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仮想通貨「Bitcoin(ビットコイン)」の登場によって世に知られることになった技術「Blockchain(ブロックチェーン)」は、インターネットに匹敵するほどの大発明だという評価があります。仮想通貨だけでなく金融や商取引、追跡、データ送信などあらゆる分野に応用される可能性のあるブロックチェーンがどうして重要なのかは、インターネットを支えるTCP/IPになぞらえるとよくわかります。

The Truth About Blockchain

https://hbr.org/2017/01/the-truth-about-blockchain

ビットコインの登場で知られるようになったブロックチェーンですが、仮想通貨と同義ではなく、仮想通貨でも活用できる応用性の高い技術であり仕組みであり概念です。端的に言うとブロックチェーンを利用する一例が仮想通貨ということです。

ビットコインでブロックチェーンがどのように活用されているのかは、以下の記事を見ればわかります。

仮想通貨「Bitcoin」を完璧に理解するために知っておきたいことまとめ - GIGAZINE



ブロックチェーンは「取引(やりとり)」をすべて記録した台帳のようなもので、やりとりが行われる分野であればすべてブロックチェーンの仕組みを取り入れることができます。仮想通貨であればお金(正確には「価値」)のやりとりを、データ送信であればデータのやりとりを行うときに、いつ、誰と誰がどんなやりとりをしたのかを「すべて」記録する台帳がブロックチェーンです。

ブロックチェーンの優れている点は、やりとりを管理する中央集権的な組織や仕組みの存在が不要なところです。やりとりは、インターネットなどのネットワークを通じて共有される点が、既存のやりとりを仲介するシステムと大きく違うところです。みなで共有してそれぞれがリソースを分担することで巨大な取引記録である台帳を維持・管理でき、みなで共有するためやりとりの記録を改ざんすることが事実上、不可能となっています。ブロックチェーンの取引記録を改ざんしようと思えばネットワークでブロックチェーンを共有しているすべての記録を改ざんする必要があり、これは不可能だからです。

改ざんが不可能なブロックチェーンを使えば、コストをかけることなく取引の信頼性を確保できます。例えば、遠隔地の人に送金したい場合、正しい相手であることを確認して指定された正確な金額を送るといったように、やりとりの安全性を担保するため金融機関が仲立ちをしています。金融機関は取引の安全性を担保するかわりに手数料を取っていますが、ブロックチェーンによって改ざんが不可能な取引が保証される仮想通貨であれば中間介在者は不要。中間介在者にコストを支払うことなく、取引する者同士がお金(価値)をやりとりできるというわけです。株式の売買でも同様で、現在は証券会社が仲立ちしていますが、ブロックチェーンを使えば証券会社は不要になります。



主に金融界隈でにわかに活気づいているブロックチェーンですが、ブロックチェーンの応用範囲は金融分野に限られません。やりとりがある世界であればブロックチェーンを活用可能で、これまでお金(手数料)や時間や物理的な位置などやりとりの障害となっていたものが消え、新しい価値やサービスが生まれると考えられています。

ハーバード大学のマルコ・イアンシティ教授とカリム・R・ラカーニ教授は、Harvard Business Reviewに寄稿した「The Truth About Blockchain」という論説で、ブロックチェーンをTCP/IPにたとえて、その価値を説明しています。TCP/IP技術の登場によってEメールが登場し、その後ネットワークはワールドワイドウェブに広がり、いわゆるインターネットの世界が誕生しました。イアンシティ教授によると、ブロックチェーンもTCP/IPのようにオープンで、分散され、共有されるという性質を持っており、インターネットのようにサービスが広がっていくだろうとのこと。このたとえでは、TCP/IPで芽生えた最初のサービスだったEメールはブロックチェーンにおけるビットコイン、というわけです。

TCP/IPは接続コストを大幅に削減することによって新しい経済的な価値を生み出しました。そして、取引(トランザクション)のコストを大幅に削減するブロックチェーンの登場によって、新しい経済的な価値が生まれるとイアンシティ教授は予想しています。

Eメールが誕生したときに、ボタンを押すだけで商品がとどくAmazonのダッシュボタンや、スマートフォンで自動車を手配するUberのようなサービスが誕生すると考えた人はいなかったはず。ブロックチェーンは取引の安全性を担保するという機能だけでなく、過去の行動やパフォーマンスを記録することから、ここから将来起こることを予測することにも活用できると期待されます。ビットコインでの利用形態からは想像もできないようなサービスが今後、生まれる可能性があるというわけです。



イアンシティ教授は、電子メールから現在ある多種多様なインターネットサービスの誕生までに数十年かかったように、ブロックチェーンも同じく長い年月をかけてサービスを生み出していくと考えています。また、ビジネス的な観点では、すでに決済インフラとしての基盤ができつつあるビットコインを決済手法に加えることがその第一歩になると指摘しています。そして、比較的小規模なローカルのネットワークにおける、限られた信頼できる取引との間でプライベートなブロックチェーンネットワークを築き、取引コストを削減するのが次のステップだとのこと。具体的にはダイヤモンド産業で、鉱山から掘り出された原石が消費者にわたるまでの流れをブロックチェーンで管理・追跡する試みが始まってます。

今後10年間に起こるブロックチェーンによる恩恵を最初に受ける分野は、「認証システム」と「マネーロンダリングの防止」だとイアンシティ教授は指摘しています。ブロックチェーンを使ったパスポートなどの公的な本人確認システムが誕生し、お金の流れを追跡してマネーロンダリングを防ぐシステムの登場が予想されています。そして、近い将来、選挙の投開票システムもブロックチェーンで管理され不正な結果改ざんの起こり得ない選挙が保証されることも期待できそうです。

インターネットに匹敵する存在と言われるブロックチェーンが長い年月をかけてさまざまなサービスを生み出す中で、ネット世界におけるGoogleやFacebookのような巨大なプレイヤーが、ブロックチェーンの世界でも誕生するだろうとイアンシティ教授は指摘してます。