大友啓史監督と、原作キャラそのものなキャスト陣
 - (C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

写真拡大

 神木隆之介が伊藤英明に殴られ鼻血を流す--そんな衝撃的なシーンの撮影が、2016年5月12日に東京・雪ヶ谷八幡神社で行われた。原作は、羽海野チカのベストセラーコミック「3月のライオン」。『るろうに剣心』シリーズなどで知られる大友啓史監督が、前後編2部作で実写映画化する。

 本作は、天賦の才を持つプロ将棋棋士・桐山零が、心の傷を抱えながら勝負の世界で生きる中で、同じ下町に住む川本3姉妹らとの触れ合いを通して成長していくさまを追う人間ドラマ。この日は初詣のシーンが撮影され、零役の神木、後藤正宗段の伊藤、零の義姉・幸田香子役の有村架純、川本3姉妹の長女・あかり役の倉科カナ、次女・ひなた役の清原果耶、三女・モモ役の新津ちせら豪華キャストが集結した。

 神木はベージュのロングダッフルコートに薄ピンクのマフラー、伊藤はスーツにシックなコート、有村はベージュのトレンチコート、倉科ら川本3姉妹はかわいらしい着物姿という冬の装い。しかし、当日の気温は20度超え、半袖姿のスタッフもいるほどの暑さだ。合間には神木と有村が談笑する姿も見られたが、撮影では零と後藤、香子たちが対峙する緊迫した場面が進行していた。

 このシーンは、やきそばやあんず飴などの屋台が立ち並び、お正月ののどかな風景が広がる中、おみくじをひいた川本家と零が鳥居の下を歩いてくるカットからスタート。後藤と香子を発見し、人込みを掻き分けて香子の腕をつかむ零。香子がその手を振り払い、「今日くらい、家族で過ごさなきゃ」という零に冷たい言葉を浴びせかけるも、零は後藤に向かって香子との関係を終わらせるよう迫るという、緊張感あふれる場面が展開する。豪快で肉体派なイメージが強い伊藤だが、「繊細な嘘のない芝居をする」と監督が語るように、本作では勝負師の力強さがありながら、妻が病弱なことを隠して香子と接するという強弱の必要な難役を、その繊細さを生かして丁寧に演じている。

 そして次の瞬間、零の批難の言葉を聞いた後藤はいきなり殴りかかる! 男たちが火花を散らす姿にモニターを見つめる監督も熱が入り、張りつめた空気が現場に漂う中で、俳優陣の迫真の演技は続く。

 心配する川本家を脇目に、零に対して大声で残酷な言葉を口にする香子。ある種悪女ともいえる、これまでのイメージにはない役を生き生きと演じる有村の新境地も、本作の見どころの一つだろう。去っていた香子に続いて「今日は帰ります」と告げる零を川本家が見送る場面までが、長回しで一気に撮影された。

 この場面でカギとなっているのは、「家族」という存在だ。「家族」を一つのキーとして、自身の居場所を獲得しようと必死にもがく登場人物たちの苦悩と奮闘が本作の根底には流れている。原作を「ユートピアなんてないから、人間は一人で、自分の足で立つしかないんだという物語」と話す谷島正之プロデューサーは、「観る者を八つ裂きにするような残酷な映画にしたいんです」と力を込める。そして、「その先に幸せっていうのはこういうことだよねっていうことを感動的にダイナミックに見せたい」と本作のビジョンを明かしていた。(編集部・吉田唯)

映画『3月のライオン 前編』は3月18日、『3月のライオン 後編』は4月22日より全国公開