あの問題小説「東京女子図鑑」がひそかにドラマ化されていた。
「東京女子図鑑」とは、主に“都心の高所得者層や感度の高い女性を中心としたユーザー向けに、体験型のリアルな東京の情報をお届けして”いる(媒体資料より)「東京カレンダー」WEB上で2015年9月から11月にかけて連載されていた、地方から東京に出てきた主人公・綾が、住む街と恋と仕事をどんどんレベルアップしていく半生記を描いた小説。


書籍化されたWeb小説の目次はこんな感じ↓ これだけ読めば概要はつかめる。

Prologue 綾。幼き日に見た「地方」の情景。

AGE 23|Sangen―jaya 上京したての月給23万OLが選ぶ「三軒茶屋」。都会の女の第一歩はここから始まる。

AGE 28|Ebisu 28歳OLが選ぶ街「恵比寿」。いつでも脱げる臨戦態勢バッチリな女たち。

AGE 31|Ginza 31歳女性がするべき、銀座での“上質な"暮らし。大人の女の流儀とは?

AGE 34|Toyosu 34歳女性が住む街「豊洲」。適齢期の女性がぶちあたる「知ってしまった不幸」と「知らない不幸」 。

AGE 37|Yoyogi―Uehara 37歳女性が住む街「代々木上原」。私はおばさんになったか?

綾ここだけの話。「子供のいない幸せ」は、まだまだマイノリティ。

AGE 40|Sangen―jaya 40歳になった女性・綾が住む街…… それでも、女の人生は続く。

東京女子は、この街に何を思う。

Epilogue 43歳。私はどこにいる……?

「あるある」な感じもするがいくらなんでもちょっと盛り過ぎではと思える身も蓋もない内容で、主人公・綾があまりにも消費社会、情報化社会に流され過ぎていてイラっとしてくる・・・にもかかわらず、なんだか気になって読んでしまうと炎上に近いくらいの盛り上がりを見せた。なかには、本気でハマっているひとたちもいたようだが。

その小説が、2016年12月から、連続ドラマ化され、Amazon プライム・ビデオにて見放題独占配信されている。
小説同様、こわいものみたさで見てみた。
綾役は水川あさみだ。
結論から言って、おもしろい。小説以上かも。

小説は、主人公の一方的なモノローグで綴られていたので、誇大妄想感に溢れすぎていたが、ドラマとなると、
そうはいかない。
友達や、ライバル的なひと、つきあう相手、上司など、ほかの登場人物に囲まれることで、綾の存在にリアリティーが出てきた。
小説の男性版の内容も少し盛り込んで、男性視点も描いてあったり、視聴者が完全に主人公に同化するのではなく客観的に見られるようなつくりになったりしているのだ。実際に街をロケしているのも効いている。

イヤミのない決して出過ぎない美人・水川あさみの力で、これくらいの子だったら、いい思いをしてもありかという気も、たまに(あくまでたまに)するし、やっぱり流されている痛い子と捉えることもできる。そんなふうに恵比寿編まではストレスなく見られた。

秋田から出てきた綾は、まず三茶に住み、つきあった男とのまったりした関係を捨て、恵比寿に住み、仕事も変わり、お金持ちの男とつきあって、ロブションに「30歳になるまでにデートで行けたらイイ女」という目標を達成できそうになって、さらにステップアップして銀座のGUCCIに転職、一流を味わせてくれる男と出会って・・・←今ここ

1月20日(金)時点で銀座まで来た。そこまでは、水川あさみの力で、危なく綾を嫌いじゃなくなり、消費社会、情報化社会にハマってしまいそうになりそうなほどだった。
だが、30代の銀座編に来たら、やっぱりさすがにうまく行き過ぎだろとイライラしてきた。うん、やっぱり、東京女子図鑑はこうでないと。
なにしろ、とくに仕事をしている様子がないにもかかわらず、転職に成功し、生活レベルがあがっていくのだから。
銀座のGUCCIのPR担当、歌舞伎座の桟敷席でお弁当にステイタス感じていて、三茶や恵比寿を通過点にする上目線に、そこで生まれたわけでも土地をもっているわけでもないし、老舗のお店がどんどんなくなっているいまの銀座を讃えすぎてちょっと恥ずかしいとか小姑目線が発動してしまった。そしたらがぜん面白くなってしまった。

調子に乗る主人公のはしごが外される瞬間が最高にエンタメだ。

でも、ちょっとこわいのは、これは、女のリトマス試験紙ではないか。どの時点でイラッとするかで、観ている女のレベルがわかってしまうのではないだろうか。許せる部分はすでに乗り越えた部分。許せない部分は引っかかっている部分なのでは・・・。

“都心の高所得者層や感度の高い女性を中心としたユーザー”のためのレストランの宣伝小説を、ほどいて編み直して、与えられた価値観で生きていく女性の風刺ドラマに仕立てているのは、映画「お父さんと伊藤さん」、「ロマンス」、「百万円と苦虫女」などを撮ってきたタナダユキだ。一見ちょっと痛い女の子を地に足つかせて描くことにかけて定評がある。
脚本は、『ウルトラマンX』共同シリーズ構成や『ウルトラマンオーブ』の脚本に参加していて、若松孝二や荒井晴彦との共同脚本を書いた経験もある黒沢久子。
そして、毎回、最後に流れる主題歌「トウキョウコンプリート」がハマる。キュートなピコピコサウンドで、歌っているのは東京リリー&ローズというユニットで、そこに猫のホテルの佐藤真弓が参加していることに、演劇ファンは注目。
こんなふうにスタッフワークに技があって、ドラマとしての完成度は高い。

主人公はこれから豊洲、代々木上原・・・と人生の旅を続ける。
綾がどうなっていくのか、小説どおりなのか、それとも・・・結末を見届けたい。
全11話、毎週1話ずつ更新予定(4、5話はなぜかまとめて更新だった)


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(木俣冬)