「Thinkstock」より

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 世の中の変化の流れは年々加速している。特にITの進歩は目を見張るものがある。近年、その潮流のひとつとして挙げられるAI(人工知能)が、さまざまな分野で実用化され始めている。

 その背景にあるのが、IoT(モノのインターネット)機器の拡大である。コンピュータが組み込まれたIoT機器はセンサーによりビッグデータを取り込み、AIがインターネットを介して外部環境を分析する。機械学習による分析から、音声認識や自動運転、さらにはあらゆる分野で活躍するロボットなどが、付加価値として生まれている。

 そのひとつとして注目されているのが、「オルタナティブレンダー(Alternative Lender(AL):従来とは異なる貸し手)」である。ALは、ビッグデータを活用してオンライン融資を行う新しいタイプの企業のことで、米国を中心に増加している。

 ALは、高度な与信判断を驚くほどの速さで行う。融資の申し込みをオンラインで受け付けると、インターネットからさまざまな関連情報を取得して、AIを活用した独自のアルゴリズムにより融資申し込み企業の信用力や返済能力を調査して融資の可否を判断する。

 融資の審査完了までにかかる時間は平均で5分という短時間で、翌日には融資申し込み企業の銀行口座にお金を振り込み、融資に関するプロセスがすべてオンラインで完了する。融資審査を独自開発したアルゴリズムに一元的に委ねることで、短時間での融資判断を行う革新的なバリューチェーンの創出を可能にした。

 アルゴリズムは、インターネットを通じて与信判断の材料となるさまざまな種類の情報を収集する。それは、クレジットカード決済サービスの利用実績に始まり、クラウドサービスで管理されている財務・会計情報、ECサイトやSNS上にあるアカウント情報に至るまで多岐にわたる。アルゴリズムはこれらの情報からタイムリーに、融資申し込み企業の返済能力や事業継続性、さらには経営者の能力や性格などを審査して企業の信用力を算出する。

●広がる融資機会

 金融機関などによる従来の融資では、融資申し込み企業の直近の収益が改善し拡大していたとしても、過去の業績が芳しくなければ、融資を受けることができない場合があった。しかし、アルゴリズムの導入により、与信判断の材料となるさまざまな情報をインターネットによりタイムリーに収集し分析できるようになったことから、融資機会を広げることができるようになった。

 ALが主として、既存の金融機関からの融資を断られる中小企業をオンライン融資の対象にしているのが、そのことを物語っている。ビッグデータを基にしたアルゴリズムを活用することで、中小企業の信用力や返済能力をタイムリーかつ正確に見極められるようになったことから、まさにこのような融資が可能になったのである。

 米国のALの中には、すでに融資総額が40億ドルに達している企業もいる。融資上のリスクをアルゴリズムで最小化することに成功しスケール向上を果たしたAL。従来型の融資をまさに破壊しようとしている。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)