『重版出来!』の松田奈緒子、幻の名作ラブコメが発売&原画展も!

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 出版業界に携わる人々の仕事ドラマ、人間ドラマを描き、2016年にはテレビドラマ化もされた漫画『重版出来!』が第62回小学館漫画賞を受賞。作者の松田奈緒子さんは、1月21日に初期代表作『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』の完全版を発売し、合わせて初の原画展を開催中です。

 1月24日、原画展会場の東京・神楽坂のかもめブックスで一日店員を勤めていた松田さんに、受賞の喜びと、完全版を発売した『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』への思いをうかがってきました。

◆『重版出来!』につながる初期作品『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』

――まずは、小学館漫画賞受賞、おめでとうございます。

松田:ありがとうございます。『重版出来!』は、出版業界に携わるいろいろな方々に取材をして描いてきた作品。みなさんと一緒に作っている作品で、自分は描く係、という感覚なんです。なので、出版にかかわる人たち、そして、漫画でも小説でも詩でも、本が好きで読んでいる方々の代表としていただいた賞だと思っています。

 みなさまのおかげですばらしい賞をいただけて、本当に幸運です。これからもよろしくお願いいたします!

――これまでの作品でも「仕事ドラマ」についてはずっと描いていらしたと思いますが、『重版出来!』がこれまでの作品と違うのはどんなところだと思いますか?

松田:やはり、さまざまな方にしっかり取材をしたことで、今までだったら「ちょっと照れくさいな」と思うようなシーンもてらいなく描けたことだと思います。全部自分の頭の中で考えているんじゃなくて、取材して、受けとったことを描いているんだから描いて大丈夫!と思えました。

 その結果、いままでの作品よりもだいぶ読みやすくなったし、エンターテインメントとして楽しめる作品になったんじゃないかな。

 昔の作品を読み返すと「とんがってたなあ……」と思います。完全版を出すにあたって『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』を読み返しましたが、当時の記憶がよみがえって、結構つらかった(笑)。

◆一日「普通に」働いた女性が、何も考えずに笑える漫画

――今回完全版を発売した『レタスバーガープリーズ.OK,OK!』は、30歳の時代小説家・綾とイケメン挿絵画家・稲造の恋愛が描かれた「ラブコメ」ですが、仕事、特に女の人の働き方もさまざまなかたちで描かれていますよね。

松田:結構説明が難しい作品ですよね。ラブコメであり、家族の物語であり、仕事の話でもあり……。仕事だけに焦点を当てる漫画ではなかったですが、主人公の綾は時代小説家、妹の景子は商社の事務職、母は専業主婦として家族を支えて「普通に」働いている。

 連載当時、「『レタス』を読むと気がラクになる」と言ってくれる人がいたのはうれしかったです。一日「普通に」働いた女性が、何も考えずに笑ってくれるような漫画だったのかな、と思っています。

――原画展は初の開催となりますが、お客さんにはどんなところを楽しんでほしいですか?

松田:最近はデジタル作画の人も増えているので、そもそも「原画」が存在しないという作家さんも多いですよね。私は今もアナログで描いているので、せっかく原画があるんだから一度くらい原画展をやってみようかなと思いまして(笑)。

 もちろんデジタルのよさもあると思うんですが、アナログ原画ならではの情報量の多さもありますよね。アナログの原稿用紙ってB4サイズで、雑誌に印刷するときは縮小されるんですけど、最近の同人誌出身の作家さんは、同人誌のサイズに合わせてA5サイズで描く人も増えているんだそうです。

 写植(漫画のセリフ部分は、文字を印画紙に焼き付けて原稿用紙に切り貼りしていた)もいまではほとんど使われなくなりましたよね。そういった、サイズとか、セリフの指定とか、書体とかも含めての変遷を目にして楽しんでもらえたらと思います。