練習後、一人ランニングするランコ・ポポヴィッチ監督に「戦う男の姿」を見たという筆者は……(写真:ブリーラム)

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◆天才ポリグロット・タカ大丸の目指せ! 一年以内に離島・孤島でサブスリー!第0回

 私はタカ大丸。

 ジャーナリストであり、英語、スペイン語を含め5か国語を操るポリグロット(多言語使用者)である。

 多くの海外書籍の邦訳・企画も手がけ「モウリーニョのリーダー論」などのヒット書籍を多数生み出し、中でも「ジョコビッチの生まれ変わる食事」(2015年3月発売)は12万部のベストセラーとなった。

 その一方、出演したバラエティ番組で「見た目が怪しすぎる通訳者」呼ばわりされるという迫害を受けることもあるが、売り上げ・視聴率といった数字は毎回確実に叩き出している。

 要するに、天才なのである。

 そんな私が、このたびハーバービジネスオンラインの場を借りて超・私的なマラソンコラムを執筆させていただくことになった。

 当サイト読者の皆さんには、しばしお付き合い頂ければ幸いである。

 人はなぜ走るのか――話は今から三年前にさかのぼる。

 2013年12月某日、私は東京・小平市にあるJリーグ・FC東京の練習場にいた。仕事柄時間の自由はある程度きくので、午前中に練習を見学、その後友人のFW渡邉千真(現ヴィッセル神戸主将)と近くのハンバーグを食べるというのがお決まりのコースだった。

◆練習後一人、グラウンドで走っていた当時の監督ポポヴィッチ

 当時のFC東京監督はランコ・ポポヴィッチ(通称:ポポ、現タイ・ブリーラム監督)で、すでに退任が発表されていた。

 つまり、この一か月後にはこの男がこの練習場からいなくなることが確定していた。監督にとって、シーズン途中の退任発表ほど嫌なものはない。チーム内の求心力が一気になくなり、誰もいうことを聞かなくなる。監督が替わるということはチームを替えるということだから、何人かの選手は必ず同時に退団することになる。

 そういう選手は大抵、自分の処遇がわかるため再就職のことで頭がいっぱいになる。監督本人も次の仕事を探さなければならないし、何より側近スタッフを食わせていかなければならない。こんなことなら、さっさとシーズン中に解任してもらって契約の残りのお金をもらい、再就職活動に専念したほうがよほどマシなのだ。

 だが、ポポはまだ勝負を捨てていなかった。セルビア語だから意味は全くわからないが、紅白戦でまだ渡邉千真を怒鳴りあげていた。

 そして全体練習が終わると選手はトボトボと歩いてクラブハウスに戻っていくわけだが、よく見るとひとりだけグラウンドに居残ってランニングしている男がいる。誰かと思うと、監督のポポだった。そしてベンチに座る旧知の代理人を見つけると軽く手をあげ、そのまま走り去っていった。

◆戦い続ける男は「走る」

 「そうか、戦う男は走るのか」私は強い衝撃と感銘を受けた。

 そしてポポ率いるFC東京は天皇杯準々決勝で、ベガルタ仙台を相手に先制を許す苦しい展開ながら試合終了直前に追いつき、延長後半アディショナルタイムに入ってからいつも練習でやっていたサッカーを貫き、逆転勝利した。

 そして選手たちの歓喜の輪の中に監督自身が飛び込んでいった。仕事柄いろいろなサッカーの試合は見るが、あの輪の中に監督も加わるのは見たことがなかった。つまり、最後の最後までチームは崩壊していなかったということだ。

 お断りしておくが、ポポにマラソン経験があるのかどうかは聞いたことがない。ただ、戦い続ける男は走るのだということだけが私の脳に強くインプットされた。

 もっとも一部には、

「それ、単にダイエットで走ってただけじゃねぇの?」(渡邉千真談)

 という声もないわけではないが、そのあたりはおいておこう。