦略のヘッジファンドは4.3%減と低調だった。これは12月以降の世界的な株高の影響も大きい。ショートを減らし、ロングに軸足を移すポジションを取るヘッジファンドが増えています」(田代氏)

 つまり、まだまだ「強い買い目線」のヘッジファンドも多いということのようだ。さらに、海外投資家の間では「日本株買い」の根拠がもう一つあるという。

「ドル建て日経平均です。11月以降、日経平均は確かに大幅に上がりましたが、同時に円安が進み、ドルベースで見ると日経平均はそこまで上がっていません。海外機関投資家から見ると、日本株は出遅れ感があるのです」(田代氏)

◆海外ヘッジファンドのコンセンサスは「売り」

 1月12日のトランプ氏の大統領就任直前の記者会見以降、円高が急激に進んだが、同時に「売り目線」に転換しているヘッジファンドも増えているという。日本株を中心にロング・ショート戦略を取るヘッジファンドのファンドマネジャー・A氏が語る。

「ドル建ての日経平均はここ数年、140〜160ドルで推移しています。日経平均140ドルで株買い・円売り、160ドルで株売り・円買いのポジションを取ることで利益を生んできました。最近は160ドルをやや上回り、ボックス圏の上限に達している。そのため、売り目線のヘッジファンドが増えています」(A氏)

 また、日本ではあまり報道されないが、海外の報道を見ると、多くのファンドマネジャーのコンセンサスは「売り」だという。

「2016年11月以降の円安・ドル高、世界的な株高の背景には、グローバル・マクロ戦略のヘッジファンドの存在があるように思えてならない。トランプ氏や米政権中枢に近いヘッジファンド関係者がトランプ期待から『ドル高・株高』というマクロシナリオを描き、マーケットを動かしてきた感があります。しかし早晩、調整入りするのではないか」(A氏)