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「注射の痛み」「小指をタンスの角にぶつけた痛み」「虫歯の痛み」など、人間はさまざまなタイプの痛みを知っており、それらを避ける方法も認識しています。しかし、人間以外の生き物……犬や猫といったほ乳類や、カタツムリ、タコなどがどのように痛みを経験しているのかは、まだ明らかになっていない部分が多々あります。これまでの研究などから判明している「生き物はどのように痛みを感じているのか?」ということが、ムービーで公開中です。

How do animals experience pain? - Robyn J. Crook - YouTube

私たちは生き物と一緒に暮らしたり、食べるために育てたり、科学に貢献すべく実験の対象にしたりと、生き物とさまざなま関わりを持っています。人間の生活にとって生き物は非常に重要であり、それゆえに不要な痛みを感じさせないことも大切です。



ほ乳類である犬などは人間と共通する部分があるので、痛みについてわかっている部分もあります。例えばボールを踏んで犬が転んだとします。





こんな時、人間と同様に痛み止めが有効になります。



しかし、エビやヘビ、カタツムリの痛みについてはどうでしょうか?



このことを理解するにはまず、人間を含む脊椎動物が感じる痛みについて理解する必要があります。



痛みが生まれるプロセスには大きくわけて2種類あります。まず、神経や肌が痛みを感じ取った場合。



このとき、痛みの情報は神経を通って……



脊髄にまで届きます。



すると運動ニューロンによって、私たちは脅威の対象から離れるように動かされます。これを侵害受容と言います。



痛覚は単純な神経系を持つ多くの動物が経験するもの。痛覚がなければ生物は自分におよぶ危害を避けて生き延びることができません。



また、人間には痛みに対する「意識的な認識」が存在します。



これは肌にある感覚ニューロンが脊髄から脳をつなげ……



体のさまざまな場所から痛みの感覚が作り出されます。この痛みは恐れ・パニック・ストレスといった「感情」とも関わっている複雑な経験です。



自分自身の「感情」を人間に示さない生き物も多いので、生き物が痛みを認識しているのかどうかは難しい部分です。



しかし、動物を観察することで、この問題を解くヒントが得られます。傷を負った野生動物は自分で傷を治療し……



痛みを解放するために鳴き声を上げ……



体を隠すことで知られています。



また、研究によって、鶏やラットといった動物は傷を負っている時に鎮痛剤を得る仕組みを与えられると、自分で鎮痛剤を投与することも分かっています。



さらに、車が通る前に道路から離れるなど、痛みを避ける行動も見られます。自分に危害を与える脅威が何なのかを認識しているのです。



上記のように、これまでの研究の数々から、脊椎動物は痛みに反射的に反応するだけではなく、痛みを「認識」することが判明しています。そのため、多くの国々で動物を不要に痛めつけることが違法となっています。



しかし、一方で、無脊椎動物を守る法律は存在しません。無脊椎動物の行動は感情が読みにくいためです。



カキ・芋虫・くらげなどは脳がないか、あっても非常に単純な仕組みです。



レモンを搾られるとカキは侵害受容によって体を縮めますが……





単純な神経系を持つため、動物のように「痛みに対する認識」をしないものと考えられています。



脊椎動物の中には、タコのように、もう少し体の仕組みが複雑なものもいます。タコは脳が発達しており、最も知能が高い無脊椎動物の1種です。



しかし、多くの国で生きたままのタコを食べるという慣習が残っています。



同様にザリガニ・エビ・カニなどを生きたままゆでるという方法も取られていますが、生きたまま調理されるということが無脊椎動物にどのような影響を与えているのか、本当のところはまだ分かっていません。もし人間がこれらの生き物に不必要な痛みを与えているとしたら、倫理的な問題になります。



2009年に発表された研究論文には、ヤドカリに電気ショックを与えるという実験をしたところ、電気ショックを与えられなかったヤドカリは自分の殻に留まり続けるのに対し、電気ショックを与えられたヤドカリは殻から離れたこと、そして、殻から出ない程度の電気ショックを与えた場合は、新しい殻を与えるとそちらに移ることが多かったことが記されています。これは、人間で言えば「食べ物の入った熱い皿は持ち続けるが、空であれば落とす」という行動に当たり、単なる反射ではないと説明されています。



このほかにも、タコは傷ついた触手を保護するためにカールさせますが……



獲物を捕らえるためには触手を使う、というリスクを冒します。つまり、無脊椎動物も単に痛みに反射的に反応しているのではなく、自分の感覚を評価して行動しているわけです。



電気刺激を受けたカニは、電気刺激を受けた場所を繰り返しこすり……



ウミウシもまた、有害な刺激を受けるとわかると、体をひるませます。これらはつまり、無脊椎動物が体の感覚について記憶を持っているということ。



生き物が感じる痛みについては、まだわかっていないことが多く存在しますが、研究が進み、知識が広まれば、不要な痛みの存在しない世界が実現できるかもしれない、とムービーは締めくくられています。