オリバー・ストーン監督

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 米国家安全保障局(NSA)の職員だった1人の青年が行った、米政府による国際的な監視プログラムの存在の内部告発。世界中を震撼させたこの事件を、オリバー・ストーン監督が取り上げるのは必然だったかもしれない。その人、エドワード・スノーデンと何度も意見を交わし、本人の視点から描く人間ドラマとして問題提起をしたのが「スノーデン」だ。

 2013年6月、その衝撃は香港のホテルの1室からもたらされた。米政府が秘密裏に行っていた最高機密の構築に関わっていたスノーデンの告発を、英ガーディアン紙がスクープ。ストーン監督も快哉を叫んだ1人で、映画化という思いに至ったわけではないが、本人と会ったことでが然意欲が沸いたという。

 「彼の協力を得られれば、内部の者から見た物語をつくれるのではないかと感じたんだ。グレンの書いた本は、あくまでジャーナリストからの視点で、インサイダーの視点から見た人は今までいなかった。彼とは計9回も会ってお互いを信頼できたから、この映画には誰も聞いたことがない情報も入っている」

 14年6月に合意に至ったものの、現在も捜査中の事件であり、スノーデンも米国から追われる身。政府の圧力などはなかったようだが、製作は一筋縄ではいかなかった。

 「最初からとても居心地の悪い作業だった。米メジャーにはすべて断られたが、それは自己検閲だろう。日本も出資してくれなかったしね(笑)。一瞬は落ち込んだけれど、結果、ドイツとフランスの出資で作ることになり、米もオープンロードという小さい配給会社が受けてくれた。スノーデンは、米国人には秘密を暴露した人物と見られているが、欧州では高くリスペクトされているんだ。僕はカテゴライズされた映画を作らないから、ストレスの多い映画人生だけれど、今回は本当に難産だった」

 映画は2013年6月3日の告発からの数週間を軸に、スノーデンが軍に入隊してからそこに至るまでの半生を挿入していく構造。しっかりと米政府の闇を提示しつつも、人間ドラマとしても奥行きの深いものになっている。特に、愛していたはずの国家に裏切られ絶望のふちに立たされるスノーデンに寄り添った恋人リンゼイ(シャイリーン・ウッドリー)の存在が際立つ。

 「まさにその通りで、彼女はたいした人物ではないと報道では無視された。でも、スノーデンの人生の重要な9年間、ずっと一緒にいて彼の決断にも関わっていた。彼らには家があって仕事もあって高い報酬を得て、一般的には幸福といわれる状況だけれど、根本的には幸せではない居心地を悪くさせるものがあったはず。てんかんの発作で人生が短いことを知った彼は、何をすべきかを自問したと思う。そこでリンゼイが、健康のため(異動先の)ハワイに行きましょうと言ったことがモチベーションのひとつになった。愛しているのに何も言うことができないスパイ的な恋愛だけれど、彼女の価値をきちんと感じ取ってくれたのはうれしいね」