―――大会が終わってみての感想はいかがでしょうか?
 
「充実感はありますが、思ったよりも簡単じゃないなということですね。しっかりとした大会運営が出来て、TRUE(タイ有料テレビ番組最大手)で全試合が放映され、DAZNで日本国内へも配信された点では最低限の目標はクリア出来たとは思っていますが、ファンがスタジアムに集まり難い状況になってしまった点は反省点だと感じています」
―――その集客できなかった理由は何だと感じていらっしゃいますか?
 
「必ずしもアクセスが良いとは言えないラジャマンガラで、平日午後4時からのダブルヘッダーを組まなければならなかった物理的な環境面の制約があった中で、プロモーションに力を入れられなかったことも大きかったと感じています。しかしこれがJリーグのタイでの現在地なんだなという良き発見にもつながったので、来年以降に活かしていきたいとは思っています」
 
―――なるほど。ではポジティブな点はどのようなことでしょうか?
 
「2月の新シーズン開幕を控えたこの時期に、多くのスタッフがタイへ来て、タイリーグ協力のもと限られた日数の中で普段と変わらない大会運営を行えた意義は大きかったです。私どもの強みである運営ノウハウの部分をアジアで示すことができたとも思っています」
 
―――今後のアジア展開や展望をお聞かせいただけますか?
 
「今までのクラブ間提携交流等で得た成功事例や教訓を、今後のクラブ間交流の接点を増やすためへの落とし込みだったり、タイリーグとJリーグとのコミュニケーションの総量をより増やしていきたいと思っています」
 
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 試合後の記者会見、この大会へ参加出来た感謝の気持ちを述べる監督が多かったことが印象に残っている。現場レベルとして、実り多き大会になった表われだろう。
 
 またタイ代表でスパンブリーFCのシャリル・ヤニス・シャプイ(7番/父がスイス人で母がタイ人のハーフ)へ「気になった日本人選手はいた?」と問いかけると、「日本人は本当にみんな上手いよね。それはいつも感じるよ。中でも強いて挙げるならば、横浜の17番(富樫敬真)は印象に残っている。彼もミックスなんでしょう?」と、タイで無類の人気を誇るビジュアルスターとして、茶目っ気めいたプライドを見せた表情には少し笑ってしまったのだが。
 
 東南アジアでは隣国チームとのテストマッチが頻繁に行なわれている。昨今「JリーグチームはACLで勝てない」と議論されることが多いなか、地理的なアドバンテージやコスト面の影響はあるが、アジアで勝ちたければ海外での場数を増やすべきというのが筆者の持論である。どんどんアジア修行へ出て行ってほしい。プライドと一緒に謙虚な気持ちも携えて。
 
取材・文:佐々木裕介(フリーライター)