韓国国民が早急な事態究明を願う朴槿恵問題

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 過去に彼らが立ち上がったのは11回。2003年の対北朝鮮送金疑惑、2012年の李明博前大統領の私邸用地不正購入疑惑…韓国を揺るがす大事件のたび、彼らの姿はそこにあった。

『特別検察チーム』、通称『特検(トッコム)』。彼らは大統領や司法関係者、検察の同僚などがかかわる、政権がらみの重大スキャンダルを捜査するための特別チームだ。チームの構成員は、弁護士や検事などさまざまなキャリアを持った精鋭たち。活動期間があらかじめ決まっていることも特徴だ。今回は、準備に20日間、捜査に最長100日間、合計120日間が与えられた。

 弁護士として活躍していたパク・ヨンス(61才)が特別検察官を務め、彼を特別検察官補4人が支える。その下に検事や弁護士などのキャリアを持つ検察官約100人がチーム一丸となって、今、韓国最大の疑惑に挑んでいる。

 2016年10月31日、実業家を名乗る中年女性、チェ・スンシル(60才)が緊急逮捕された。肩書は実業家でシャーマン、そして韓国大統領、朴槿恵(64才)の大親友。その彼女が外交や北朝鮮対策などにかかわる国家機密や、大統領の演説文を受け取り、国政に深く介入していたことや、政治資金を流用したことが逮捕理由だった。

「苦しい時にも助けてくれたから、何でも相談できる間柄だった」

 両親を暗殺され、信用できる人間がいなかった朴槿恵は、そう言って彼女を擁護し、アドバイスをもらってはいたものの、疑惑そのものは否定した。しかし、事態は収束するどころか、この逮捕を発端に韓国を揺るがす一大スキャンダルへと発展している。

 チェ・スンシルの娘、チョン・ユラの名門女子大不正入学疑惑、サムスンやロッテなど大財閥の不正献金疑惑、そして朴槿恵が公費で整形や美容注射を打っていた疑惑などが相次いで浮上。ついには2014年4月16日、セウォル号沈没事故の当日、整形の施術を受けていたのではないかという疑惑まで飛び出した。

「悲劇のお姫様から一転、とんでもない女に国政を任せてしまっていた…」

 戸惑い、怒れる国民たちは朴槿恵の退陣を求め連日デモを行った。その声に押されるように、2016年12月9日、国会で朴槿恵の弾劾訴追案が可決した。これは2004年の盧武鉉大統領以来、2人目となるものだ。

 今回の弾劾訴追案は憲法裁判所で審議され、訴追案可決から180日(6月6日)以内に判断が下されるものの、朴槿恵側が「弾劾される理由はない」と徹底抗戦の構えで、今も大統領官邸「青瓦台」で暮らしている。

「私たちは真実が知りたいだけなんです。この国はいつからこうなっていたのか? ただでさえ北朝鮮の脅威にさらされているなか、国の代表はいったい何をしていたんでしょうか? それを知る権利が、私たち国民にはあるはずなんです」(40代主婦)

 そんな国民の期待を背に、2016年12月21日、特検は立ち上がったのだった。

「国民経済等に及ぼす状況も重要だが、正義を立てることがますます重要と判断しました」

 パク・ヨンスの右腕ともいえる、特別検察補佐であるイ・ギュチョル氏(53才)は、眼鏡の奥に熱い闘志をたたえたまなざしで韓国国民の胸に訴えかけている。彼は今や「コート王」と呼ばれ、その一挙手一投足が注目を集めているヒーローだ。

 慰安婦問題で再び緊張状態の日韓関係。しかし、韓国の地で国民が一刻も早く事態を究明してほしいと願っているのは、朴槿恵問題にほかならない。そのスタンスに違いはあれど、学生から老人まで、すべての国民が政治と向き合っている。

 2人集まり口を開けばこの問題。それゆえなのか、この問題を報じるジャーナリストや記者の間には『暗殺説』なるものもまことしやかにささやかれている。

 捜査の手は、大財閥・サムスンや現職閣僚にも伸びている。そのたびに喝采をあびる特検の中で、今主婦たちのハートを熱くさせているのが、イ・ギュチョル氏だ。

「コート王、今日はキャメルだったわね」
「私はサムスンの人を捕まえた時の黒いコートとマフラーの組み合わせがシックでとっても素敵だと思ったわ! 『経済よりも正義!』と言い切ったのもかっこよかったし」

 彼の役割は、捜査の内容を国民に伝えるスポークスマンだ。

「会見の言葉がものすごく熱くて、心に響くしコートとマフラーの組み合わせも渋い韓流スターみたいに完璧。だけどたまに水玉のお弁当袋とか、ピンク色の水筒を持って事務所に入って来るんです。ああ、きっといい奥さんがいるんだなあ、家族を大事にする人なんだろうなあって思ってほっこりします」(ソウルの主婦)

 もちろん、見た目やキャラクターだけではなく経歴や人格もパーフェクト。コート王として活躍する前の弁護士時代には、「依頼人と信頼関係を築いて、少しでも心の負担を減らしたい」をモットーに、依頼人が必要な時はいつでも電話やときには直接会いに行って相談に乗る、親身な弁護士として評判だった。また、連日事務所に詰めている記者たちへの神対応も話題になっている。

「捜査に会見にいろいろ忙しいはずなのに、毎朝来る記者からの電話取材に、すごく丁寧に対応していると聞きます。それだけじゃなくって、たまに見せるお茶目さがたまらない。例えば、去年のクリスマスイブも当然仕事で、いつものように朝の電話対応をしたあとに、イブだった、って気がついたみたいで、その後の記者会見で『イブだとすっかり忘れて普通の挨拶をしてしまいました』って謝ったそうです。だって、イブといってもキム・ヨンジェ医師の家宅捜索4日前でしょ? 余裕がなくて忙しいはずなのに」(50代主婦)

 しかし、だからこそ、国民の脳裏には、これまで胸をドキドキさせて見てきたドラマのさまざまなシーンが蘇る。

「ドラマや映画だったら、次に標的になるのは彼ですよね…? これだけ多くの人が暗殺されているといわれているなか、彼は大丈夫かしら…漢江に沈められたりしないかしら…」

「お弁当を作ってくれている奧さんや子供が誘拐されなければいいけれど」

※女性セブン2017年2月9日号