静けさと自然に帰るとにかく美しい斎場「瞑想の森」(岐阜県) #旅するデザイナーの冒険の書

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4年ほど前にスウェーデンにある「森の墓地」に行ったことは、今でも私の人生の財産になっています。「森の墓地」とは、「北欧モダンの父」エリック・グンナール・アスプルンドが生涯をかけて築いた建築。世界遺産です。広大な森には、約12万もの墓石が静かにたたずんでいました。
心が安らぐ、北欧の「森の墓地」

スウェーデンでは「死者は森へ還る」と考えられています。そもそも日本では人が亡くなるとバタバタとお通夜をして、お葬式をして、とても家族が故人を思い出し、懐かしみ、悲しむ時間はありません。スウェーデン人に「なぜ日本人は人が亡くなると急いでなにもかも済ませようとするの? 」という質問に衝撃を受け、うまく答えられなかったことを思い出しました。

木が生えている丘は「追憶の丘」と呼ばれ、スウェーデン最大の散骨の場。自分の骨をお墓の下に収めるか、この丘に散骨するかは自らが生前に選ぶそう。3分の1の人が散骨を選び、丘に眠ると言われている。

実際に「森の墓地」に行ってみると、そこは墓地というより公園のよう。墓地のコンペには他にも名乗りをあげていた建築家もいたのですが、木を切り倒して建物を建てる案ではなく、アスプルンドの森を最大限生かした考えが採用されたのです。コンペの作業に取り掛かったアスプルンドはまだ28歳だったそう。

ここから先は「死者の世界」として考えられています。

長く長く続く道の左右にはたくさんの人が眠っています。

あたたかい日差しに包まれた草原は公園のよう。老夫婦がベンチで楽しそうにおしゃべりをしていました。

葬儀が多い日にも他の参列者とは顔を合わさないように、待合室から礼拝堂までは一方通行に設計されています。合理的でありながら親族への配慮に心を打たれました。

入り口の待合室。天井が低く、かわいい建物です。

墓地というと怖いイメージがあるのですが、むしろ不思議なことに心が安らぎ、日本ではありえない光景を目にし、経験をしたのでした。北欧の近代建築の礎を築いたアスプルンドは、自らが設計した森の墓地に今も安らかに眠っています。

花崗岩(かこうがん)の十字架は信仰のシンボルというより、「生・死・生」という「生命循環」のシンボルとして考えられている。

神秘的な「静けさと自然に帰る」場所
日本に帰ってきても、「森の墓地」での光景が頭から離れず、日本にもこんな墓地はないのかと探してみました。
そして、いろいろと調べてついに見つけました!

岐阜県にある「瞑想の森」。なんとこの建物、市営の斎場なんです。一見コンサートホールのようにも見えるこの建物は世界的に有名な伊東豊雄さん設計。

神秘的とはまさにこの事ではないだろうかと、雪の積もる中、しばらく池越しに建物の全貌を眺めていました。特徴的な屋根の曲線は周りの山の曲線と一体となり、優しく浮かぶ雲や、やわらかい風、鳥の翼などを感じさせるような不思議な存在感。

この椅子も伊東豊雄さんデザインのもの。木目の違う木を張り合わせ削ることにより模様を作っています。

斎場といえば「暗い」「狭い」「空気が重たい」「近寄り難い」などの印象が一般的ではないでしょうか。中に入ると、ここはまるでどこかのモダンなホテルのロビーのよう。大きなガラス越しにやわらかい光が降り注ぎ、暖かい。死を感じさせるようなものは何もなく、あまりの心地よさに気づくと目を閉じてしまっていました。この斎場は「静けさと自然に帰る」をコンセプトに作られたそう。墓地や斎場というと亡くなった方のためのものと思われがちですが、ここは故人を見送る人のための場所でもあるのだなと、スウェーデンの「森の墓地」と通ずる所がありうれしく感じたのです。
しかし、こちらは見学施設ではなく市営斎場ですので公開時間が限られており、

・見学できる時間は午前9時〜9時30分の間だけ
・1月1日および友引の日は見学できません
・見学時間外は、斎場外からの見学もできません

と、なかなか見学が難しいところなのでご注意を。
[瞑想の森]
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