養子縁組、アメリカでは年間5万人、日本はたった500人(http://jp.depositphotos.com)

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 世界一の少子化先進国、日本。晩婚化が進む中、自ら子どもを持たない選択をする夫婦がいる一方で、6組に1組の夫婦が不妊に悩む。全国で不妊治療を受けている患者は推計50万人にものぼるという。

 ならば、養子という選択肢がもっとあってもいいのではないだろうか。

 養子縁組制度には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類がある。前者は主に家を継がせることを目的とするのに対し、後者は何らかの事情で親が養育できなくなった6歳未満の子どもを、違う家庭で家族として迎えるための制度だ。

 新しい家庭の家族になるためには、実親との関係を法的に断ち切ることになり、戸籍上にも実子として記載される。実親からの相続権や、実親の扶養義務もなくなる制度だ。

日本では親に恵まれない子の85%が施設へ

 「特別養子縁組」は海外では一般的であり、アメリカでは毎年5万人以上、イギリスでは4500人以上の子どもたちがこの制度のもとで養子になっている。

 しかし日本では、年間500人に満たない。親に恵まれない子の85%は、乳児院や児童養護施設などで暮らしているのが現状だ。

 日本で特別養子縁組が進まない理由はさまざまあるが、そのひとつとして法律上の「親権」の強さが指摘されている。実質的に養育放棄の状態にあっても、親に親権を手放させるだけの明確なルールがない。

 一方、子どもが欲しいと考える側も、養子縁組には二の足を踏む人がまだ多いのではないだろうか。血のつながりのない親子のネガティブな面がクローズアップされがちな日本では、養子を本当に愛せるのか、不安に感じる人も多いのだろう。

 しかし、そうした先入観は改めるべきかもしれない――。

 昨年、日本財団が、養子縁組によって迎えられた養子へ初めて行った意識調査によると、彼らの「自己肯定感」は一般家庭の子どもたちより高かったのである。昨年末に発表されたこの結果は、多くのメディアに取り上げられた。

養子の「自己肯定感」は普通の子の2倍

 調査対象は、民間2団体のあっせんで養子縁組した263世帯。昨年8〜9月に調査し、10〜17歳の子ども89人が回答した。2団体は養親に対し、子どもに養子縁組であることの告知を促している。

 その中で「自分自身に満足しているか」という質問に対し、「そう思う」と答えた子どもは25.8%。さらに「どちらかといばそう思う」を含めると70.7%に達する。

 それに対して、平成23年に内閣府が全国の中学3年生を対象にした調査(平成23年度 親と子の生活意識に関する調査)では、同じ質問に「そう思う」と答えた子どもは12.5%。「どちらかといえばそう思う」を足しても46.5%にとどまり、養子縁組をした子どもの自己肯定感の方が高い傾向にあった。

 さらに「親から愛されていると思うか」という質問については、養子縁組された子どもたちは63.5%が「そう思う」と答えている。一方、全国の中学3年生で「そう思う」と答えたのは45.5%。この質問でも、養子縁組をした子どもの方がより愛情を感じているという結果になった。

 もっとも今回の日本財団調査と内閣府の調査では、対象年齢もサンプルの規模も違うため、単純に比較はできない。それでも、養子である子どもたちの高い自己肯定感を示した結果は、養子に対する世間一般のネガティブなイメージを払拭するには十分ではないだろうか。
養子縁組の家庭は子育てに積極的

 日本財団は調査のまとめとして、養子縁組家庭の子どもに自己肯定感が育まれやすい理由を次のように考察している。

 まず養子縁組家庭は全国調査と比較すると「子どもと夕食を共にする頻度」や「子どもが小さいころに絵本の読み聞かせをしていた割合」「子どもが自然に触れる機会を作っている割合」などが軒並み高い。

 また、特別養子縁組家庭の平均年収は約727万円で、全国平均の約571万円と比較して高く、生活面に不安を抱えているケースがほとんどない。それに伴い、塾代などの教育投資も一般世帯よりも高くなっている。

 また養子縁組団体の方でも、養親収入水準や子どもへの関与度合いをある程度考慮に入れてマッチングを行っていること。さらに養子を希望する夫婦の多くが、長期間の不妊治療を経て子どもを待ち望んでいること、また子どもが一人だけである場合も多いことから、子どもの養育に積極的な家庭が多いのではないかと推測している。

すべての子どもが温かな家庭で育つ社会に

 今回の結果から、養子である子ども達は決して「かわいそうな存在」などではないことがわかる。そして改めて浮き彫りにされるのは、さまざまな事情で生みの親の元で暮らすことができなかった子どもたちに、安定した家庭を提供することの重要性だ。

 国連のガイドラインでは、養子縁組や里親制度を通じて家庭で暮らすことが望ましいとされているが、家庭の事情で生みの親と暮らせない子どもたちは、日本にはまだ4万人もいる。

 政府はこれまで特別養子縁組を広げていく積極的な政策を取っていなかった。が、ようやく2016年6月に改正児童福祉法が公布され、生みの親が養育できない子どもは、養子縁組や里親・ファミリーホームなど一般家庭と同じ養育環境で、継続的に養育されることが原則となった。

 また、これまで養子縁組は児童相談所の業務として明確に位置づけられていなかったが、法律の改正により児童相談所が取り組むことになった。さらに、増え続ける望まない妊娠や貧困の問題を受け、新生児の養子縁組に取り組む自治体も出てきている。

 特別養子縁組が「特別」なものではなくなり、子どもが欲しい夫婦が自然に一歩を踏み出せる。そして、すべての子どもが家庭で当たり前に育つことができる。そんな世の中を実現するためにも、制度の整備と人々の理解が深まることを願いたい。
(文=編集部)