絶大な権力を握っている北朝鮮の秘密警察、国家保衛省(保衛省)。ところが、最近になって非常に厳しい検閲(監察)を受け、すっかり意気消沈しているようだ。その内情を、ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

保衛省の内部事情に詳しい両江道(リャンガンド)の情報筋によると、朝鮮労働党の組織指導部6課は昨年12月、1ヶ月にわたり保衛省に対する検閲(監査)を行なった。よほど過酷だったのだろう。保衛省の幹部たちは魂が抜けたような有様だという。

このような厳しい検閲が行われたのは、昨年に保衛省のタスクフォースである「612常務」が全国各地で行なった検閲が背景にあると言われている。

両江道の別の情報筋によると、612常務は咸鏡南道(ハムギョンナムド)の検閲を行う際、咸興(ハムン)市の党委員会責任委員長と勤労団体委員長の家の家宅捜索を行なった。その結果、党委員会責任委員長は更迭に追い込まれた。ところが、本来なら必要ではるはずの組織指導部の許可を得ていなかったことが判明した。

本来なら「党に対する挑戦」として厳しく処罰されるはずの手続き無視、越権行為を平然と行なったことに対して、党幹部から激しい反発の声が上がった。

保衛省は後日、金正恩氏から厳重な警告を受けた。

他の部署の幹部たちは、また粛清の血の嵐が吹くのではないかと、保衛省に対する検閲を震えながら見守っている。同時に、保衛省のトップとして君臨し絶大な権力を誇っていた金元弘(キム・ウォノン)氏が、金正恩党委員長に睨まれたせいで検閲を受けているのだろうと噂しているという。

金正恩氏の厚い信頼を受けている金元弘氏がトップに就任してからの保衛省は、各地で様々な横暴を働いてきた。

例えば両江道では、多くの人々が、保安署(警察署)や国境警備隊の庇護を受けて、脱北幇助や密輸を行い、それを見逃してもらう代わりにワイロを渡すという利権構造ができていた。脱北者やブローカー、密輸業者は楽に仕事ができ、保安署や国境警備隊は私腹を肥やすことができ、さらに地域経済も潤う関係だった。

ところが、金元弘氏の威光を笠に着て両江道に乗り込んできた保衛省は、脱北者や密輸業者を次々と逮捕し、激しい拷問を行い、全財産を奪うなど、悪行の限りを尽くした。

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保衛省系の企業が、他の機関が握っていた利権を強奪した事例も報告されており、幹部も庶民も、保衛省の利権強奪に激しく反発していた。

一方で、別の見方もある。

慈江道(チャガンド)の情報筋は、「金正恩氏が、金元弘氏を貶めるためのネタを探すために検閲を行わせた」という見方に否定的な見解を示した。金正恩氏なら、わざわざそんなことをしなくても、鶴の一声で済むはずだというのだ。

「このような抜き打ち検閲は、金日成時代から繰り返されてきた手法だ。勢力を過度に大きくしようとしたり、驕り高ぶったりしたら、だれでも抜き打ち検閲を受けるものなのだ」(情報筋)