中国で公開された日本映画として歴代最高の興行収入を記録した『君の名は。』
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 中国でも大ヒット上映中の映画『君の名は。』。昨年12月2日の公開以来、95億円以上の興行収入を上げている。東宝株式会社国際部の菊地裕介氏は「2015年秋に海外セールスを開始した当初から好感触ではありましたが、ここまでヒットするとは思っていませんでした」と言う。中国市場を意識したハリウッド映画の製作が増加するなか、『君の名は。』のヒットで日本映画も巨大市場への活路を見い出せるのか、その影響を探った。(新田理恵)

■新海誠監督の高い人気が着火点

 中国でヒットした理由について、新海誠監督の人気が現地で既に高かったことを挙げる。「新海監督の作品が、イベント上映などではなく、中国全土で一般公開されたのは今回が初めて。かつ、日本公開からそれほど時間を置くことなく上映できたこともあり、もともとあった新海作品への熱に火がついたと考えています」。中国東北部に住むアニメファンの20代女性は「中国のアニメファンの間では、宮崎駿監督や新海監督はとても有名。微博(ウェイボー、中国版ツイッター)などで情報を得てネットで観ています。とりわけ新海監督の作品は、『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』など、リアルな映像美で人気がありました」と語る。

■日本の人気コンテンツに熱視線

 『君の名は。』のヒットを機に、中国からのアプローチが増えたと菊地氏は言う。「日本のアニメに対する見る目が変わってきた。これを皮切りに、いろいろな作品を出していけるチャンスが増えたのかなという気がします」。昨年、中国で公開された日本映画は11本。そのうち9本がアニメだが、実写映画にも引き合いは来ている。やはり、漫画やアニメなど、日本の人気コンテンツへの関心が高いようで、「原作が日本でどのくらい人気なのか、それは中国でも人気があるのかどうかといった問い合わせがありますね。東宝が日本で一番大きい映画会社だというのは中国でも知られているので、当社が持っているメジャーな作品を求めてきているのだと思います」。

■外国映画「公開枠」の壁。信頼できる現地映画会社の存在がカギ

 ただ、中国ならではの難しさも。「検閲があるので、性的な描写やバイオレンス、同性愛を扱った作品は難しい。あと、外国映画は公開本数の枠が決まっているので、そこに入り込めるかどうか。その枠を持っている(中国側の)いい会社と出会えるかどうかが大事ですね」。

 中国の映画輸入のシステムには、「分帳」型(利益配分方式)と「買断」型(版権買い切り方式)の2つの方法があり、分帳型は年間34本、買い切り型は30本程度(ただし2016年は47本)と枠が決まっている。従来の買い切り型は、中国の映画会社が固定の価格で中国国内の配給権を買い取り、興行成績のいかんに関わらず売った側にリターンはない仕組み。「『君の名は。』は、どちらの区分けになるかは詳しくは言えませんが、ヒットすればリターンは入ってくる形になっています」と菊地氏。中国メディア「証券日報」によると、「作品によって分配比率の契約は異なるが、質の高い作品を配給するため、最近は買い切り型でも利益配分を行うケースが増え始めた」という。『君の名は。』は、そうした特殊なケースだ。

■『君の名は。』ヒットで政府も動いた

 2016年の中国の映画興行収入は前年比3.73%増の457億1,200万元(約7,743億円)。48.7%増という驚異的な伸びを見せた2015年と比べると鈍化はしたものの、日本の約3倍の市場がある。昨年末には、日本映画の海外展開を政府が後押しするための具体策の検討会が開かれ、また、日中政府間で日中映画共同制作協定の締結に向けた話し合いも始まった。『君の名は。』のヒットにより、巨大市場を狙った取り組みが本格化している。