2035年の夜間人口と生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口層)の増減を、東京都市圏の鉄道沿線別に予測したもの

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 昨年12月22日に厚生労働省が発表した2016年の人口動態統計の年間推計によれば、統計を取り始めた1899年以降初めて、出生数(1年間に生まれた日本人の赤ちゃんの数)が100万人を割り込むという。少子化に歯止めがかからない状況だ。

 そんな少子化を背景に、空き家問題がこの2、3年でいっきに顕在化してきた。親が亡くなったり、介護施設に入所するなどして、空き家になってしまった実家をどうすべきか頭を悩ませる人はますます増えている。

 では、空き家はどうすべきなのか。あるいは、将来空き家になりそうな物件についてどう考えるか。

(1)子どもの誰かが住む、(2)賃貸に出す(誰かに貸す)、(3)売却処分する、と具体的にはこの3つしかない。そのまま放っておくのは、固定資産税がかかるうえに維持管理費もかかるので、マイナスでしかない。しかし、「思い出があるから手放したくない」といった感情的な理由もあって、なかなか決断できない人が多いようだ。

 不動産コンサルタントの長嶋修氏はこう語る。

「判断する上で重要なのが、その空き家が“どこにあるのか”ということ。不動産の価値は、一にもニにもロケーション。どんなに立派な建物でも、売買や賃貸のニーズがないところであればその価値はゼロ。建物が使えなくなって解体費が発生することを踏まえれば、むしろマイナスです。本格的な少子高齢化、そして人口減少社会の到来で、2040年の日本の住宅価格は2010年時に比べて46%下がるとのシミュレーションもあります。しかし、これはあくまで平均で、実際には『価値が落ちない・あるいは上がるもの』『緩やかに下がり続けるもの』『無価値・あるいは価値がマイナスになるもの』に大きく三極分化するでしょう」

●使う予定がないなら原則売却

 人口動態は不動産価格にもっとも大きな影響を与える要素の1つだ。空き家問題において、首都圏はこれまで全国の他の地域に比べてあまり深刻ではなかったが、モデルケースとして今後の人口動態をみてみる。

 国土交通省の資料を基に作成した下表は、2035年の夜間人口と生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口層)の増減を、東京都市圏の鉄道沿線別に予測したものだ(2005年比)。沿線によって大きくばらつきがあることがわかる。

 田園都市線では、35年時点の夜間人口は05年時点に比べ20.7%も増え、高齢化の進行は避けられないものの、生産年齢人口でも6.0%増える。京王線、東横線、埼玉高速線などは、生産年齢人口は減少するが、夜間人口はプラスで推移する。

 一方、芳しくないのは、日比谷線・東武伊勢崎線・日光線。夜間人口は23.4%も減少し、生産年齢人口に至っては36.1%減と、すさまじい状況になりそうだ。長嶋氏はこうアドバイスする。

「将来の人口減少が激しいエリアの空き家ほど、早急に『売り』です。理由は『今がもっとも高く売れる可能性が高い』からです。売り時を待っていても、今後価値が上昇する見込みは限りなく少ないでしょう。さらに、こうしたエリアでは『貸す』ことの意味も限定的です。周囲に競合する空き家が増え、価値は下がる一方という状況のなか、一定の投資を行いながら賃貸に出し収益を得ることにどのくらいの合理性があるのか。売らずに『貸す』場合にはまず、受け取れる賃料と管理費などの経費、リフォーム額などを割り出し、収益性がありそうか検討しましょう。賃貸するために投資した額を回収するのに数十年も要するようでは、貸し出す意味はありません。それから、実際には『田園都市線なら絶対に大丈夫』『東武線沿線は全部ダメ』ということではありません。沿線の地域によっても事情は異なります」

 長嶋氏によれば、田園都市線のように人口動態に恵まれているエリアでも、自身や親族が将来的に使う予定がない空き家ならば、原則売却でいいという。空き家を空き家のまま放置しておくと、建物はどんどん劣化し、資産価値が落ちていくからだ。

 2015年5月、いわゆる「空き家対策特別措置法」が全面施行された。防犯、景観、衛生などの観点から危険や害があると判断されると、その家屋は「特定空き家」に認定される。「特定空き家」になると、家屋への立ち入り調査も行えるほか、所有者に修繕や撤去を命令でき、さらに行政代執行で建物を解体して、その費用を所有者に請求できる。くれぐれも、「特定空き家」に認定される前に適切な判断を。
(文=横山渉/ジャーナリスト)