本当にホームレス? ニューヨークで
家なし生活を送るマーク・レイ

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 ニューヨークで家を持たずに生活する52歳のファッションモデル兼フォトグラファーを追ったドキュメンタリー「ホームレス ニューヨークと寝た男」に出演したマーク・レイが来日した。“家なし生活”を6年間も続けるレイだが、必要最低限の物しか持たず、何にも縛られないその人生を語る姿に悲壮感はなく、むしろユニークで創造的だ。究極のミニマリストで自由人とも言えるレイに話を聞いた。

 レイ自身が、友人でもあるトーマス・ビルテンゾーンに、レイのライフスタイルを撮ることを提案し、映画化が決定。音楽をクリント・イーストウッドの息子で、ジャズミュージシャンのカイル・イーストウッドが担当し、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭2014ではメトロポリス・コンペティション審査員賞を受賞した。

 本当はホームレスではないのでは?と、思わず尋ねたくなるような、華やかなオーラを持つレイ。「そういう風に言われることはとても多いんだけれど、映画を見てもらえれば真実が映し出されているから、信じてもらえると思う。自分は執筆もするし、役者でありストーリーテラーなんだ。だからこそ、自分の体験はディテールに富んだ豊かなものがあって、みんなが興味を持つような一風変わった物語になるんだ」と、セルフプロデュース力の高さを見せつける。

 「特に、今のエンターテインメントは弁護士や医者や刑事が主役の話ばかりだから、それとは違ったストーリーを見せられると考えたんだ。これまでは裕福な人たちがクローズアップされていたけど、今の時代は僕のように貧しくて、無名の人が主役を張るべきなんだよ(笑)」

 長年のホームレス生活を続ける上で、心身ともにつらいことはないのだろうか。「体調を崩すことはあるけど、僕は比較的健康なんだよ。野生動物みたいなんだ」と笑う。そして、精神的な支えになったのが「この生活が何かの物語につながるんじゃないかという信念」だという。

 レイの人生は特異ではあるが、住んでいる世界は一般人と変わらないと強調する。「僕がモデルや役者や写真家であるということで、普通の人は共感できない部分があるかもしれないけれど、僕の体験していることは、とても普遍的なことだと思う。仕事は成功する可能性の低いものばかりだしね。工場やオフィスでの仕事と置き換えてほしい。ある日突然失職することだってあるし、多くの人がギリギリの生活をしていて貯金もなかったり、社会によってはセイフティーネットもなかったりする、僕が住んでいるのもそういう世界だ」

 ホームレス生活を始めてから、人生の方向性がジョージ・オーウェル、ヘンリー・ミラーら好きな作家たちの精神性と似ていると感じ、クリエイティブな人生だと自負している。「良質なアートは痛みから生まれると思っているんだ。特に音楽、文学、絵画はカタルシス的な行為だと思うから。もし大恋愛の真っ最中だったら、一人でこもって制作はしないだろ。だから、厳しいときほど、クリエイティブな人間であれば、いろんなものが作れる時期と捉えることが重要なんだ。僕は幸運なことに、一番厳しいときでも、僕は、状況を面白がれる気持ちを持っていた。この生活に面白い物語があり、それをみんなにシェアしたいと思えた。それがアドバンテージだったんだ」

 現在は俳優として所属するエージェントを探す日々だそう。「僕のジレンマの解決法は一風変わっていたけれど、誰にでも起き得ることだと考えてみてほしい。だから、この映画の僕を見て、どんなにきついことがあっても生き延びて前に進めるんだと感じてほしい」とメッセージを寄せた。

 「ホームレス ニューヨークと寝た男」は公開中。