米国が凪の海を漂っていた時代は終わり、これから荒波の水域に突入する(写真はイメージ)


 米国が世界で果たしてきた役割を見ると、これまでの25年ほどの間、米国はいわば「休日」に等しかった。だが、トランプ政権の登場はそんなゆとりを許さない「休日の終わり」とも呼べる歴史の転換点となる――。

 米国の保守派の大物論客が、トランプ政権誕生の歴史的な意義についてこんな分析を発表した。

世界と米国が迎える特別な変革の時期

 米国の保守系政治雑誌「ウィークリー・スタンダード」1月号は、ウィリアム・クリストル編集長による「長い休日」と題するコラムを掲載した。

 クリストル氏は1980年代のレーガン政権の時代から、米国の内政や外交の諸課題を保守主義の立場から論じてきた。「ウィークリー・スタンダード」を主宰する一方、レーガン政権の教育省高官を務めたほか、ブッシュ政権ではディック・チェイニー副大統領の首席補佐官ともなった。トランプ氏に対しては直接の支援は表明しないが、多角的に論評し一定の評価をしている。

 クリストル氏はこのコラムで、トランプ氏が大統領に選ばれた背景を歴史的に読み解く。つまり、米国という国家と米国を動かす国際情勢が、この100年近くの中で特別な変革の時期にあることがトランプ大統領登場の大きな要因なのだという。

 クリストル氏はこの100年を次のように概観する。

 1991年以前の4分の3世紀の間、つまり75年ほどは、世界も米国も激動の時代だった。1918年に終わった第1次世界大戦、その後の1929年から始まり1940年近くまで尾を引いた世界大恐慌、その時期に開始された第2次世界大戦、さらにその直後から続いた東西冷戦の時代である。

 だが1991年にソ連共産党が解体し、東西冷戦が西側の勝利で終わって以来、世界には根本が揺さぶられる脅威や危機はほとんどない状態である。その意味でこの四半世紀の25年は、世界も米国も長い「休日」を過ごしてきた。

 1991年以降、米国および世界各国には、2001年の米国での同時多発同時テロやイスラム過激派の跳梁などがあったものの、それ以前の世界大戦などに比べれば大したことはない。これまでと変わらない船に乗って、あまり心配のない航海を続けてきた。

 米国はこの25年ほどの間、ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ、バラク・オバマというベビーブーム世代の大統領によって統治されてきた。そこに、新たに登場したのがドナルド・トランプ氏だ。やはりベビーブーム世代ではあるが、まったく異端の最高指導者である。

 この25年間の米国の漂流の時代、つまり長い休日は、トランプ大統領の登場とともに終わりを告げることになる。米国という船は漂流を止めて、荒波の水域へと入る。正しい航路を進むのか、あるいは失敗して船が転覆するのかという重大な岐路にさしかかりつつある。

 クリストル氏は、世界や米国が激動の時代を迎えたのは、中国の軍事攻勢的な膨張、ロシアのクリミアへの強引な領土拡張、米国内の人口動態や社会構造の激変などの結果だという。こうした状況が、米国の大統領選挙でも従来の政治的枠組みを破ってトランプ氏当選という“非常事態”をもたらした。

 つまり、ここ25年ほどの凪や停滞が終わったことで、トランプ氏という異端の人物が新リーダーとして押し上げられたのだと、クリストル氏は論評している。

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筆者:古森 義久