サンプル定期便のバーチボックス、実店舗で海外進出へ パリに今春オープン

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定期的に化粧品サンプルを会員に届ける電子商取引ビジネス、バーチボックスのカティア・ビーチャム最高経営責任者(CEO)は2017年の抱負について、「これまで以上に顧客とのつながりを深めていくことだ」と語る。

ビーチャムが2010年に共同で創業した同社は、契約した化粧品会社のサンプルを会員に毎月送付するサービスで成長。会員数は世界全体でおよそ100万人に達し、これまでにベンチャーキャピタルから8,000万ドル(約92億円)の調達に成功した。

ただ、このうち昨年8月に調達した1,500万ドルは、数年前から市場の飽和と採算性の悪化に直面していた「定期宅配」というサービスモデルへのてこ入れに充てるのが目的だった。そのバーチボックスが今、近い将来に見据えているのはどのようなものだろうか。

「心地よさ」を与えるブランドへ

ビーチャムは、「ウェルビーイング(幸福)」を目指すことは今後、ストレスへの対抗手段ではなく私たちの「生き方」に変化していくと考えている。最高に調子が良い状態維持することは、自分自身という「全体」を意識する感覚を持つことになり、その意識は私たちに、先行きが不透明なこの時代にも「何かにしっかりと根付いている」という感覚をもたらしてくれるのだという。

また、ビーチャムによれば最近では、「活力にあふれていること、幸福であること」を競争上の強みと捉える女性が増えているという。女性たちのそうした変化によって、美しさのためにお金を使うことは外見を良くすることであると同時に、「心地よさ」を手に入れることにもなっている。

「消費者は、そのブランドについて前向きな気持ちを持っていなければ、商品を購入しようと思わない。企業と感情的なつながりを持ちたいと考える傾向が消費者に目立ち始めたのは数年前からだ。今年はそうした気持ちが企業への期待に変わると考えている」

ソーシャルメディア時代の小売業

同社が起業した2010年は、ソーシャルメディアを通じて消費者が直接、企業幹部と接することができるようになった年だった。

ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン会長やテスラモーターズのイーロン・マスクCEOといった企業トップがオンラインで消費者と直接やり取りをするようになり、ブランドは進んでソーシャルメディアを活用するようになった。そして、消費者は利用するブランドの価値を理解したいと考えるようになり、透明性を求める声が高まった。

「Z世代は企業側に消費者が直接アクセスすることや、フィードバックすることができなかった時代を知らない。そして、ネットを通じた向こう側に、(自分の声を)気にかけてくれる誰かがいることを期待している」とビーチャムは語る。

そうした中で、同社は消費者から話を聞き、彼らについて学んできた。そして明らかになったのは、ブランドとは扱う製品だけではなく、非常に多くのものを意味するものになっているということだった。

また、誰もが「美」の専門家であるようにもみえる一方で、同社がその美について学んだ最大のことは、大半の女性たちにとって化粧品などの購入は「簡単ではない」ということだった。選択肢は多く、効能も多岐にわたる。魅力的だと思える価格も、人によってさまざまだ。

バーチボックスの成功を決定付けたのは、こうした本質的なことに対する理解だった。定期宅配というサービスモデルは、化粧品などを買いに行きたくないという女性たちの気持ちに訴えた。多くの女性たちが、ネット上で検索して色々な製品について調べ続けることよりも、実際に届くサンプルを試してみることを選んだのだ。

「今言えるのは、小売業界がこれまで従ってきたプレーブックは使わないということだけだ。デジタル世代の企業として、私たちには新たな規則を打ち立てる機会が与えられていると思う」

海外進出を発表

バーチボックスは先ごろ、ニューヨークにある実店舗に続き、パリに今春新たな店舗をオープンする計画を発表した。実店舗での販売は同社にとって、買い物客たちから直接情報を得るための効果的な方法だ。

ビーチャムはパリ店開設の目的を、「ブランド経験を生きたものにすること、定期購入を契約している会員たちとの関係を深めると同時に、新たな顧客を獲得すること」だと話す。その他の都市にも新店舗を開設する予定で、時期や進出する市場、新店舗の形態について検討中だという。