アラサーを過ぎると、お金に余裕ができて、転職やキャリアアップのために「そろそろ資格でも取ろうかな」という人は多いはず。でも、実際にはかなりのお金と時間を費やしたにもかかわらず収入アップにつながらないケースも少なくありません。

本当にリターンのある「自己投資」のコツとは? ファイナンシャル・プランナーの中村芳子(なかむら・よしこ)さんに聞きました。

その資格、取得したらいくら稼げますか?

――30歳前後って、スキルアップのために資格やセミナーに通いたくなる時期ですよね。

中村芳子さん(以下、中村):そういう女性は多いと思います。ただ、資格を取ったからといって必ずしも収入アップにつながるわけではないので、要注意です。

――そこなんですよね。資格取得に向けて何十万円、何十時間とかけて講座に通ったのに、実際に稼げるのは月5000円程度だったりとか。

中村:一番問題なのは実態がわかっていないこと。わかっていないまま「これを取ったら何か素晴らしい未来が待っているんじゃないか」と思い込んじゃうんですね。

――よく広告で「副業で50万円稼ぎました」なんて人の話を読んだら「自分も稼げるかも」と夢見ちゃいます(笑)。

中村:それ、あくまで広告だからね! 実際に稼げる人もいるかもしれないけど、10人に1人もいないかもしれませんよ。せっかく稼いだお金を使って勉強するのなら、まず目標をしっかり持つこと。何のために、いくらかけて、いつまでにその資格を取るのか。資格を活かして、どこからどれくらいの収入が見込めるのか。まずこれを明確にしましょう。女性の30代は貴重な時間です。お金もさることながらエネルギーもムダにしちゃダメ!

それから、民間資格には特に注意しましょう。公には認められていないけれど、団体や学校を作って資格を発行するビジネスもあります。そんな資格は、仕事や収入増にはほぼ結びつきません。詐欺まがいのものもありますから気をつけて!

――資格がいっぱいあった方が転職の時に有利かも、と自己投資の誘惑に駆られるんですよね……。

中村:それは投資じゃなくて、浪費、つまりムダ遣いだからね(笑)。

気になる資格があるなら、「稼げてる人」に話を聞いて

中村:もし、資格を取って収入を増やそうと考えているなら、まずはその資格を生かして収入を得ている人、2人以上に会って話を聞くこと。

――直接知り合いがいない時は、ネット上で活躍している人を探して連絡をとってみるとか?

中村:それも一つの手ですね。私も、何度か「ファイナンシャル・プランナーの資格を取って、家計診断をやりたいんです」と相談を受けたことがあります。その時に私が「どこの会社に所属して家計診断していくらもらうつもりですか?」というところまで聞くと、みんな「え? まだそこまで考えてません」と答えます。

家計診断だけできても、それは「お医者さんになって、軽い風邪だけ診ますよ」というようなもの。風邪のつもりで来た患者さんが実は、別の大きな病気だったというケースはよくありますよね。ですから、ファイナンシャル・プランナーの資格を生かして家計診断をやるんだったら、税金、相続、不動産などまで知っておく必要があります。

――資格を土台に幅を広げていくんですね。

中村:ただ、知識を深めても、他に資格を持っている人はいっぱいいます。資格取得はゴールではなく、あくまでもスタートです。自分で仕事を取ってくる度胸とノウハウがなければ、なかなか収入には結びつかないんですよ。

――なるほど。逆にそれがしっかりできれば就職せずに、独立の道も拓けてくるんですね。

中村:仕事として収入に結びつけられる資格であれば、独立することも可能です。すると、将来結婚して子どもができたり、親の介護が必要になったりと、働き方が変わっても、その時々の生活に合わせて時間や仕事の量を自分で調整できるでしょ。会社員で一時的に仕事を辞めても復職しやすいですよね。そういう意味でも、スキルとして生かせる資格は必要に応じて取っておいた方がいいと思います。

――「気になるから」「なんとなくお金になりそうだから」というのではなく、この資格を取ってどういう仕事に生かしたいのか、その資格を取ると収入にどう結びつくのかを具体的に考えることが大切なんですね。

30代は、お金にもエネルギーにも余裕が持てる時期ゆえに、ついついあれもこれもと欲張って資格を取得をしてしまいがち。30代は、お金にもエネルギーにも余裕が持てる時期ゆえに、ついついあれもこれもと欲張って資格を取得をしてしまいがち。そんな時期だからこそ、5年後、10年後、どのように働きたいのかを今一度見つめ直して、ムダのない自己投資をしたいですね。

中村芳子さんの新刊はこちら。

(間野 由利子)