水素に極めて高い圧力をかけることで、地球上で初めて金属状の水素「金属水素」の生成に成功したとハーバード大学の研究者が発表しました。金属水素が実用化すれば、常温の超伝導の実現や高エネルギーのロケット燃料、超高速コンピューターの開発など、さまざまな分野での応用が期待されています。

Observation of the Wigner-Huntington transition to metallic hydrogen | Science

http://science.sciencemag.org/content/early/2017/01/25/science.aal1579

Hydrogen turned into metal in stunning act of alchemy that could revolutionise technology and spaceflight | The Independent

http://www.independent.co.uk/news/science/hydrogen-metal-revolution-technology-space-rockets-superconductor-harvard-university-a7548221.html

1つの陽子と1つの電子で構成される最もシンプルな物質である「水素」は、極めて高い圧力をかけることで分子構造が変化して金属(金属水素)になると考えられてきました。この金属状態の水素では電子は束縛を受けず、超伝導性を持つと予想されていることから、常温・常圧下で金属水素が存在すれば、超伝導が実用化すると期待されています。そのため、世界中の研究者の間で、金属水素を生成しようという研究が進められていました。

そんな中、 金属水素を研究するハーバード大学のアイザック・シルベラ博士とランガ・ディアス博士は、科学誌Scienceに「世界で初めて金属水素の生成に成功した」とする論文を発表しました。この研究では、495GPaという地球の中心部よりも高い圧力をかけることで反射率0.91の金属水素を生み出したとのこと。ドルーデモデルから予想した原子密度の推定値が一致しており、原子状の金属の性質を確認したとしています。



シルベラ博士が金属水素について解説する様子は以下のムービーで確認できます。

Making metallic hydrogen at Harvard - YouTube

金属水素が生成したとしても、大きな問題は常温常圧化で金属水素が存在し得るのかという点。水素分子が高い圧力を受けることで解離して金属水素に一度変化すると、圧力が下がっても金属状態を維持できるのではないかと予想する科学者は少なくなく、常温・常圧化で超伝導性を持つ物質として金属水素には大きな期待が寄せられています。

現在、ハーバード大学の研究所では0度を下回る低温で高い圧力を加え続けることでごく少量の金属水素を維持している状態です。この金属水素と考えられるサンプルは、今後数週間以内に注意深く高圧状態から解放される予定です。

金属水素は生成に膨大なエネルギーが必要で、再び水素分子状態に変換すれば大きなエネルギーを放出することができるため、これまでにはあり得なかった強力なロケット推進剤としてロケット技術に革命を起こす可能性があるとのこと。また、金属水素を電線に使えば送電時に15%も失われているエネルギー損失をなくすことも可能で、超伝導性が常温・常圧化で実現すればリニア技術やコンピューター技術に革命的な進歩がもたらされる可能性もあります。



シルベラ博士の研究チームが生成したものが本当に金属水素なのか、炭素原子に圧力をかけて生まれるダイヤモンドのように高圧から解放された後も金属水素として存在し続けられるのか、今後の研究に大きな注目が集まりそうです。